加速度センサー(アクセラロメーター)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

加速度センサー(アクセラロメーター)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

加速度センサー (アクセラロメーター)

英語表記

accelerometer (アクセレロメーター)

用語解説

加速度センサーは、物体の運動状態、特に速度の変化率を検出する電子部品である。物理学でいう「加速度」とは、単位時間あたりの速度の変化を指し、このセンサーはその物理量を電気信号に変換して出力する。静止している物体にも重力加速度が常に作用しているため、加速度センサーは傾きや姿勢の変化も検出できる。スマートフォンが傾いたときに画面表示が自動で回転したり、ゲームコントローラーの動きがゲーム内の操作に反映されたりする機能は、この加速度センサーの働きによって実現されている。自動車のエアバッグシステムでは、衝突時の急激な減速度(マイナスの加速度)を検知し、瞬時にエアバッグを展開させることで乗員の安全を守る。このように、加速度センサーは私たちの身の回りの様々なデバイスやシステムに組み込まれ、その機能や安全性向上に貢献している、現代社会において不可欠なセンサー技術の一つである。

加速度センサーの多くは、微小電気機械システム(MEMS: Micro-Electro-Mechanical Systems)と呼ばれる技術を用いて製造されている。これは、半導体製造プロセスを応用し、シリコン基板上に非常に小さな機械的な構造(センサーの検出部)と電気回路を一体的に形成する技術である。MEMS加速度センサーの内部には、加速度を受けると移動する可動質量体(マス)と、それを支えるバネのような構造、そしてその動きを電気信号に変換する検出回路が組み込まれている。

具体的な測定原理としては、主に静電容量の変化を利用する方式が広く採用されている。この方式では、可動質量体が加速度を受けて動くと、固定された電極との間の距離が変化する。この距離の変化によって、電極間の静電容量が変化する現象を電気的に検出し、これを加速度の大きさと向きに変換する。他にも、ピエゾ抵抗効果を利用する方式がある。これは、特定の材料が変形すると電気抵抗が変化する性質を利用したもので、可動質量体を支える梁などが加速度によって変形し、その抵抗値の変化が加速度として検出される。さらに、ピエゾ電気効果を用いるセンサーも存在し、これは材料に力が加わると電圧が発生する現象を利用している。

加速度はX、Y、Zの3次元方向を持つベクトル量であるため、多くのアプリケーションでは、これらの3軸すべての方向の加速度を測定できる3軸加速度センサーが使われる。センサーが出力する加速度の値は、通常メートル毎秒毎秒(m/s^2)や、地球の重力加速度を基準としたG(ジー、1Gは約9.8 m/s^2)の単位で表現される。これらのデータはアナログ信号の場合もあれば、デジタル信号として直接マイコンやCPUに出力される場合もあり、システム側でこれを受け取り、必要な演算や判断を行う。

システムにおける加速度センサーの応用範囲は非常に広い。スマートフォンでは、デバイスの傾きを検出して画面の表示方向を自動で切り替えたり、シェイク操作を認識したりする。歩数計やフィットネストラッカーでは、ユーザーの体の動きから歩数や活動量を推定する。ドローンやロボットの分野では、機体の傾きや振動をリアルタイムで検出し、姿勢制御システムにフィードバックすることで、安定した飛行や動作を実現するのに貢献している。産業分野では、機械の振動監視により故障の予兆を検知したり、構造物の健全性を評価したり、自動車の衝突検知や横滑り防止装置(ESC)などの安全システムにも不可欠な要素となっている。

加速度センサーは単独で利用されるだけでなく、他のセンサーと組み合わせてより高度な機能を実現することも多い。例えば、純粋な運動による加速度を正確に求めるには、重力の影響を排除する必要があるため、ジャイロセンサー(角速度センサー)と連携させて、物体の傾きや回転を含む複合的な姿勢情報を推定する。これを「センサーフュージョン」と呼び、スマートフォンやVR/ARデバイス、ロボットなどで広く用いられている。さらに、地磁気センサー(方位センサー)と組み合わせることで、絶対的な方位を含むより精度の高い位置や姿勢の推定が可能となり、ナビゲーションや拡張現実アプリケーションの精度向上に寄与している。

システム開発において加速度センサーを取り扱う際には、いくつかの考慮点がある。センサーの出力にはノイズが含まれることがあり、これを適切に除去するために、移動平均フィルターやローパスフィルター、あるいはより高度なカルマンフィルターなどのデジタル信号処理を適用することが一般的である。また、センサーのサンプリングレート(1秒あたりのデータ取得回数)や分解能(測定できる最小の加速度変化)は、アプリケーションの要件に応じて適切なものを選定する必要がある。例えば、高速な動きを検出するアプリケーションでは高いサンプリングレートが求められ、微細な振動を検出するアプリケーションでは高い分解能が重要となる。バッテリー駆動のデバイスでは、消費電力も重要な選定基準となる。

加速度センサーは、その小型化、高性能化、低コスト化が絶えず進められており、IoTデバイス、ウェアラブル機器、医療機器、先進運転支援システム(ADAS)など、多岐にわたる分野で新たな価値を生み出し続けている。システムエンジニアとして、これらのセンサーがどのような原理で動作し、どのような情報を取得でき、どのようにシステムに組み込むべきかを理解することは、今後の技術開発においてますます重要となるだろう。