検収 (ケンシュウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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検収 (ケンシュウ) の読み方

日本語表記

検収 (ケンシュウ)

英語表記

Acceptance (アクセプタンス)

検収 (ケンシュウ) の意味や用語解説

検収とは、システム開発プロジェクトにおいて、発注者(顧客)が受注者(開発会社)から納品されたシステムやソフトウェアが、契約時に定めた要件や仕様をすべて満たしているかを確認し、その成果物を受け取るかどうかを最終的に判断する工程である。これは、システム開発の最終段階に位置づけられる極めて重要なプロセスであり、この検収が完了して初めてプロジェクトは正式に終了し、受注者への代金の支払いが確定する。つまり、検収は単なる動作確認ではなく、ビジネス上の契約を完了させるための法的な意味合いを持つ手続きでもある。システムエンジニアを目指す上で、この検収の目的と流れを正確に理解しておくことは必須である。 検収のより詳細な内容について解説する。システム開発は、一般的に要件定義、設計、開発、テストという流れで進められる。このうち、開発会社が主体となって行うテストには、個々のプログラムが正しく動くかを確認する「単体テスト」、プログラム同士を連携させて動作を確認する「結合テスト」、システム全体が仕様通りに動作するかを確認する「総合テスト」などがある。これらのテストをすべてクリアした上で、システムは発注者に納品される。検収は、この納品後に行われるもので、発注者が主体となって実施するテストであることから「受け入れテスト」とも呼ばれる。開発会社が行うテストが「作り手の視点」で行われるのに対し、検収は「使い手の視点」で、実際の業務で問題なく利用できるかという観点から評価される点に大きな違いがある。 検収の主な目的は三つある。第一に、契約内容の充足確認である。プロジェクト開始時に作成された要件定義書や仕様書に記載された機能、性能、画面デザインなどが、すべて実装されているかを一つひとつ確認する。例えば、「顧客データを登録、検索、更新、削除できる」という要件があれば、そのすべての操作が問題なく行えるかを確かめる。第二に、業務利用における品質の担保である。システムが実際の業務フローに沿ってスムーズに動作するか、操作性は悪くないか、想定されるデータ量や利用者数で性能が劣化しないかなど、実用性の観点から品質を検証する。この段階で発見された不具合や問題点は、受注者に修正を依頼することになる。第三に、支払いプロセスの起点となることである。発注者がシステムの内容に問題がないと判断し、検収合格とすることを「検収完遂」という。この際、発注者は「検収書」という書類に署名・捺印して受注者に渡し、これをもって納品が正式に完了したとみなされ、契約に基づいた支払い義務が発生する。 検収の具体的なプロセスは、通常、事前に両者で合意した計画に沿って進められる。まず、検収の開始前に「検収計画書」を作成し、実施期間、担当者、テスト環境、そして何をもって合格とするかの基準(合格基準)を明確にする。また、具体的にどのような操作を行い、何を確認するのかを記した「検収シナリオ」や「検収テストケース」も用意される。次に、受注者は本番環境とほぼ同じ構成の「検収環境」を準備し、発注者はその環境で検収シナリオに基づきシステムのテストを実施する。テスト中に発見された不具合は、内容や発生手順などを記録し、受注者に報告する。受注者は報告された不具合を修正し、修正が完了したら発注者は再度テストを行って問題が解消されたことを確認する。この一連の作業を、重大な不具合がなくなるまで繰り返す。そして、すべての検収項目が合格基準を満たした時点で、発注者は検収書を発行し、検収は完了となる。 システム開発を成功させるためには、検収をスムーズに進めるための注意点を理解しておく必要がある。検収でのトラブルの多くは、プロジェクトの初期段階、特に要件定義に起因する。要件定義書の内容が曖昧だと、発注者と受注者の間で「完成形」のイメージに齟齬が生まれ、「こんなはずではなかった」という事態につながる。検収の判断基準はあくまで契約書や要件定義書であるため、これらの文書をいかに詳細かつ明確に作成するかがプロジェクトの成否を分ける。また、検収中に発注者から当初の要件にはなかった要望が出されることもある。これが契約範囲内の修正要求なのか、範囲外の追加要求(仕様変更)なのかを明確に切り分ける必要がある。追加要求であれば、別途費用や期間を要するため、改めて協議し、場合によっては追加契約を結ぶことになる。この切り分けが曖昧だと、プロジェクトのコスト増やスケジュールの遅延を招く原因となるため、慎重な対応が求められる。このように、検収はシステム開発プロジェクトの最終関門であり、技術的な正しさとビジネス上の合意形成の両方を確認する重要な工程なのである。

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