随意アクセス制御リスト (ズイイアクセスセイリョリスト) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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随意アクセス制御リスト (ズイイアクセスセイリョリスト) の読み方

日本語表記

ずいいアクセス制御リスト (ずいアクセスせいぎょリスト)

英語表記

Access Control List (アクセス・コントロール・リスト)

随意アクセス制御リスト (ズイイアクセスセイリョリスト) の意味や用語解説

随意アクセス制御リストは、特定のオブジェクトへのアクセス権限をそのオブジェクトの所有者の裁量によって設定・管理するための仕組みであり、アクセス制御リスト(ACL)の一種である。ここでいう「随意(Discretionary)」とは、リソースの所有者が自らの判断で、どのユーザーやグループにどのような操作を許可または拒否するかを自由に決定できることを意味する。これは、システム全体で一元的にアクセスルールを強制する強制アクセス制御(MAC)とは対照的なアプローチである。 この制御モデルは、個々のファイル、フォルダ、レジストリキー、またはネットワーク上の共有リソースといった特定のオブジェクトに対し、きめ細やかなアクセス制御を可能にするために利用される。例えば、Windowsオペレーティングシステムでは、NTFSファイルシステムにおけるファイルやフォルダのアクセス権設定において、この随意アクセス制御リストが広く用いられている。システムは、ユーザーが特定のオブジェクトにアクセスしようとした際、そのオブジェクトに付随する随意アクセス制御リストを参照し、アクセスを許可するかどうかを判断する。その目的は、情報セキュリティの観点から、許可されたユーザーやグループのみが必要なリソースにアクセスできるようにすることにある。 詳細に述べると、随意アクセス制御リストは複数のアクセス制御エントリ(ACE)の集合体として構成される。各ACEは、特定のセキュリティ主体(ユーザーアカウントやグループアカウント)に対して、そのオブジェクトに対する特定のアクセス権限(読み取り、書き込み、実行、削除、変更など)を許可するか、または拒否するかを明確に定義している。セキュリティ主体は、通常、セキュリティ識別子(SID)と呼ばれるシステム内でユニークな値で識別され、これによりシステムはユーザーやグループを一意に特定できる。 オブジェクトへのアクセス要求が発生すると、システムは随意アクセス制御リストに記述されたACEを順序立てて評価していく。一般的に、拒否エントリは許可エントリよりも優先して評価されるという原則が存在する。これは、セキュリティポリシーにおいて明示的にアクセスを拒否する設定が、意図しないアクセス許可よりも優先されるべきであるという考え方に基づいている。例えば、あるユーザーが属するグループにはオブジェクトへの読み取りが許可されていても、そのユーザー自身に対して明示的に読み取りが拒否されている場合、拒否が優先されアクセスは許可されない。また、アクセス権は親フォルダから子ファイルへ「継承」される場合が多いが、明示的に設定されたACEは継承されたACEよりも優先されるのが一般的である。 随意アクセス制御リストの最大の利点は、その柔軟性と粒度の細かさにある。リソースの所有者が直接アクセス権を設定できるため、部署やプロジェクトごとのニーズに合わせて、個々のオブジェクトに対して非常に詳細な権限管理が可能となる。これにより、システム管理者の負担を軽減しつつ、個々のユーザーやグループに必要最小限の権限のみを与える「最小権限の原則」を適用しやすくなる。多くの一般的なオペレーティングシステムやアプリケーションが標準でこのメカニズムをサポートしているため、特別な追加ソフトウェアなしに導入できる点も利点である。 しかし、その柔軟性は同時に課題も生じさせる。まず、管理の複雑性である。システム内に存在するオブジェクトの数が増え、それぞれに異なるアクセス権が設定されている場合、全体としてのアクセス権限の状況を把握し、適切に管理することが非常に困難になる可能性がある。特に、ユーザーの異動や退職、グループの変更などが発生した際には、関連するオブジェクトのアクセス権を一つずつ見直し、調整する必要がある。このような作業を怠ると、セキュリティポリシーに違反するアクセス(例えば、退職者が過去のプロジェクトファイルにアクセスできる状態)が発生するリスクが高まる。 次に、セキュリティリスクの増大が挙げられる。随意アクセス制御リストでは、アクセス権の設定が所有者の裁量に委ねられるため、所有者のセキュリティに関する知識や意識が不足していると、意図せず広範なアクセス権を許可してしまったり、不要なユーザーに権限を与えてしまったりする可能性がある。これにより、不正アクセスや情報漏洩のリスクが高まることになる。また、誤った設定は正当なユーザーが必要なリソースにアクセスできないという運用上の問題も引き起こす。したがって、随意アクセス制御リストを効果的に運用するためには、所有者に対する適切なセキュリティ教育と、定期的なアクセス権の見直しが不可欠となる。 このように、随意アクセス制御リストは、現代の多くのシステムにおいて、柔軟かつ詳細なアクセス管理を実現するための基盤技術として広く採用されている。その利点を最大限に活用しつつ、潜在的な課題を認識し、適切な運用と管理を行うことが、安全で効率的なシステム運用には不可欠である。

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