アドミニストレーティブディスタンス(アドミニストレーティブディスタンス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アドミニストレーティブディスタンス(アドミニストレーティブディスタンス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

管理距離 (カンリキョリ)

英語表記

Administrative Distance (アドミニストレーティブ・ディスタンス)

用語解説

アドミニストレーティブディスタンス(Administrative Distance、AD値)とは、ネットワーク機器(主にルータ)が複数のルーティングプロトコルから同一ネットワークへの経路を学習した場合に、どの経路を最適経路としてルーティングテーブルに登録するかを決定するための指標のことである。日本語では「管理距離」と訳される。

ルーティングプロトコルとは、ルータがネットワーク上の最適な経路を学習し、他のルータと情報を交換するための通信規約である。RIP、OSPF、BGPなどが代表的なルーティングプロトコルとして挙げられる。これらのプロトコルはそれぞれ異なるアルゴリズムを用いて経路を学習するため、同じ宛先ネットワークへの経路を複数発見することがある。

アドミニストレーティブディスタンスは、これらの経路の中から、ルータが「最も信頼できる」と判断する経路を選択するために用いられる。AD値は数値で表現され、一般的に数値が小さいほど信頼性が高いとみなされる。例えば、シスコ製品におけるデフォルトのAD値は、直接接続されたネットワークが0、静的ルーティングが1、RIPが120、OSPFが110、BGPが200となっている。

ルータは、複数のルーティングプロトコルから同一の宛先ネットワークへの経路を学習した場合、最もAD値が小さい経路をルーティングテーブルに登録する。ルーティングテーブルは、ルータがパケットを転送する際に参照する経路情報が格納されたデータベースである。

例えば、あるルータがRIPとOSPFの両方から同じ宛先ネットワークへの経路を学習した場合、OSPFのAD値(110)はRIPのAD値(120)よりも小さいため、ルータはOSPFから学習した経路をルーティングテーブルに登録する。これにより、パケットはそのネットワークへOSPFで学習した経路を通って転送されることになる。

ただし、AD値はあくまでルータが経路を選択する際の優先度を決めるための指標であり、必ずしも最適な経路を示すものではない。例えば、RIPの経路がOSPFの経路よりも物理的に短い場合でも、AD値が優先されるため、OSPFの経路が選択される可能性がある。

また、AD値は手動で変更することも可能である。ネットワーク管理者は、特定の状況下で、デフォルトのAD値を変更して、ルータの経路選択の挙動を調整することができる。例えば、一時的にRIPの経路を優先させたい場合、RIPのAD値をOSPFのAD値よりも小さく設定することができる。ただし、AD値の変更はネットワーク全体のルーティングに影響を与える可能性があるため、慎重に行う必要がある。

AD値はローカルルータにとってのみ意味を持つ値であり、ルーティングアップデートの際に他のルータへAD値が通知されることはない。AD値は、宛先ネットワークへ複数のルーティングプロトコルから経路を学習した場合に、どのプロトコルを優先するかを決定するためにローカルルータのみで使用される。

AD値は、ルーティングの基本的な概念であり、ネットワークエンジニアがルーティングに関する問題をトラブルシューティングする際に、非常に重要な役割を果たす。AD値を理解することで、ルータがどのように経路を選択し、パケットを転送するかを把握し、ネットワークのパフォーマンスを最適化することができる。システムエンジニアを目指す上で、ルーティングプロトコルと合わせてAD値の概念を理解しておくことは不可欠である。