交流 (コウリュウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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交流 (コウリュウ) の読み方

日本語表記

こう-りゅう (コウリュウ)

英語表記

alternating current (オルタネイティング・カレント)

交流 (コウリュウ) の意味や用語解説

交流とは、電流の流れる向きと電圧の極性が時間とともに周期的に変化する電流および電圧のことである。英語では「Alternating Current」と表記され、しばしば「AC」と略される。これに対して、電流の向きと電圧の極性が常に一定であるものを直流(Direct Current、DC)と呼ぶ。私たちが日常的に家庭やオフィスでコンセントから得ている電力は交流であり、発電所から各施設へと送電される際にも交流が利用されている。システムエンジニアがコンピュータやサーバーなどのIT機器がどのように電力を受け取り、動作しているかを理解する上で、この交流という概念は基礎的ながら非常に重要である。IT機器の多くは内部で直流で動作するが、外部からの電力供給には交流が用いられることが一般的であり、その変換プロセスや特性を把握しておくことは、電源設計、ケーブル選定、データセンターの電力インフラ管理、あるいは障害発生時の切り分けにおいて不可欠な知識となる。 交流の最も顕著な特徴は、その波形が時間とともに変化する点にある。一般的に、交流の電圧と電流は滑らかな正弦波(サイン波)を描き、周期的にゼロを横切り、プラス方向とマイナス方向で最大値と最小値を繰り返す。この一往復にかかる時間を周期と呼び、1秒間あたりの周期の回数を周波数と呼ぶ。周波数の単位はヘルツ(Hz)で表され、例えば日本の商用電源は東日本が50Hz、西日本が60Hzである。この周波数が高いほど、電圧と電流の変化が速いことを意味する。交流のもう一つの重要な概念に「実効値」がある。交流は常に電圧と電流が変化するため、その大きさを表す際に、同じ抵抗に流れた場合に同等の熱量を発生させる直流の大きさに換算した値を用いる。これが実効値(RMS:Root Mean Square)であり、一般的に「交流100V」といった場合はこの実効値を指している。 交流が世界中で広く利用される主な理由は、その送電効率の高さと電圧変換の容易さにある。発電所で生成された電力を遠くまで送電する際、電圧を高くすることで電流を少なく抑え、送電線での電力損失(ジュール熱)を大幅に低減できる。交流であれば、変圧器(トランス)を用いることで、この電圧を非常に効率的に昇圧・降圧できる。変圧器は、電磁誘導の原理を利用してコイルの巻数比に応じて電圧を変換する装置であり、直流では同様の簡便な方法で電圧を変換することは難しい。家庭やオフィスでは、送電された高電圧の交流を、使用に適した低電圧の交流(例えば日本では100Vまたは200V)に降圧して利用する。 IT機器の電源供給においても、交流は基盤となる。コンピュータ、サーバー、ネットワーク機器などは、壁のコンセントやデータセンターのPDU(Power Distribution Unit)から交流電力供給を受ける。しかし、これらの機器の内部回路は通常、安定した直流電圧で動作する。そのため、機器内部の電源ユニット(Power Supply Unit, PSU)やACアダプターが、入力された交流を直流に変換する役割を担っている。この変換プロセスには、変圧、整流(交流を直流に変換)、平滑(脈動を抑える)といったステップが含まれる。 データセンターのような大規模なITインフラにおいては、交流電源の安定供給と管理が極めて重要となる。単相交流と三相交流という概念も、電力供給システムを理解する上で欠かせない。家庭で使われるのは単相交流が一般的だが、データセンターや産業用途では、より大きな電力を効率的に供給し、モーターを効率よく駆動できる三相交流が用いられることが多い。三相交流は、位相が120度ずつずれた3つの交流電圧で構成されており、より安定した電力供給が可能である。 さらに、停電時にIT機器の動作を維持するための無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)も交流と深く関わる。UPSは、通常時に商用交流電力を受け取り、それを直流に変換してバッテリーを充電しつつ、機器へは再度交流に変換(インバーター機能)して供給する。停電時には、バッテリーに蓄えられた直流電力をインバーターで交流に変換し、機器へ供給することで電力の中断を防ぐ。交流電源に関連するトラブルとしては、電圧変動、周波数変動、ノイズ、サージなどが挙げられる。これらはIT機器の誤動作や故障の原因となり得るため、適切な電源タップ、サージプロテクタ、UPS、そして接地(アース)が重要となる。接地は、漏電時の感電防止やノイズ対策として非常に重要な役割を果たす。システムエンジニアは、これらの交流電源の特性とそれを扱うための基本的な知識を身につけることで、安定したITシステムを構築し、運用するための基盤を固めることができる。

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