アナログ回線(アナログカイセン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アナログ回線(アナログカイセン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アナログ回線 (アナログカイセン)

英語表記

analog line (アナログライン)

用語解説

アナログ回線は、音声などの情報を連続的な波形のまま電気信号に変換して伝送する通信回線のことである。最も代表的な例は、一般に固定電話として知られる加入電話サービスで利用されてきた回線である。アナログとは、情報を連続的に変化する物理量で表現する方式を指す。アナログ回線では、音声の大小や高低といった空気の振動を、そのまま電圧や電流の強弱といった電気信号の波形に置き換えて送受信する。この仕組みは、情報を「0」と「1」の不連続なデジタル信号で扱うデジタル回線とは根本的に異なる。

アナログ回線の基本的な仕組みは、音声通話のプロセスを考えると理解しやすい。まず、電話機の送話器(マイク)が、人が発した声による空気の振動を捉える。この振動の強弱に応じて、連続的に変化する電気信号、すなわちアナログ信号を生成する。この電気信号が電話線を通じて相手方の電話機まで伝送される。受信側の電話機では、受話器(スピーカー)がこの電気信号を受け取り、信号の波形に合わせて振動板を震わせることで、元の音声、つまり空気の振動を再現する。このように、情報を物理的な波形として直接的に扱うのがアナログ伝送の大きな特徴である。

この方式にはいくつかの長所と短所が存在する。長所としては、構造が比較的単純であり、古くから存在する技術であるため、通信インフラが広く整備されている点が挙げられる。また、電話局から電話線を通じて電力が供給されるため、停電時であっても、電話機自体が外部電源を必要としないシンプルな構造のものであれば通話できる場合があるという利点もあった。

一方で、短所も多い。最も大きな問題は、ノイズの影響を受けやすいことである。伝送経路上で外部から雑音などのノイズが電気信号に混入した場合、元の音声信号とノイズを分離することが極めて困難である。また、信号は距離が長くなるほど減衰するため、途中で増幅器を介して信号を強くする必要があるが、その際にノイズも一緒に増幅されてしまう。これにより、伝送距離が長くなるほど通話品質が劣化する傾向にある。さらに、アナログ回線はもともと人間の音声の周波数帯域に合わせて設計されているため、伝送できる情報量が少なく、高速なデータ通信には不向きである。通話中は一対一で回線を占有するため、その回線を使って同時に別の通信を行うこともできない。

アナログ回線でコンピュータなどのデジタルデータを通信するためには、モデム(変復調装置)と呼ばれる機器が必要不可欠であった。コンピュータが扱う「0」と「1」のデジタル信号を、そのままアナログ回線に流すことはできない。そこで、送信側のモデムがデジタル信号をアナログ回線で伝送可能な音声周波数帯の信号(アナログ信号)に変換する「変調」を行い、受信側のモデムがそのアナログ信号を元のデジタル信号に戻す「復調」を行う。このダイヤルアップ接続と呼ばれる方式では、通信速度は最大でも56kbps程度と非常に低速で、インターネット接続中は電話の発着信ができないという制約があった。

現在では、通信技術の主流はデジタル回線へと完全に移行している。光ファイバーやADSLなどのブロードバンド回線は、すべてデジタル技術を基盤としており、アナログ回線とは比較にならないほど高速かつ高品質で、大容量のデータ通信を実現している。デジタル回線は、情報を「0」と「1」で明確に区別するためノイズに強く、伝送路上で信号が劣化しても容易に元の情報を復元できる。また、1本の回線で音声、データ、映像など複数の通信を同時に行う多重化も容易である。

このような背景から、個人宅でのインターネット接続用途としてアナログ回線が使われることはほぼなくなった。しかし、社会インフラの一部としては依然として利用されている場面もある。例えば、ビルのエレベーターに設置されている緊急連絡用の電話、施設の警備システムにおける異常通報装置、一部の事業所で利用されるFAX、小規模店舗のクレジットカード決済端末など、通信頻度は低いが確実な接続性が求められ、かつ伝送するデータ量が少ない用途で現役である。ただし、公衆交換電話網(PSTN)がIP網へ移行するのに伴い、これらの利用形態も将来的には変化していくことが予想される。