アナログ量(アナログリョウ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アナログ量(アナログリョウ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アナログりょう (アナログリョウ)

英語表記

analog quantity (アナログ クアンティティ)

用語解説

アナログ量とは、時間とともに連続的に変化する物理的な量を指す。これは、ある時点とその次の時点の間に、必ず中間的な値が存在する性質を持つ。例えば、温度、湿度、音量、明るさ、電圧、圧力などがアナログ量に該当する。温度計が示す25度と26度の間には、25.1度、25.11度、25.111度といった無限の細かな値が存在し、滑らかに変化していく。このように途切れることなく連続した値をとるのがアナログ量の本質的な特徴である。

これと対比される概念がデジタル量である。デジタル量は、アナログ量とは異なり、飛び飛びの離散的な値しかとらない。例えば、スイッチのオンとオフ、サイコロの出目(1から6の整数)、デジタル時計の表示などがデジタル量にあたる。1と2の間には中間の値が存在せず、明確に区別される。現代のコンピュータは、内部的にすべての情報を0と1の組み合わせ、すなわちデジタル量として処理する。そのため、コンピュータはアナログ量を直接扱うことができない。

アナログ量は、電気信号として表現される場合、アナログ信号と呼ばれる。アナログ信号は、信号の大きさ(電圧や電流など)が、元の物理量(音の大きさや光の強さなど)に比例して連続的に変化する波形の形で表される。この形式は、自然界の現象を非常に忠実に表現できるという長所を持つ。音声や映像といった情報は、もともと連続的な変化を持つアナログ量であるため、アナログ信号として扱うことで、その繊細なニュアンスまで捉えることが可能となる。

しかし、アナログ量にはいくつかの重要な課題も存在する。最大の課題は、ノイズ(雑音)に対する脆弱性である。アナログ信号は伝送経路上や記録媒体で外部からの電気的な干渉を受けやすく、一度ノイズが加わると、元の信号とノイズを完全に分離することは極めて困難である。これにより、信号の品質が劣化してしまう。また、アナログデータを複製する際にも、複製プロセスで生じる微小なノイズが蓄積され、繰り返すごとに品質が低下する。データの加工や計算処理も、デジタルデータに比べて複雑で精度を保つのが難しいという側面も持つ。

コンピュータシステムが現実世界の情報を扱うためには、この連続的なアナログ量を、コンピュータが処理できる離散的なデジタル量に変換する必要がある。この変換プロセスをA/D変換(アナログ-デジタル変換)と呼ぶ。A/D変換は主に三つのステップで構成される。第一に「標本化(サンプリング)」である。これは、連続的なアナログ信号を一定の時間間隔で区切り、その瞬間の値を測定する処理である。次に「量子化」が行われる。標本化で得られた各時点の値を、あらかじめ定められた段階的な数値に割り当てる。この際、元の滑らかな値が近似的な値に置き換えられるため、微小な誤差(量子化誤差)が生じる。最後に「符号化」によって、量子化された数値がコンピュータで扱える0と1の2進数データに変換される。

逆に、コンピュータが処理したデジタルデータを、人間が知覚できる音声や映像といったアナログ信号に戻すプロセスは、D/A変換(デジタル-アナログ変換)と呼ばれる。例えば、音楽ファイルを再生する際、コンピュータ内のデジタルデータがD/A変換器を通じてアナログの電気信号に変換され、スピーカーを振動させて音として出力される。

システムエンジニアにとって、アナログ量の理解は極めて重要である。特に、現実世界の物理現象を扱うシステム、例えばIoT(Internet of Things)の分野では必須の知識となる。温度センサー、湿度センサー、加速度センサーといった多くのセンサーは、測定対象の物理量をアナログの電気信号として出力する。これらのセンサーからデータを収集し、A/D変換を行い、クラウド上で分析・活用するシステムを構築する上で、アナログ信号の特性やA/D変換の仕組みを理解していなければならない。また、音声認識システムや画像処理システム、工場の生産ラインを制御するFA(ファクトリーオートメーション)システムなど、物理世界とデジタルシステムが接する多くの場面でアナログ量の知識が求められる。このように、デジタル技術が全盛の現代においても、現実世界とのインターフェースとしてアナログ量の概念は不可欠であり、その適切な取り扱いがシステムの品質を左右する重要な要素となっている。