アナログデジタル変換器(アナログデジタルヘンカンキ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アナログデジタル変換器(アナログデジタルヘンカンキ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アナログデジタル変換器 (アナログデジタルヘンカンキ)

英語表記

Analog-to-digital converter (アナログデジタルコンバーター)

用語解説

アナログデジタル変換器(ADC)は、現実世界のアナログ信号をデジタル信号に変換する電子回路のことだ。アナログ信号とは、連続的に変化する物理量を電気信号で表現したもので、温度、圧力、音、光などが該当する。一方、デジタル信号は、0と1の組み合わせで情報を表現する。コンピュータやデジタル機器はデジタル信号しか扱えないため、現実世界の情報を処理するためには、アナログ信号をデジタル信号に変換する必要がある。ADCは、まさにその役割を担う重要なデバイスだ。

ADCの動作原理は、主にサンプリング、量子化、符号化という3つの段階に分けられる。

まず、サンプリングは、連続的なアナログ信号を一定時間間隔で区切り、その時点での電圧値を抜き出す処理だ。この時間間隔はサンプリング周期と呼ばれ、その逆数がサンプリング周波数となる。サンプリング周波数が高いほど、元の信号に近いデジタル信号が得られるが、データ量も増える。サンプリング定理によれば、元の信号に含まれる最高周波数の2倍以上のサンプリング周波数でサンプリングすれば、元の信号を完全に復元できる。この最低限必要な周波数をナイキスト周波数と呼ぶ。

次に、量子化は、サンプリングされた電圧値を、あらかじめ定められた離散的なレベルのいずれかに割り当てる処理だ。ADCの分解能は、このレベルの数をビット数で表す。例えば、8ビットADCなら2の8乗、つまり256段階のレベルで電圧値を表現できる。分解能が高いほど、より細かく電圧値を表現できるため、変換精度が向上する。しかし、分解能を高くすると、回路規模が大きくなり、コストも増加する。量子化の際に、元の電圧値と割り当てられたレベルとの間に誤差が生じる。これを量子化誤差と呼ぶ。

最後に、符号化は、量子化されたレベルをデジタルコード(0と1の組み合わせ)に変換する処理だ。一般的には、バイナリコード(2進数)が用いられるが、グレイコードなどの他のコードも使用されることがある。符号化されたデジタルデータは、コンピュータやマイクロコントローラなどで処理できるようになる。

ADCには、様々な方式がある。代表的なものとして、逐次比較型、並列比較型(フラッシュ型)、ΔΣ型、パイプライン型などが挙げられる。

逐次比較型ADCは、基準電圧を段階的に調整しながら、入力電圧と比較し、デジタル値を決定する方式だ。比較的高い分解能と中程度の変換速度を持ち、汎用的な用途に適している。

並列比較型ADCは、複数のコンパレータを用いて入力電圧を同時に比較し、デジタル値を決定する方式だ。非常に高速な変換が可能だが、回路規模が大きく、消費電力も大きい。高速なデータ収集やビデオ処理などに用いられる。

ΔΣ型ADCは、オーバーサンプリングとノイズシェーピングという技術を用いて、高分解能を実現する方式だ。低速だが高精度であり、オーディオ機器や計測機器などに適している。

パイプライン型ADCは、複数のステージに分けて変換処理を行うことで、高速化と高分解能を両立する方式だ。ビデオ処理や通信機器などに用いられる。

ADCの性能を評価する指標としては、分解能、サンプリング周波数、変換精度、ダイナミックレンジ、消費電力などが挙げられる。これらの指標は、ADCを選択する際に重要な判断基準となる。

近年では、IoTデバイスの普及に伴い、低消費電力で高精度なADCの需要が高まっている。また、AIや機械学習の分野では、大量のデータを高速に処理できる高性能なADCが求められている。これらのニーズに応えるため、ADCの技術開発は日々進化している。例えば、より微細なプロセス技術を用いた低消費電力化、高度なキャリブレーション技術による高精度化、新しいアーキテクチャによる高速化などが進められている。

ADCは、現代のデジタル社会を支える基盤技術の一つであり、今後ますます重要性が増していくと考えられる。