角速度センサー(カクソクドセンサー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

角速度センサー(カクソクドセンサー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

角速度センサー (カクソクドセンサー)

英語表記

angular velocity sensor (アングラ ベロシティ センサー)

用語解説

角速度センサーとは、物体の回転する速さ、すなわち角速度を検出、測定するための電子部品である。ジャイロセンサーやジャイロスコープとも呼ばれ、現代のIT機器やシステムにおいて不可欠な役割を担っている。例えば、スマートフォンの画面が端末の向きに応じて縦横に自動で切り替わる機能や、デジタルカメラの手ブレ補正機能には、このセンサーが活用されている。また、家庭用ゲーム機のコントローラーがプレイヤーの腕の振りや傾きを検知したり、自動車の横滑り防止装置(ESC)が車体の意図しない回転を検知して姿勢を安定させたりする際にも、角速度センサーが中心的な働きをしている。さらに、ドローンが空中での安定した姿勢を保ちながら飛行できるのも、機体の回転をリアルタイムで検出し、モーターの出力を精密に制御しているからである。このように、角速度センサーは物体の向きや姿勢の変化を動的に捉えるために極めて重要であり、多くの場合、物体の傾きや直線的な動きを検出する加速度センサーと組み合わせて使用されることで、より高度な動作検知や姿勢制御を実現している。

角速度センサーを深く理解するためには、まず角速度そのものの定義を把握する必要がある。角速度とは、単位時間あたりに物体がどれだけの角度を回転したかを示す物理量である。物体の直線的な移動距離を時間で割ったものが速度であるのに対し、角速度は回転角度を時間で割ったものに相当し、「どの軸を中心に」「どれくらいの速さで」回転しているかを数値化する。単位としては、国際単位系(SI)ではラジアン毎秒(rad/s)が用いられるが、直感的に分かりやすい度毎秒(°/s)も広く使われる。角速度センサーは、この角速度を検出し、その大きさに応じた電気信号を出力するデバイスである。現在主流となっているのは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれる微細加工技術を用いて製造された振動式の角速度センサーである。この方式のセンサーは、物理現象である「コリオリの力」を応用している。コリオリの力とは、回転している座標系の上で移動する物体に対して働く見かけの力であり、その進行方向と回転軸の両方に垂直な向きに作用する。この力の大きさは、物体の質量と速度、そして回転系の角速度に比例するという特性を持つ。MEMS角速度センサーの内部には、シリコン基板上に形成された非常に小さな「おもり(振動子)」が存在する。まず、駆動用の電極がおもりに電圧を加え、一定の周波数で特定の方向に振動させる。この状態を駆動振動と呼ぶ。ここで、センサー自体に外部から回転運動、つまり角速度が加わると、振動しているおもりにコリオリの力が発生する。この力は駆動振動の方向とは垂直な向きに働くため、おもりは元々の振動に加えて、それとは垂直な方向にも振動を始める。これを検出振動と呼ぶ。検出振動の振幅は、センサーに加えられた角速度の大きさに比例する。センサー内部には、この検出振動を捉えるための検出用電極が配置されており、おもりが振動することで生じる電極間の微小な距離の変化を、静電容量の変化として検知する。この静電容量の変化量を電気信号に変換し、増幅することで、角速度をデジタルデータとして出力する仕組みである。MEMS技術の進歩により、角速度センサーは極めて小型かつ軽量、低消費電力、そして低コストで製造できるようになり、スマートフォンをはじめとする多種多様な電子機器への搭載が爆発的に進んだ。一般的に、センサーは特定の軸周りの回転を検出するように設計されており、1つの軸(例:ヨー軸)の回転を検出する1軸センサーから、3次元空間でのあらゆる回転を捉えるために3つの軸(X軸:ロール、Y軸:ピッチ、Z軸:ヨー)の角速度をそれぞれ検出できる3軸センサーまで存在する。現在の多くの機器では、この3軸角速度センサーが標準的に用いられている。これにより、物体の複雑な回転運動を完全に把握することが可能となる。システム開発において、角速度センサーは加速度センサーとしばしば混同されるが、両者の役割は明確に異なる。加速度センサーは、重力加速度を含む直線的な加速度を検出する。これにより、静止状態における物体の傾きや、移動に伴う速度の変化を検知することができる。一方、角速度センサーは、あくまで回転の速さを検出するものであり、静止時の傾きを直接測定することはできない。両者にはそれぞれ長所と短所がある。加速度センサーは静的な傾きを正確に把握できるが、乗り物のように重力以外の加速度が加わる環境では、傾きと移動加速度の区別が困難になる。対して角速度センサーは、回転運動を高速かつ高精度に検出できるが、時間と共に計測値の誤差が累積していく「ドリフト」という現象が発生しやすく、長時間の静止状態では正確な姿勢を維持し続けることが難しい。そこで、これらのセンサーの弱点を互いに補い合うために、両方を組み合わせて使用する「センサーフュージョン」という技術が広く用いられている。例えば、加速度センサーが検出した重力の方向を基準としてドリフトによる誤差を補正しつつ、角速度センサーで素早い姿勢の変化を捉えることで、動的な環境下でも安定的かつ高精度な姿勢推定を実現する。このような複数のセンサーを統合したモジュールは、IMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)と呼ばれ、ドローンやロボットの自律制御に欠かせない要素となっている。システムエンジニアが角速度センサーを扱う際には、センサーから出力される生データを物理的な意味を持つ角速度の単位(°/sなど)へ変換する処理が必要となる。また、製造上の個体差や温度変化による出力のズレを補正するためのキャリブレーションや、計測値に含まれるノイズを除去するためのフィルタリング処理も重要である。取得した角速度データを時間で積分すれば、回転した角度を算出することもできるが、ドリフト誤差の蓄積を防ぐために、加速度センサーや地磁気センサーのデータと組み合わせた高度なアルゴリズムの実装が求められる。

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