人工知能 (ジンコウチノウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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人工知能 (ジンコウチノウ) の読み方

日本語表記

人工知能 (ジンコウチノウ)

英語表記

Artificial Intelligence (アーティフィシャルインテリジェンス)

人工知能 (ジンコウチノウ) の意味や用語解説

人工知能(Artificial Intelligence、略称AI)とは、人間の知的な振る舞いをコンピュータ上で模倣したり、実現したりする技術や研究分野の総称である。具体的には、学習、推論、認識、判断、言語理解といった人間の思考プロセスや能力をコンピュータに持たせることを目指す。従来のプログラムが人間によって与えられたルールに基づいてしか動作しなかったのに対し、人工知能はデータからパターンを認識し、自ら学習して判断を下す能力を持つ点が特徴である。これにより、複雑な問題解決や、状況に応じた柔軟な対応が可能となる。その究極的な目標は、人間が持つ知能と遜色のない、あるいはそれを超える知能を機械に持たせることにあるが、現在実用化されている多くのAIは、特定のタスクに特化した形でその能力を発揮している。 人工知能の研究は1950年代に始まり、その歴史の中でいくつかの大きな波を経験してきた。初期のAIは、記号論理学に基づき、知識をルールとしてコンピュータに与え、推論を行う「エキスパートシステム」などが主流であったが、人間の持つ多様な知識や常識をすべてルール化することの困難さから、応用範囲には限界があった。1980年代以降、コンピュータの処理能力向上とデータ量の増加を背景に、データから特徴やパターンを自動的に学習する「機械学習」が注目を集めるようになる。機械学習は、教師あり学習、教師なし学習、強化学習といった手法に分類され、画像認識や音声認識、レコメンデーションシステムなどで広く応用されてきた。 2010年代に入ると、機械学習の一種である「深層学習(ディープラーニング)」が劇的に発展し、人工知能の能力を飛躍的に向上させた。深層学習は、人間の脳の神経回路網を模した「ニューラルネットワーク」を多層化したモデルであり、大量のデータから自動的に複雑な特徴量を抽出する能力を持つ。これにより、画像認識においては人間を超える認識精度を達成し、自然言語処理では機械翻訳やテキスト生成、音声認識の分野で革新をもたらした。例えば、スマートフォンに搭載された音声アシスタントや、顔認証システム、自動運転技術の一部、医療診断支援システムなど、私たちの身近な場所で深層学習を活用したAIが機能している。 現在の人工知能は、その能力の範囲によって大きく二つに分類できる。一つは「特化型人工知能(ANI: Artificial Narrow Intelligence)」であり、これは特定のタスクや問題解決に特化したAIを指す。例えば、囲碁AI、画像認識AI、翻訳AIなどがこれにあたる。現在実用化されているほとんどのAIはこの特化型である。もう一つは「汎用人工知能(AGI: Artificial General Intelligence)」であり、これは人間のように多様な知識を統合し、様々な問題を自律的に解決できる、真の意味での汎用的な知能を持つAIを指す。AGIの実現は未だ研究段階にあり、多くの課題が残されている。 システムエンジニアを目指す者にとって、人工知能は非常に重要な技術分野である。AIシステムの開発では、まずどのような課題をAIで解決したいのかを明確にする「要件定義」が不可欠となる。次に、AIモデルの学習に必要なデータを収集し、前処理を行う。このデータの前処理は、AIの性能を大きく左右する重要な工程である。その後、目的に応じて適切な機械学習アルゴリズムや深層学習モデルを選定し、学習と評価を繰り返して最適なモデルを構築する。構築したモデルは、既存のシステムやアプリケーションと連携させ、実際の業務に組み込む「システム統合」が必要となる。デプロイ後も、AIモデルの性能が維持されているか監視し、必要に応じて再学習や調整を行う「運用・保守」もシステムエンジニアの重要な役割である。 AIの導入は、データの偏り(バイアス)による不公平な判断、判断プロセスの不透明性、倫理的な問題など、新たな課題も生じさせる。システムエンジニアは、これらの課題を理解し、公平性、透明性、説明責任といった倫理的側面も考慮に入れたAIシステムを設計・開発することが求められる。AIは単なるプログラムではなく、社会に大きな影響を与える可能性を秘めているため、技術的な知見だけでなく、社会的な影響や倫理に対する深い洞察力も今後のシステムエンジニアには不可欠となるだろう。

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