オーソライゼーション(オーソライゼーション)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

オーソライゼーション(オーソライゼーション)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

認証 (ニンショウ)

英語表記

Authorization (オーソライゼーション)

用語解説

「オーソライゼーション」とは、システムやアプリケーションにおいて、認証されたユーザーやプロセスが特定のリソース(データ、機能、ファイルなど)に対して、どのような操作(読み取り、書き込み、削除など)を許可されているかを確認し、制御する仕組みである。日本語では「認可」と訳されることが多い。

この概念を理解する上で、よく混同される「認証(Authentication)」との違いを明確にすることが非常に重要だ。認証が「あなたは誰ですか?」という本人確認を行うプロセスであるのに対し、オーソライゼーションは「あなたはこれについて何ができますか?」という権限確認を行うプロセスである。例えば、銀行のATMでキャッシュカードを挿入し、暗証番号を入力して本人であることを確認する行為が「認証」にあたる。認証が成功した後、そのユーザーが「現金を引き出す」「残高を照会する」「振込をする」といった、どの操作を許可されているかを確認し、それ以外の操作(例えば、他の口座の情報を閲覧する)を拒否するのが「オーソライゼーション」だ。システムセキュリティにおいて、この二つの概念は密接に関連し、通常は認証が成功した後にオーソライゼーションが行われる。

オーソライゼーションは、適切なユーザーに適切なアクセス権限のみを与えることで、システムの安全性と整合性を保つための基盤となる。もしオーソライゼーションが適切に行われなければ、認証を突破した悪意のあるユーザーがシステム内のあらゆる情報にアクセスしたり、重要なデータを改ざんしたりする可能性があり、システムの信頼性を著しく損なう結果となる。

より詳細にオーソライゼーションの仕組みを見ていこう。システムがユーザーからの操作要求を受け取ると、まずその要求がどのリソースに対するもので、どのようなアクションを伴うものかを識別する。次に、その要求を行ったユーザーが、事前に定義されたルールやポリシーに基づいて、そのアクションをそのリソースに対して実行する権限を持っているかを判断する。この判断は、一般的に以下のような様々なアクセス制御モデルに基づいて行われる。

最も一般的なアクセス制御モデルの一つに、「ロールベースアクセス制御(RBAC: Role-Based Access Control)」がある。これは、ユーザーを「ロール(役割)」に割り当て、そのロールに対して特定の権限を付与する方式だ。例えば、「管理者」「一般ユーザー」「閲覧者」といったロールを定義し、それぞれに異なる権限を割り当てる。新しくユーザーが追加された場合、そのユーザーに適切なロールを割り当てるだけで、必要な権限が付与される。これにより、個々のユーザーごとに権限を設定するよりも、はるかに管理が容易になり、大規模なシステムにおいて特に有効だ。例えば、企業の人事システムでは、「人事部員」ロールには従業員情報の閲覧・編集権限を付与し、「経理部員」ロールには給与計算関連機能へのアクセス権限を付与するといった形で利用される。

もう一つは、「アクセス制御リスト(ACL: Access Control List)」だ。これは、特定のリソース(ファイル、ディレクトリ、データベースのテーブルなど)ごとに、どのユーザー(またはグループ)がどのような操作を許可されているかを明示的に記述したリストである。リソースごとに細かく権限を設定できるため、非常に詳細なアクセス制御が可能となるが、管理対象のリソースが多い場合やユーザー数が多い場合には、管理が複雑になる傾向がある。例えば、ある特定のファイルに対して、Aさんには読み取りと書き込みを許可し、Bさんには読み取りのみを許可するといった設定が可能である。

さらに高度な制御モデルとして、「属性ベースアクセス制御(ABAC: Attribute-Based Access Control)」がある。これは、ユーザーの属性(部署、役職、所在地など)、リソースの属性(機密性、作成日時など)、環境の属性(アクセス元のIPアドレス、時間帯など)といった、様々な属性情報を組み合わせてアクセス判断を行う方式だ。ABACは、よりきめ細かく、動的なアクセス制御を可能にする。例えば、「人事部の社員が、平日の営業時間内に、社内ネットワークからのみ、機密レベル『高』の従業員データベースを閲覧可能」といった非常に複雑なルールも実装できる。

システム開発の観点から見ると、オーソライゼーションの設計は非常に重要である。要件定義の段階で、どのようなユーザーがどのような情報や機能にアクセスできるべきかを明確に定義し、それを具体的な権限設計に落とし込む必要がある。また、「最小権限の原則(Principle of Least Privilege)」を遵守することがセキュリティのベストプラクティスとされている。これは、ユーザーやシステムには、その業務を遂行するために必要最小限の権限のみを与えるべきという考え方だ。これにより、もしアカウントが侵害された場合でも、その被害を最小限に抑えることができる。

まとめると、オーソライゼーションは、システムセキュリティの中核をなす要素であり、認証と組み合わせることで、正当なユーザーが正当な範囲内でシステムを利用できるようにする役割を担う。システムの安定稼働、機密情報の保護、法規制遵守、そしてユーザーの利便性確保のためにも、適切に設計・実装・運用されるべき不可欠な機能である。システムエンジニアを目指す上では、このオーソライゼーションの概念と、それを実現するための様々なアクセス制御モデルについて深く理解しておくことが求められる。