アベイラビリティ(アベイラビリティ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
アベイラビリティ(アベイラビリティ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
可用性 (カヨウセイ)
英語表記
Availability (アベイラビリティ)
用語解説
アベイラビリティとは、システムが「利用可能であること」、すなわち、サービスが正常に動作し、ユーザーが問題なく利用できる状態にある割合や期間を指す。日本語では「可用性」と訳され、ITシステムにおいて最も重要な要件の一つとされている。現代のビジネスや日常生活において、多くのサービスがITシステムに依存しているため、システムが停止せずに継続してサービスを提供し続ける能力は、企業の信頼性や収益性、さらには社会インフラの安定性にも直結する。
アベイラビリティは、システムが計画された機能をどれだけの時間、正常に提供し続けられるかを示す指標であり、一般的には稼働率という形で表現される。稼働率は、システムが利用可能であった時間と、全稼働予定時間の比率で算出されることが多い。「99.9%」や「99.999%」といった高い数値で示されることが一般的で、数値が高いほどシステムが停止する時間が少ないことを意味する。例えば、年間で99.9%のアベイラビリティは、年間約8.76時間の停止を許容する一方で、99.999%のアベイラビリティは、年間約5分15秒しか停止が許されない計算になる。このように、小数点以下のわずかな数値の違いが、許容される停止時間に大きな差をもたらすため、システム設計時には目標とするアベイラビリティレベルを明確に定めることが極めて重要である。
アベイラビリティを評価する上で、平均故障間隔(MTBF:Mean Time Between Failures)と平均修復時間(MTTR:Mean Time To Repair)という二つの重要な指標がある。MTBFはシステムが故障してから次に故障するまでの平均時間を示し、故障の起こりにくさを表す。一方、MTTRはシステムが故障してから修復されて正常稼働に戻るまでの平均時間を示し、復旧の速さを表す。アベイラビリティを高めるには、MTBFを長くして故障そのものの発生頻度を減らすか、MTTRを短くして故障からの復旧時間を早めるか、あるいはその両方に取り組む必要がある。
アベイラビリティを高めるための具体的な技術や手法は多岐にわたる。その中心となる考え方は「冗長化」である。これは、システムの一部が故障しても全体が停止しないように、予備の機器やコンポーネントを複数用意しておくことだ。例えば、サーバーを複数台用意し、一台が故障したら自動的に別のサーバーに処理を引き継ぐ「フェイルオーバー」機能や、複数のサーバーに処理を分散させて負荷を軽減する「ロードバランシング」などがこれにあたる。ストレージにおいても、RAID(Redundant Array of Independent Disks)などの技術を用いてデータを複数のディスクに分散・複製することで、一部のディスクが故障してもデータが失われたり、システムが停止したりするのを防ぐ。ネットワーク経路も複数用意しておくことで、システム全体の中で単一の障害点がボトルネックとならないような設計(単一障害点、SPOF: Single Point of Failureの排除)が求められる。
また、データのバックアップと、そのバックアップが確実に復旧できることの検証も、アベイラビリティを確保する上で不可欠である。災害や重大なシステム障害が発生した場合に備え、遠隔地に複製したシステムを稼働させる「災害対策(DR:Disaster Recovery)」も重要なアプローチである。これにより、単一のデータセンターが被災してもサービスを継続できる可能性が高まる。システムの監視もアベイラビリティ維持のために欠かせない。システムの状態を常に監視し、異常を早期に検知することで、大きな障害に発展する前に問題を解決できる。定期的なメンテナンス、セキュリティパッチの適用、システムのアップグレードなども、システムの安定稼働に寄与し、予期せぬ障害の発生リスクを低減する。
アベイラビリティはシステムの設計段階から考慮されるべき要素だ。システムの要件定義の際に、どの程度の可用性を目標とするかを明確にし、それに合わせたアーキテクチャの選定や技術要素の採用を行う必要がある。運用段階に入ってからも、SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証)としてアベイラビリティの目標値が設定され、それが達成されているかどうかが継続的に測定・評価される。
アベイラビリティは、信頼性(Reliability)や保守性(Maintainability)といった概念と密接に関連している。信頼性はシステムが一定期間、故障せずに稼働し続ける能力を指し、MTBFと関係が深い。保守性はシステムが故障した際に、いかに迅速かつ容易に修復できるかを示す能力であり、MTTRと関係が深い。これら三つの特性は、システム全体の品質を決定する重要な要素となる。高いアベイラビリティを実現するには、当然ながら相応のコストがかかる。冗長構成のための追加ハードウェア、複雑なシステム設計、高度な運用管理、そしてそれらを支える専門的な技術者のスキルなど、多大な投資が必要となるため、ビジネス要件や予算、リスク許容度を考慮し、どの程度のアベイラビリティを目指すのか、適切なバランス点を見極めることが重要である。過剰なアベイラビリティは無駄なコストを生み、不足したアベイラビリティはビジネス機会の損失や顧客からの信頼失墜につながるため、その最適化が常に求められる。
アベイラビリティは、ITシステムがビジネス価値を提供し続ける上で不可欠な要素であり、単なる技術的な課題に留まらず、企業のビジネス戦略そのものと深く結びついている。システムの安定稼働はユーザー満足度、企業の評判、そして最終的な収益に大きな影響を与えるため、システムエンジニアを目指す者はアベイラビリティの概念とその実現方法を深く理解しておくことが必須となる。