一括処理(イッカツショリ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

一括処理(イッカツショリ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

一括処理 (イッカツショリ)

英語表記

batch processing (バッチプロセッシング)

用語解説

一括処理とは、コンピュータシステムにおいて、複数のデータや作業を個別に一つずつ処理するのではなく、まとめて一度に処理する方式を指す。これは、システムのリソースや時間を効率的に利用するための基本的な手法の一つである。例えば、会社で毎日発生する大量の受注データを、その都度一つずつデータベースに登録していくのではなく、一日の終わりにまとめて取り込んだり、月末に全従業員の給与計算をまとめて実行したりするような場面が一括処理の典型的な例である。個々の処理にかかるオーバーヘッドを減らし、全体として処理効率を高めることを主な目的としている。多くの企業システムでは、オンラインで即時性が求められる処理と並行して、裏側で大量のデータを扱う一括処理が常時実行されている。

一括処理の必要性は、主に以下の点にある。まず、リソース効率の向上が挙げられる。個別の処理ごとにシステムを起動・停止したり、データを読み書きしたりするオーバーヘッドは、処理対象が増えるほど無視できないものとなる。一括処理では、一度システムリソース(CPU、メモリ、ディスクI/Oなど)を確保し、そのリソースを最大限に活用して連続的にデータを処理するため、個々の処理の準備や終了にかかる無駄を削減できる。次に、時間効率の向上である。大量のデータ処理は、システムに高い負荷をかける場合が多い。リアルタイム性が求められない処理であれば、ユーザーがシステムを利用しない深夜や早朝など、システム負荷の低い時間帯を選んで集中して実行することで、日中のオンライン処理への影響を最小限に抑えることが可能になる。また、大量のデータに対する複雑な集計や加工を必要とする場合、一度にまとめて処理することで、全体の処理時間を短縮できる場合も多い。さらに、データ整合性の維持という観点も重要である。複数のデータに対する一連の操作を一つのまとまりとして扱うことで、処理途中でシステム障害が発生した場合でも、処理が完全に成功するか、完全に失敗するかのどちらかの状態にできるため、データの不整合を防ぎやすくなる。これは「トランザクション」と呼ばれる概念と密接に関連しており、特にデータベースを扱う一括処理では欠かせない考慮点となる。

一括処理は様々な形態で実装されるが、その中でも特に代表的なのが「バッチ処理」である。バッチ処理は、あらかじめ定義された処理手順に従って、投入された一連のデータを人間が介在することなく自動的に実行する形式の一括処理である。これは、定期的なデータ集計、ログファイルの解析、請求書の作成、バックアップ処理など、多岐にわたる用途で利用される。また、ファイルからデータを読み込み、処理後に別のファイルとして結果を出力する「ファイル処理」や、データベース上でSQL文を用いて複数のレコードを一気に更新・削除・挿入する操作も、広義の一括処理に含まれる。

一括処理の設計と実装においては、いくつかの重要な考慮点がある。第一に、処理対象データの特定と抽出方法である。どのデータを、どのような条件で、いつ処理の対象とするのかを明確に定義する必要がある。例えば、特定の日付範囲のデータのみを処理する、特定のステータスを持つデータのみを処理するといった条件設定が考えられる。第二に、処理ロジックの設計である。データ加工、変換、集計、書き込みなど、具体的な処理手順を正確に設計する。この際、エラーが発生した場合の動作、例えば不正なデータが見つかったときにそのデータをスキップして処理を続行するのか、それとも処理全体を中断するのか、といったエラーハンドリングの仕組みを考慮する必要がある。第三に、パフォーマンスチューニングである。大量のデータを効率よく処理するために、データベースのインデックスを適切に利用する、メモリ上で可能な限り処理を行う、処理を複数のスレッドやプロセスに分割して並列実行するなどの工夫が求められる。また、処理が途中で失敗した場合に、最初からやり直すのではなく、失敗した時点から処理を再開できるような「リスタート機能」を実装することも、大規模な一括処理では重要となる。第四に、監視と運用である。一括処理は人間がリアルタイムで操作することが少ないため、処理の開始、終了、成功、失敗、実行時間などを自動的に監視し、問題が発生した場合にはアラートを発する仕組みが必要となる。これにより、システムの安定稼働を保つことができる。

一括処理は、リアルタイム処理とは対照的な性質を持つ。リアルタイム処理は、個々のリクエストに対して即座に応答を返すことを目的とするのに対し、一括処理は即時性が求められない、あるいはそこまでのスピードが不要な、大量のデータ処理に適している。現代のITシステムでは、顧客からの注文を即座に処理するリアルタイム処理と、その注文データを集計して経営分析レポートを作成する一括処理のように、両者が連携しながらそれぞれの役割を果たしているのが一般的である。システムエンジニアにとって、一括処理の概念と実装の原則を理解することは、堅牢で効率的なシステムを構築するための基礎知識となる。

一括処理(イッカツショリ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説 | いっしー@Webエンジニア