候補キー (コウホキー) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
候補キー (コウホキー) の読み方
日本語表記
候補キー (コウホキー)
英語表記
candidate key (キャンディデートキー)
候補キー (コウホキー) の意味や用語解説
データベースにおける候補キーとは、リレーション(テーブル)内のそれぞれのタプル(行)を一意に識別できる属性(列)または属性の集合のうち、最小性を持つものを指す。これは、リレーショナルデータベースの設計において、データの一意性と整合性を保証するための非常に重要な概念である。候補キーは、後に主キーとして選定される可能性のあるキーの候補となる。 候補キーの第一の条件は「一意性」である。これは、リレーション内のどの二つのタプルも、候補キーの値が同じになることはないという性質を意味する。例えば、学生の情報を管理するリレーションにおいて、学籍番号が候補キーである場合、異なる学生が同じ学籍番号を持つことは決してない。この一意性によって、データベースから特定のタプルを迷うことなく正確に特定し、参照することが可能となる。データが重複することなく、常に正確な情報にアクセスできる基盤となるため、データ品質の維持に不可欠な要素である。 第二の条件は「最小性」である。これは、候補キーを構成する属性の集合から、どの属性を一つでも取り除くと、もはやその属性の集合ではタプルを一意に識別できなくなるという性質を意味する。つまり、候補キーは、タプルを一意に識別するために必要最小限の属性で構成されており、冗長な属性を含まない。例えば、「氏名」と「生年月日」の組み合わせが候補キーになりうると仮定した場合、もし「氏名」単独では同姓同名の人がいるために一意に識別できないが、「氏名」と「生年月日」の組み合わせなら一意に識別でき、かつ「氏名」か「生年月日」のどちらか一方でも取り除くと一意に識別できなくなるのであれば、それは最小性を持つ候補キーであると言える。しかし、「氏名」「生年月日」「電話番号」の組み合わせがもし一意に識別できたとしても、「氏名」と「生年月日」だけで一意に識別できるのであれば、「電話番号」は冗長であるため、これは最小性を持たないキーであり、候補キーとはならない。最小性の条件は、データベースの効率的な運用や、不要なデータ構造の複雑化を避ける上で重要となる。 リレーションには複数の候補キーが存在する場合がある。例えば、ある会社の従業員リレーションにおいて、「社員番号」は一意であり最小性を持つため、候補キーである。また、「メールアドレス」も社内で一意に使用されているのであれば、これも候補キーになりうる。さらに、「氏名」と「生年月日」と「部署コード」の組み合わせなども、設計によっては候補キーとなる可能性がある。このように複数の候補キーが存在する場合、データベース設計者はその中から一つを「主キー」として選定する。主キーは、リレーションを代表する一意な識別子として、他のリレーションからの参照(外部キー)の対象となるなど、最も重要な役割を担うキーとなる。 主キーに選ばれなかった候補キーは「代替キー(Alternate Key)」と呼ばれることがある。代替キーも、主キーと同様にタプルを一意に識別する能力を持つため、データベースシステム上では、その一意性を保証するために「UNIQUE制約」などの制約が適用されることが一般的である。これにより、主キーではないが、特定の目的のために一意な識別子として利用される場面で、データの重複を防ぎ、整合性を保つことができる。 候補キーを正確に特定し、データベース設計に組み込むことは、以下のような点で非常に重要である。 第一に、データの整合性を維持するためである。候補キーによって各タプルが一意に識別されるため、データの重複入力や誤った更新を防ぎ、常に正確な情報をデータベースが保持することを保証する。 第二に、データの検索効率を高めるためである。一意な識別子である候補キーを検索条件に用いることで、データベースシステムは目的のタプルを迅速かつ正確に特定できる。これは、インデックスと組み合わせることでさらに効果を発揮し、大規模なデータベースにおけるパフォーマンス向上に寄与する。 第三に、リレーションシップの確立を可能にするためである。主キーとして選ばれた候補キーは、他のリレーションの外部キーとして利用され、複数のリレーション間でのデータ連携や関連付けを確立する基盤となる。これにより、複雑なビジネスロジックを複数のテーブルにまたがって表現し、管理することが可能になる。 実際のデータベースシステム(リレーショナルデータベース管理システム、RDBMS)では、候補キーの概念は「PRIMARY KEY(主キー)」制約と「UNIQUE KEY(一意キー)」制約によって実現される。PRIMARY KEY制約が設定された属性または属性の集合は、自動的にUNIQUE(一意)であり、かつNOT NULL(NULL値ではない)であることが保証されるため、主キーとなる候補キーの特性を完全に満たす。一方、UNIQUE KEY制約は、その属性または属性の集合が一意であることを保証するが、NULL値を許容する場合もある(ただし、一部のRDBMSではUNIQUE KEYもNULLを許容しない設定が可能)。これにより、主キー以外の候補キーもその一意性をシステムレベルで強制し、データ品質を維持することができる。 システムエンジニアを目指す初心者にとって、候補キーの理解は、データベース設計の基礎を固める上で不可欠である。どのような属性が候補キーになりうるのか、なぜ一意性と最小性が重要なのかを把握することで、データの性質を深く理解し、堅牢で効率的なデータベースシステムを構築するための土台を築くことができる。これは、将来的にシステムの要件定義、データモデリング、データベースの実装、運用保守といった様々な工程で役立つ知識となるだろう。