静電容量方式 (セイデンヨウリョウホウシキ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

作成日: 更新日:

静電容量方式 (セイデンヨウリョウホウシキ) の読み方

日本語表記

静電容量方式 (せいでんようりょうほうしき)

英語表記

Capacitive sensing (キャパシティブ センシング)

静電容量方式 (セイデンヨウリョウホウシキ) の意味や用語解説

静電容量方式とは、タッチパネルの入力検出技術の一つである。現代のスマートフォンやタブレット端末のディスプレイに最も広く採用されている方式であり、その特徴は軽く触れるだけで直感的な操作が可能な点にある。この方式は、物体が近づくことによって生じる静電容量、すなわち電荷を蓄える能力の変化を検知して、タッチされた位置を特定する原理に基づいている。人間の身体が微量の電気を帯びており、電気を通す導体である性質を利用しているのが大きな特徴である。画面に直接物理的な圧力を加える必要がないため、スムーズなスワイプ操作や複数の指で同時に操作するマルチタッチなどを実現できる。我々が日常的に利用する多くのタッチデバイスの快適な操作性は、この静電容量方式によって支えられている。 さらに詳細な仕組みについて解説する。静電容量方式のタッチパネル表面、あるいは内部には、インジウム・スズ酸化物(ITO)などで作られた透明な導電性の膜が配置されている。この導電膜には常に微弱な電圧がかけられており、パネル全体に均一な電界が形成されている状態にある。ここに指のような導電性を持つ物体が近づくと、人間の身体が一種のコンデンサとして機能し、タッチパネルの導電膜と指との間に静電結合が発生する。これにより、指が触れた部分の静電容量が変化し、電界の均一性が乱れる。タッチパネルに内蔵されたコントローラーは、この静電容量の変化を常時監視しており、変化が検出された位置を座標として特定することで、タッチ入力を認識する。 静電容量方式は、その構造と検出方法によって主に二つの種類に分類される。一つは「表面静電容量方式」である。この方式では、ガラス基板の表面に導電膜を均一にコーティングし、その四隅に配置された電極から電圧をかける。指が画面に触れると、その点から人体を通して微弱な電流が流れ出す。四隅の電極は、それぞれが検出する電流値の変化量を測定し、その比率からタッチされた位置を割り出す。構造が比較的単純で耐久性が高いという利点があるが、複数の点を同時に検出するマルチタッチには原理的に対応が難しく、主にATMや自動券売機など、単一のタッチ操作が中心となる産業用機器に利用されることが多い。 もう一つは「投影型静電容量方式」であり、今日のスマートフォンやタブレットの主流となっている技術である。この方式では、X軸方向とY軸方向にそれぞれ配置された多数の透明電極が、ガラス基板の内部で格子状のパターンを形成している。指が画面に近づくと、その直下にあるX電極とY電極が交差するポイントの電極間の静電容量が顕著に変化する。コントローラーは全ての交点の静電容量を高速でスキャンし、変化した交点の座標を特定する。この格子状のセンサーにより、非常に高い精度での位置検出が可能となるだけでなく、複数の指が同時に触れた場合でも、それぞれの座標を個別に認識できるため、ピンチインやピンチアウトといったマルチタッチ操作が実現される。 静電容量方式の利点は数多く存在する。まず、センサー層が透明であるため、ディスプレイの光透過率が高く、表示される画像の鮮明さを損なわない。また、物理的な圧力を検知する抵抗膜方式とは異なり、軽く触れるだけで反応するため、応答性が高く滑らかな操作感を提供する。さらに、表面が硬いガラスやプラスチックで保護されているため、傷や摩耗に対する耐久性が高い点もメリットである。一方、欠点も存在する。この方式は導電性を利用するため、指や専用のスタイラスペンのような電気を通す物体でなければ反応しない。そのため、一般的な手袋を着用したままでは操作が困難である。また、画面上に水滴が付着した場合、水も導体であるため静電容量の変化を引き起こし、誤作動の原因となることがある。これらの特性を理解することは、システム開発において適切なユーザーインターフェースを設計する上で重要となる。

静電容量方式 (セイデンヨウリョウホウシキ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説