カスケード接続(カスケードせつぞく)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

カスケード接続(カスケードせつぞく)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

カスケード接続 (カスケードせつぞく)

英語表記

cascade connection (カスケード コネクション)

用語解説

カスケード接続とは、複数の機器を連結してシステムを拡張する接続方式である。これは、一つの機器の出力ポートを次の機器の入力ポートに接続していくことで、まるで数珠つなぎのように機器を連続させる方法を指す。主に、ネットワーク機器、ディスプレイ、USBハブなどで利用され、システムの機能拡張やポート不足の解消、物理的な距離の延長といった目的で採用される。この接続により、単一の機器では実現できない大規模なシステム構築や、限られたリソースの有効活用が可能となる。しかし、接続する機器の段数が増えることで、通信の遅延や性能の低下、管理の複雑化といった課題も生じる場合がある。

カスケード接続の基本的な動作原理は、各機器がデータや信号を受け取り、それを処理または中継して、次の機器へ順次渡していく点にある。このとき、最初に接続される機器を上位機器、その次に接続される機器を下位機器と呼ぶことがあり、情報は一般的に上位から下位へと流れる。この接続形態は、デイジーチェーン接続と呼ばれることもあり、実質的に同じ概念を示すことが多い。機器の種類や文脈によって呼び方が使い分けられる。

具体的な適用例として、まずネットワーク機器におけるハブやスイッチのカスケード接続が挙げられる。例えば、オフィスでネットワークポートが不足した場合、既存のハブやスイッチの空いているポートと、新しいハブやスイッチのポートをケーブルで接続することで、利用可能なポート数を増やすことができる。この接続には、通常のポートを使用する場合と、アップリンクポートと呼ばれる専用のポートを使用する場合がある。アップリンクポートは、他の機器との接続に特化しており、MDI/MDI-X(メディア依存インターフェース/メディア依存インターフェースクロスオーバー)の自動切り替え機能を持つことが多い。しかし、ハブを多段にカスケード接続すると、衝突ドメインが拡大し、データ衝突の頻度が増加して通信性能が著しく低下する可能性がある。スイッチングハブの場合は、衝突ドメインを分割できるためハブほどの影響は少ないが、ブロードキャストドメインの拡大や、不適切な接続によるネットワークループの発生には注意が必要である。ネットワークループは、データが無限に転送され続ける現象を引き起こし、ネットワーク全体の停止につながる可能性があるため、スパニングツリープロトコルなどの対策が不可欠となる場合がある。

次に、ディスプレイにおけるカスケード接続がある。近年では、DisplayPortのMST(Multi-Stream Transport)機能を利用して、一枚のグラフィックボードから複数のモニターを数珠つなぎに接続し、マルチモニター環境を構築することが可能となっている。これは、一本のDisplayPortケーブルで複数の映像信号を伝送できる技術であり、ケーブル配線を簡素化できる利点がある。ただし、この機能を利用するには、グラフィックカードとモニターの両方がMSTに対応している必要がある。

また、USBハブのカスケード接続も一般的である。パソコンのUSBポートが足りない場合、USBハブに別のUSBハブを接続することで、さらに多くのUSBデバイスを接続できるようになる。しかし、USBバスパワー給電のハブを多段に接続すると、電力供給能力が不足し、接続されたデバイスが正常に動作しなくなる可能性がある。そのため、電力消費の大きいデバイスを接続する際には、セルフパワー(ACアダプターで給電)のUSBハブを利用することが推奨される。また、USBのバージョンや接続段数によっては、通信速度が低下することもある。

その他、KVMスイッチ(Keyboard, Video, Mouseスイッチ)もカスケード接続が可能な製品がある。これは、一台のキーボード、マウス、モニターで複数のコンピューターを切り替えて操作するための機器であり、KVMスイッチ自体をカスケード接続することで、さらに多くのコンピューターを管理できるようになる。

カスケード接続の大きなメリットは、既存のシステムやインフラを有効活用しながら、段階的に機能や規模を拡張できる点にある。これにより、初期投資を抑えつつ、必要に応じてシステムを成長させることが可能となる。また、ケーブル配線を簡素化し、物理的な距離を延長できる場合もある。

一方で、デメリットも存在する。最も重要なのは、機器を多段に接続することによる性能の低下である。特にネットワークでは、遅延の増加や帯域幅の圧迫、衝突の増加といった問題が生じやすい。また、途中の機器に障害が発生した場合、それ以降に接続されている機器すべてが影響を受け、システム全体が停止する可能性があるため、単一障害点のリスクとなる。さらに、接続段数には各規格で上限が定められていることが多く、無制限に接続できるわけではない。システムの複雑性が増すことで、トラブルシューティングや管理が難しくなる点も考慮すべきである。システムを設計する際には、カスケード接続の利点と限界を十分に理解し、目的に応じた適切な設計を行うことが、安定した運用を実現する上で極めて重要となる。

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