セルラー方式 (セルラーホウシキ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
セルラー方式 (セルラーホウシキ) の読み方
日本語表記
セルラー方式 (セルラーホウシキ)
英語表記
cellular system (セルラーシステム)
セルラー方式 (セルラーホウシキ) の意味や用語解説
セルラー方式は、移動体通信システムにおいて、限られた無線周波数資源を最大限に活用し、広範囲にわたる多数の移動体ユーザーに安定した通信サービスを提供するための基盤となる技術概念である。この方式の根幹は、サービス提供エリアを複数の小さな地理的領域、すなわち「セル」に分割し、それぞれのセルに「基地局」を配置することにある。これにより、ユーザーが移動しても通信が継続される高いモビリティと、多くのユーザーを収容できる高い通信容量を実現する。 詳細に述べると、セルラー方式の最も重要な特徴の一つは「周波数再利用」である。無線通信では、同じ周波数を同時に使用すると電波が干渉し合い、通信品質が著しく低下する。しかし、広大なエリアで多数のユーザーにサービスを提供するには、利用可能な周波数が常に不足するという問題がある。セルラー方式は、電波の減衰特性を利用し、地理的に十分に離れた非隣接のセルであれば、同じ周波数を再利用しても互いの干渉を許容範囲内に抑えることができるという原理に基づいている。これにより、限られた周波数帯域で、全体として非常に大きな通信容量を確保することが可能となる。各基地局は、割り当てられた周波数チャネルを用いて、セル内の移動端末(スマートフォンやタブレットなど)と無線で通信する。 ユーザーが移動し、あるセルから隣接する別のセルへと移動する際には、通信が途切れることなく継続されるよう「ハンドオーバー(ハンドオフ)」という機能が不可欠である。移動端末は常に周囲の複数の基地局から受信する電波の強度や品質を測定しており、現在接続している基地局の電波強度が弱くなり、隣接するセルの基地局の電波が十分に強くなると、システムは自動的かつシームレスに接続先を新しい基地局へと切り替える。このプロセスはユーザーにはほとんど意識されることなく行われるため、通話やデータ通信が途切れることなく維持される。 セルラーシステムは複数の主要な構成要素から構築される。末端に位置し、移動端末と直接無線で通信を行うのが各セルに設置される「基地局(Base Station、例えばLTE世代のeNodeBや5G世代のgNodeBなど)」である。複数の基地局は「基地局制御装置(Base Station Controller: BSCやRadio Network Controller: RNCなど)」によって管理され、無線資源の割り当てやハンドオーバーの制御といった無線アクセスネットワーク(RAN)全体の運用を担う。さらに上位には、音声通話などの回線交換系の通信を制御する「移動交換センタ(Mobile Switching Center: MSC)」や、データ通信などのパケット交換系の通信を制御する「サービスGPRSサポートノード(SGSN)」、「モビリティ管理エンティティ(MME)」、「サービスゲートウェイ(S-GW)」、「パケットデータネットワークゲートウェイ(P-GW)」といった「コアネットワーク」の主要装置が存在する。これらの装置は、ユーザーの現在位置情報や契約情報、認証情報などを管理する「ホームロケーションレジスタ(HLR)」や「ビジターロケーションレジスタ(VLR)」などのデータベースと連携し、ユーザーが日本国内のどこにいても、あるいは海外にいても、安全かつ確実にサービスを受けられるように機能する。 セルラー方式の技術は、1980年代の第一世代(1G)アナログ移動体通信システムから実用化され、その後、第二世代(2G)でデジタル化による音声品質の向上とデータ通信の導入、第三世代(3G)で高速データ通信によるモバイルインターネットの普及、第四世代(4G)でさらなる高速・大容量化による動画ストリーミングの一般化とIoTデバイスの接続性向上を実現してきた。そして現在普及が進む第五世代(5G)では、これまでの技術をはるかに凌駕する超高速・大容量、超低遅延、多数同時接続といった特徴を持ち、単なる通信手段としてだけでなく、自動運転、スマートシティ、遠隔医療、産業用IoTなど、社会の様々な分野で新たな価値を創出する基盤として期待されている。 セルラー方式の最大の利点は、その高い通信容量と広範囲なカバレッジ、そして移動中のユーザーに提供されるシームレスな通信継続性にある。これにより、現代社会におけるコミュニケーション、情報アクセス、ビジネス活動といった多岐にわたるニーズを支える不可欠なインフラとなっている。一方で、多数の基地局の設置や複雑なコアネットワークの構築には莫大な設備投資が必要であり、電波干渉の適切な管理や、常に進化するセキュリティ脅威への対応、基地局の消費電力削減なども重要な課題として存在する。システムエンジニアを目指す上で、セルラー方式のこれらの基本的な原理と構成要素、そしてその進化の歴史を理解することは、現代の複雑な情報通信システムを設計、構築、運用する上で不可欠な知識である。