集中処理 (シュウチュウショリ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
集中処理 (シュウチュウショリ) の読み方
日本語表記
集中処理 (シュウチュウショリ)
英語表記
centralized processing (セントラライズドプロセッシング)
集中処理 (シュウチュウショリ) の意味や用語解説
集中処理とは、情報システムのアーキテクチャの一種であり、すべてのデータ処理や計算を、中央に設置された一台の高性能なコンピュータに集約して実行する方式である。この中央のコンピュータはホストコンピュータやメインフレームなどと呼ばれ、システムの頭脳として機能する。各利用者は、自身の近くに置かれた端末(ターミナル)を通じてホストコンピュータに接続し、操作を行う。端末側は基本的にデータの入力と処理結果の表示という限定的な役割のみを担い、複雑な計算処理は行わない。この点が、個々のコンピュータが自律的に処理を行う分散処理との最も大きな違いである。集中処理は、コンピュータが非常に高価で大型であった初期の時代に、限られた計算資源を多くの利用者が効率的に共有するための合理的な方法として発展し、長らくコンピュータシステムの主流を占めてきた。 集中処理の具体的な構成は、中心に据えられた高性能なホストコンピュータと、それに通信回線で接続された多数の端末から成る。初期のシステムで用いられた端末は、キーボードとディスプレイのみを備え、自身の内部に処理能力をほとんど持たない「ダム端末(ダムターミナル)」が一般的であった。利用者が端末からデータを入力すると、その情報はホストコンピュータへ送信される。ホストコンピュータは受け取った情報に基づいて計算やデータベースの更新などの処理を行い、その結果を端末に送り返して画面に表示させる。このように、すべての実質的な処理が中央で一元的に行われるのが特徴である。 このアーキテクチャにはいくつかの明確な利点が存在する。第一に、管理の容易性が挙げられる。データやアプリケーションプログラムがすべてホストコンピュータ上に集約されているため、バックアップ、ソフトウェアのアップデート、セキュリティパッチの適用といった保守・運用作業を中央の一箇所で行うことができる。これにより、管理コストを低く抑え、システム全体の状態を正確に把握することが容易になる。第二に、セキュリティの確保がしやすい点である。重要なデータが物理的に一箇所にまとまっているため、不正なアクセスに対する物理的・論理的な防御策を集中させることができる。アクセス制御もホストコンピュータで一元管理するため、厳格なセキュリティポリシーをシステム全体に一貫して適用することが可能である。第三に、データの一貫性・整合性を維持しやすいという特長を持つ。すべての利用者が同一のデータベースに対して処理を行うため、データの重複や矛盾が発生するリスクが極めて低い。特に、複数の処理が同時に行われる場合でも、トランザクション管理を中央で厳密に行うことで、データの整合性を確実に保つことができる。 一方で、集中処理には無視できない欠点も存在する。最も大きな問題は、ホストコンピュータへの負荷集中である。システムのすべての処理要求が中央のコンピュータに集まるため、利用者が増えたり、処理内容が複雑化したりすると、応答速度が低下するボトルネックとなりやすい。また、中央のホストコンピュータが故障した場合、システム全体が完全に停止してしまうという深刻なリスクを抱えている。これは単一障害点(Single Point of Failure, SPOF)と呼ばれ、システムの可用性を脅かす大きな要因となる。耐障害性を高めるためにはホストコンピュータ自体の信頼性を極限まで高めるか、非常に高価な冗長化構成を組む必要があった。さらに、システムの処理能力を向上させる際の拡張性にも制約がある。性能を上げるためには、ホストコンピュータそのものをより高性能な機種に置き換える「スケールアップ」という手法が主になるが、これには技術的にもコスト的にも限界がある。 パーソナルコンピュータの性能向上とネットワーク技術の発展に伴い、現在では複数のコンピュータが協調して処理を行う分散処理が主流となっている。しかし、集中処理の概念や技術が完全に過去のものとなったわけではない。例えば、銀行の勘定系システムや航空会社の座席予約システムといった、極めて高い信頼性とデータの一貫性が要求されるミッションクリティカルな分野では、今なおメインフレームによる集中処理システムが稼働している。これは、管理の容易さやデータ整合性の高さといった集中処理の利点が、これらのシステムの要件と非常に良く合致するためである。また、現代のクラウドコンピューティングも、利用者の視点から見れば、データセンターにある強力なサーバー群に処理を任せるという点で、集中処理的な側面を持っていると捉えることもできる。このように、集中処理は情報システムの基本的な形態の一つとして、その思想や利点が形を変えながら現代の技術にも活かされている。