クリーンインストール (クリーンインストール) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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クリーンインストール (クリーンインストール) の読み方

日本語表記

クリーンインストール (クリーンインストール)

英語表記

clean install (クリーンインストール)

クリーンインストール (クリーンインストール) の意味や用語解説

クリーンインストールとは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションソフトウェアを、既存のデータや設定を一切引き継がず、完全に新規の状態から導入する作業のことである。これは「新規インストール」とも呼ばれる。この手法の最大の特徴は、インストール対象となるストレージ(HDDやSSD)を事前に初期化(フォーマット)する点にある。これにより、以前のOS、すべてのアプリケーション、ユーザーが作成した個人データ、各種設定ファイルなどが完全に消去され、コンピュータを購入した直後や、何もないまっさらな状態に戻すことができる。この点において、既存のファイルや設定を保持したままOSのバージョンのみを更新する「アップグレードインストール(上書きインストール)」とは根本的に異なるアプローチである。 クリーンインストールを具体的に行うプロセスは、まずOSのインストールメディア(近年ではUSBメモリが主流だが、DVDなども用いられる)からコンピュータを起動することから始まる。起動後、OSのインストーラーの指示に従い、インストール先のストレージデバイスを選択する。ここで、既存のパーティション(ストレージ内の区画)を削除し、新たにパーティションを作成した上でフォーマットを実行する。このフォーマット処理こそが、クリーンインストールの中核をなす作業であり、ストレージ内の全データを消去する。ストレージが空になったことを確認した後、OSのシステムファイルがコピーされ、基本的な導入作業が進行する。OSのインストールが完了すると、コンピュータは最小限の機能で起動する。しかし、この時点ではまだ作業は完了していない。次に、マザーボードやグラフィックカードといったハードウェアを正しく機能させるためのデバイスドライバを導入し、インターネット接続を設定する。その後、以前使用していたワープロソフト、表計算ソフト、Webブラウザ、専門的な開発ツールといったアプリケーションを、一つひとつ手動で再インストールしていく必要がある。最後に、各アプリケーションの設定や個人の環境設定を地道に復元していくことで、ようやく以前に近い利用環境が再構築される。 クリーンインストールの最大の利点は、システムの安定性とパフォーマンスを劇的に向上させられることにある。コンピュータを長期間使用していると、不要になった一時ファイルや、アンインストール後も残存する設定情報(Windowsでは特にレジストリと呼ばれるデータベースに蓄積される)などが溜まり、システム全体の動作を遅くしたり、不安定にしたりする原因となる。クリーンインストールは、こうした過去の蓄積物を根本から一掃するため、システム全体の動作が軽快になり、新品に近いパフォーマンスを取り戻すことが期待できる。また、原因不明のエラーが頻発する、特定のソフトウェアが正常に動作しない、マルウェアに感染してしまったなど、ソフトウェアに起因する深刻な問題を解決するための最も確実で強力な手段となる。アップグレードインストールでは引き継がれてしまう可能性のある問題の根本原因を断ち切ることができるため、トラブルシューティングの最終手段として非常に有効である。セキュリティの観点からも、ストレージ全体を初期化することで、潜伏している可能性のあるウイルスやマルウェアを完全に除去し、クリーンで安全な環境を再構築できるという大きなメリットがある。 その一方で、クリーンインストールには無視できないデメリットと、実行にあたっての細心の注意が必要となる。最も重大なデメリットは、ストレージ内のデータがすべて失われることである。したがって、作業前には、ドキュメント、写真、音楽、動画といった必要な個人データを、外付けHDDやクラウドストレージなどの外部メディアへ確実にバックアップすることが絶対条件となる。アプリケーション自体は再インストールできても、ユーザーが作成したデータはバックアップがなければ二度と戻らない。同様に、Webブラウザのブックマーク、メールソフトのアカウント情報、各種ソフトウェアのライセンスキー(プロダクトキー)なども、事前に控えやエクスポートをしておかなければ、再設定に多大な労力を要したり、最悪の場合はソフトウェアが使用できなくなったりする。もう一つの大きなデメリットは、時間と手間がかかることである。OSのインストール自体は比較的短時間で終わるが、その後のデバイスドライバの導入、多数のアプリケーションの再インストール、そしてネットワーク設定や各種カスタマイズといった環境の再構築には、数時間から、場合によっては丸一日以上の時間を要することもある。特に、OSの標準ドライバだけではネットワークに接続できない場合に備え、あらかじめLANやWi-Fiのドライバを別のPCでダウンロードし、USBメモリに保存しておくといった事前準備も重要になる。 システムエンジニアを目指す者にとって、クリーンインストールは、システムの動作が著しく遅くなった場合や、原因不明の不具合が解決しない場合の最終手段としてだけでなく、サーバーなどの高い安定性が求められる環境を構築する際の基本手順として、あるいは開発環境をリセットして一から構築し直す際など、様々な場面で必要となる重要なスキルである。その効果は絶大だが、データ消失という大きなリスクを伴うため、目的を明確にし、バックアップをはじめとする入念な準備の上で慎重に実施する必要がある。

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