クリップボード (クリップボード) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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クリップボード (クリップボード) の読み方

日本語表記

クリップボード (クリップボード)

英語表記

clipboard (クリップボード)

クリップボード (クリップボード) の意味や用語解説

クリップボードは、コンピュータのメモリ上に確保された一時的なデータ保存領域であり、アプリケーション間または同一アプリケーション内でデータを転送する目的で利用される、OSが提供する基本的な機能である。ユーザーが「コピー(Copy)」や「切り取り(Cut)」といった操作を行うことで、選択されたテキスト、画像、ファイルなどの情報がこのクリップボードに格納される。そして、「貼り付け(Paste)」操作を実行すると、クリップボードに保存されているデータが現在のカーソル位置や指定された場所に挿入される仕組みとなっている。クリップボードは通常、一度に一つのデータしか保持できないが、OSのバージョンや特定のアプリケーションによっては複数の履歴を保持する機能も存在する。 詳細について述べる。クリップボードの動作原理は、OSが提供するAPI(Application Programming Interface)を通じてアプリケーションが連携することで実現されている。ユーザーがデータを「コピー」または「切り取り」する際、ソースとなるアプリケーションは選択されたデータをクリップボードへ書き込む。この際、単一のデータであっても、互換性を高めるために複数のデータ形式でクリップボードに提供されることが一般的である。例えば、リッチテキスト(書式情報を含むテキスト)をコピーする場合、プレーンテキスト(書式なしテキスト)、リッチテキストフォーマット(RTF)、HTMLフラグメントなど、複数の形式でクリップボードに格納されることが多い。 次に、ユーザーが「貼り付け」操作を行うと、データを要求するターゲットアプリケーションは、クリップボードからデータを読み出そうとする。このとき、ターゲットアプリケーションはクリップボードにどの形式のデータが利用可能であるかを問い合わせ、自身が最も適切に処理できる形式のデータを選択して取得する。例えば、テキストエディタが貼り付けを行う場合はプレーンテキストやRTFを選択し、画像編集ソフトウェアが貼り付けを行う場合は画像データ形式(BMP, PNG, JPEGなど)を選択するといった具合である。このように、複数のデータ形式を提供し、ターゲットアプリケーションが最適な形式を選択する機構によって、異なる種類のアプリケーション間での円滑なデータ交換が実現されている。 クリップボードが扱えるデータの種類は多岐にわたる。最も一般的なのはテキストデータであり、プレーンテキストだけでなく、フォント、色、サイズなどの書式情報を含むリッチテキストもサポートされる。画像データも頻繁に利用され、ビットマップ形式やベクター形式など、様々な種類の画像がクリップボードを介してやり取りされる。ファイルやフォルダそのものをコピー&ペーストする際には、実際のファイルデータが転送されるわけではなく、ファイルのパス情報やファイルオブジェクトへの参照がクリップボードに格納され、貼り付け時にそれらの情報に基づいて実際のファイル操作(コピー、移動)が実行される。さらに、特定のアプリケーションが独自に定義したカスタムデータ形式をクリップボードに格納することも可能であり、これにより特定のアプリケーションファミリー内で高度なデータ連携が可能となる。 現代のOSでは、クリップボードの機能はさらに進化している。Windows 10以降のOSやmacOSの一部機能では、クリップボードの履歴機能が標準で提供されており、過去にコピーした複数のアイテムを呼び出して貼り付けることが可能になっている。これは従来の「一度に一つのデータしか保持できない」というクリップボードの基本的な制約を緩和するものである。また、Appleのエコシステムにおける「ユニバーサルクリップボード」やMicrosoftの「クラウドクリップボード」のように、同一ユーザーアカウントでログインしている複数のデバイス間でクリップボードの内容を同期する機能も登場している。これにより、例えばスマートフォンでコピーしたテキストをPCに貼り付けるといった、デバイスを跨いだシームレスなデータ連携が実現されている。これらの拡張機能は、OSの標準クリップボードメカニズムの上に、追加の管理層やネットワーク同期メカニズムを構築することで実現されている。 クリップボードは一時的な記憶領域であるため、通常はコンピュータを再起動したり、ユーザーがログオフしたりすると、その内容は失われる。また、セキュリティ上の観点からは、クリップボードに機密情報(パスワード、クレジットカード番号など)をコピーした場合、そのデータはメモリ上に一時的に保持されるため、他の悪意のあるアプリケーションによって読み取られるリスクが存在し得る。そのため、機密情報を扱った後は、意識的に別の無害な情報をコピーするなどしてクリップボードの内容を上書きすることが推奨される。システムエンジニアにとって、クリップボードの仕組みを理解することは、アプリケーション開発におけるデータ連携設計や、セキュリティ脆弱性への対策を検討する上で不可欠な知識である。

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