クローニング (クローニング) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

クローニング (クローニング) の読み方

日本語表記

クローニング (クローニング)

英語表記

cloning (クローニング)

クローニング (クローニング) の意味や用語解説

クローニングとは、コンピュータシステムやその構成要素の完全な複製を作成するプロセスを指す。具体的には、オペレーティングシステム、インストールされているアプリケーション、設定ファイル、ユーザーデータなど、システム全体の状態を完全にコピーし、別の物理的または仮想的なストレージデバイスへ展開することを意味する。これは、ディスクイメージングと呼ばれる技術を利用して行われる。クローニングの主な目的は、時間と労力を大幅に削減し、均一な環境を迅速に多数展開することや、システム障害発生時の迅速な復旧を実現することにある。 クローニングの対象となるのは、ハードディスクドライブ全体、パーティション、あるいは仮想マシンのディスクファイルなど、システムを構成するストレージの内容そのものである。単にファイルやフォルダをコピーするバックアップとは異なり、クローニングではファイルシステム構造、隠しファイル、ブートセクタなど、OSが動作するために不可欠な情報まですべて含めて複製する。そのため、クローンされたシステムは、元のシステムと全く同じ状態で起動し、機能することが期待される。 クローニングのプロセスは通常、以下の段階で進められる。まず、クローン元となるシステム（これを「マスターイメージ」と呼ぶことが多い）を準備する。このマスターイメージは、OSがインストールされ、必要なアプリケーションが設定され、各種パッチが適用され、安定して動作することが確認されている状態であるべきだ。次に、専用のクローニングツールやディスクイメージングソフトウェアを使用して、マスターシステムのストレージ全体を一つのイメージファイルとして取得する。このイメージファイルは、ネットワーク上の共有ストレージや外部ディスクなど、安全な場所に保存される。 イメージファイルが作成されたら、今度はそれをターゲットとなる新しいコンピュータや仮想マシンに展開（デプロイ）する。展開先のハードウェアは、通常、マスターシステムと同等か、互換性のあるものである必要がある。ツールを使ってイメージを展開することで、ターゲットシステムはマスターシステムと全く同じ状態になる。この際、ブートセクタやパーティション情報なども完全に再現されるため、展開が完了すれば、すぐにシステムを起動させることができる。 クローニングは多岐にわたるシーンで利用される。企業内で多数のPCを新規導入する際に最も一般的だ。一台一台手作業でOSをインストールし、アプリケーションを設定する手間を省き、あらかじめ完璧に設定されたマスターイメージを展開するだけで、迅速に多数のPCを展開できる。これにより、導入にかかる時間とコストが劇的に削減され、すべてのPCが同じ設定で統一されるため、運用管理が容易になる。 また、システム障害からの迅速な復旧にもクローニングは有効だ。万が一、サーバーやクライアントPCが故障した場合でも、事前に取得しておいたクローンイメージを展開することで、障害発生直前の状態にシステムを素早く戻すことが可能になる。これは、システムのダウンタイムを最小限に抑え、ビジネス継続性を高める上で非常に重要な役割を果たす。開発・検証環境の構築においても、同じ環境を複数用意する必要がある場合に、クローニングは非常に重宝される。特に仮想化環境では、仮想マシンのスナップショット機能やエクスポート・インポート機能を利用して、容易に仮想マシンのクローンを作成できるため、開発者は様々な条件でテスト環境を即座に構築できる。 クローニングのメリットは、時間と手間の削減、環境の均一化、迅速なシステム復旧能力などが挙げられる。しかし、いくつかの重要な注意点も存在する。最も重要なのは、クローン後にターゲットシステムでユニークな識別子を再設定する必要があるという点だ。Windows OSの場合、システム識別子（SID: Security Identifier）が各インストールで一意に割り振られている。複数のシステムが同じSIDを持つと、ネットワーク上での認証やセキュリティポリシーの適用において深刻な問題が発生する可能性がある。そのため、クローニングツールには、イメージ展開時にSIDを自動的に変更する機能が搭載されていることが多いが、手動で変更する必要がある場合もある。 その他にも、IPアドレス、コンピュータ名、ホスト名など、ネットワーク上でユニークであるべき情報も、クローン後に各システムで個別に設定し直す必要がある。これらを怠ると、ネットワーク競合や名前解決の問題が発生し、システムが正常に動作しない原因となる。また、OSやアプリケーションのライセンスについても注意が必要だ。ボリュームライセンス契約を結んでいない場合、クローンごとに個別のライセンス認証が必要となる。 さらに、クローン元のハードウェアとクローン先のハードウェアとの互換性も考慮すべき点である。特に異なるベンダー製のPCや、大きく世代の異なるハードウェアにイメージを展開しようとすると、ドライバの不足やハードウェア構成の違いにより、システムが正常に起動しない可能性がある。このため、一般的には、同じモデルのPC群に対してクローニングを行うのが最も安全である。異なるハードウェアへの展開を前提とする場合は、ユニバーサルリストア機能を備えたクローニングツールを使用するか、事前に広範なドライバをイメージに含めておくなどの対策が必要になる。 利用されるツールとしては、商用製品ではAcronis True ImageやNorton Ghost（現在はSymantec Ghost Solution Suite）が有名であり、オープンソースではClonezillaが広く利用されている。仮想環境では、VMware vSphereの「クローン」機能やHyper-Vの「エクスポート」機能がこれに相当し、仮想マシンの状態を丸ごと複製することが可能だ。これらのツールは、単なるデータのコピーではなく、ブート可能なシステムイメージの作成と展開を専門に行うことで、ITシステムの構築・運用・保守において不可欠な技術となっている。クローニングは、ITインフラの効率的な管理を支える基盤技術の一つであり、システムエンジニアを目指す上では、その概念と利用方法を理解しておくことが非常に重要だ。