クラウドコンピューティング (クラウドコンピューティング) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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クラウドコンピューティング (クラウドコンピューティング) の読み方

日本語表記

クラウドコンピューティング (クラウドコンピューティング)

英語表記

Cloud Computing (クラウドコンピューティング)

クラウドコンピューティング (クラウドコンピューティング) の意味や用語解説

クラウドコンピューティングは、インターネットを通じてサーバー、ストレージ、データベース、ネットワーク、ソフトウェアといったITリソースを、必要な時に必要なだけ利用できるサービス形態である。これまでは企業が自社のデータセンターを構築し、物理的なハードウェアを購入してシステムを運用する「オンプレミス」型が主流だったが、クラウドコンピューティングはITリソースを所有するのではなく、サービスとして利用する「所有から利用へ」というパラダイムシフトをもたらした。ユーザーはインターネットに接続できる環境があれば、どこからでもこれらのリソースにアクセスし、自在に利用できるのが最大の特徴だ。利用した分だけ料金を支払う従量課金制が一般的であり、ビジネスの需要に合わせてITリソースを柔軟に増減できるスケーラビリティや、高い可用性も提供される。 従来のシステム構築では、企業はまずシステムの要件を定義し、それに合わせてサーバーやストレージ、ネットワーク機器といった物理的なハードウェアを選定し、購入する必要があった。これらの初期投資は非常に高額になることが多く、導入から稼働までには数ヶ月から年単位の時間がかかることも珍しくなかった。さらに、システムが稼働した後も、ハードウェアの保守、ソフトウェアのアップデート、セキュリティ対策、電力消費、空調管理など、多くの運用管理業務とコストが発生する。需要の変動に対応するためにリソースを増強する際も、同様に高額な追加投資と時間が求められ、一度導入したリソースを縮小することは困難であった。 これに対し、クラウドコンピューティングはこれらの課題を根本的に解決する。ユーザーは物理的なハードウェアを所有する必要がなく、代わりにクラウドベンダーが提供する仮想化されたリソースを、インターネット経由で利用する。必要な時に、数クリックやAPI操作でサーバーやストレージを瞬時にプロビジョニングし、利用を開始できる。例えば、Webサービスのトラフィックが急増した際には、一時的にサーバー台数を増やして負荷分散を行い、落ち着いたら元に戻すといった柔軟な対応が可能となる。このような迅速な伸縮性(スケーラビリティ)は、ビジネスの機会損失を防ぎ、効率的なIT運用を実現する。 クラウドコンピューティングのもう一つの重要な特徴は、リソースの共有と効率的な利用である。クラウドベンダーは大規模なデータセンターに高性能な物理サーバー群を配置し、仮想化技術を用いてこれらを論理的に分割し、複数のユーザーに提供する。これにより、個々のユーザーが物理サーバーを占有するよりもはるかに高い効率でITリソースが利用され、コストの削減に繋がる。また、専門知識を持つクラウドベンダーがインフラの運用管理、セキュリティ対策、障害対応などを一元的に行うため、ユーザーはこれらの手間から解放され、本来のビジネス価値を生み出すアプリケーション開発やサービス提供に注力できる。 クラウドコンピューティングのサービスモデルは、提供される機能の範囲によって主に3つに分類される。一つ目は「IaaS(Infrastructure as a Service)」だ。これは、仮想サーバー、ストレージ、ネットワークといったITインフラをサービスとして提供するモデルである。ユーザーはOSやミドルウェア、アプリケーションなどを自由に選択・インストールし、まるで自社のデータセンターにある物理サーバーを操作するかのように利用できるため、高い自由度と柔軟性を持つ。 二つ目は「PaaS(Platform as a Service)」である。これは、アプリケーション開発・実行に必要なプラットフォーム(OS、ミドルウェア、データベース、開発ツールなど)をサービスとして提供する。ユーザーはインフラの管理から解放され、アプリケーションのコード開発とデプロイに集中できる。これにより、開発期間の短縮や運用負荷の軽減が期待できる。 三つ目は「SaaS(Software as a Service)」だ。これは、すでに完成されたソフトウェアアプリケーションを、インターネット経由で利用するサービスである。Webメールやグループウェア、顧客管理システム(CRM)などがこれに該当する。ユーザーはソフトウェアのインストールや設定、保守、アップデートといった作業を一切行う必要がなく、すぐに利用を開始できる。最も手軽に利用できるモデルであり、ITリソースの運用管理コストを大幅に削減できる。 これらのサービスモデルに加えて、クラウド環境の利用形態もいくつかの種類がある。最も一般的なのは「パブリッククラウド」で、AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、Google Cloud Platformなどが提供する、不特定多数のユーザーが共有するクラウドサービスだ。コスト効率とスケーラビリティに優れる。これに対し、特定の企業や組織専用に構築・運用されるのが「プライベートクラウド」で、セキュリティやコンプライアンス要件が高い場合に選択されることが多い。そして、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて利用する「ハイブリッドクラウド」も、それぞれのメリットを享受できる運用モデルとして普及している。 クラウドコンピューティングのメリットは多岐にわたる。まず、高額な初期投資が不要になり、利用した分だけ支払う従量課金制により、コストを最適化できる。また、ITリソースを迅速に増減できるため、ビジネスの需要変動に柔軟に対応し、市場への投入スピード(Time-to-Market)を加速できる。クラウドベンダーが提供する高いレベルのセキュリティ対策と、複数のデータセンターを活用した冗長化により、システムの可用性や信頼性も向上する。さらに、物理的な機器の設置や保守が不要なため、運用管理の負荷が大幅に軽減され、企業は本来の事業活動に集中できる。災害対策においても、複数の地域にデータを分散配置することで、迅速な復旧が可能になる。 しかし、クラウドコンピューティングには注意すべき点も存在する。一つはセキュリティに関する懸念である。自社のデータが外部のクラウドベンダーの環境に置かれるため、情報漏洩や不正アクセスのリスクについて、ベンダーのセキュリティ体制を十分に確認する必要がある。また、特定のクラウドベンダーの技術やサービスに深く依存してしまう「ベンダーロックイン」のリスクも考慮すべきだ。これにより、将来的に別のベンダーへの移行が困難になったり、コスト交渉力が弱まったりする可能性がある。常にインターネット接続が前提となるため、ネットワーク障害時にはサービスが利用できなくなるリスクも存在する。さらに、従量課金制は便利である一方で、リソースの利用状況を適切に管理しないと、想定外にコストが増大する可能性もある。既存のオンプレミスシステムとの連携や、コンプライアンス要件への適合なども、導入時に慎重に検討すべき重要な課題である。 クラウドコンピューティングは現代のITインフラの主流となり、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で不可欠な技術基盤である。システムエンジニアを目指す上では、その概念、仕組み、サービスモデル、そしてメリット・デメリットを深く理解することが求められる。

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