クラスター分析 (クラスターブンセキ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
クラスター分析 (クラスターブンセキ) の読み方
日本語表記
クラスター分析 (クラスターブンセキ)
英語表記
cluster analysis (クラスターアナリシス)
クラスター分析 (クラスターブンセキ) の意味や用語解説
クラスター分析とは、多変量解析の一種であり、データ全体をいくつかのグループ(クラスター)に分割する手法のことである。システムエンジニアを目指す上で、データ分析の基礎知識として押さえておきたい。特に、顧客分析、マーケティング戦略、異常検知など幅広い分野で活用されているため、その概念と基本的な手法を理解しておくことは重要となる。 クラスター分析の目的は、データ間の類似性に基づいて、似たもの同士をグループ化することである。ここでいう「類似性」は、データが持つ様々な属性(特徴量)に基づいて定義される。例えば、顧客データであれば、年齢、性別、購買履歴、居住地などが属性となり、これらの属性が近い顧客同士を同じクラスターにまとめる、といった具合だ。 クラスター分析には、いくつかの種類がある。代表的なものとしては、階層的クラスタリング、非階層的クラスタリング(k-means法など)、密度ベースのクラスタリングなどがある。 階層的クラスタリングは、データを階層的にグループ化していく手法である。大きく分けて、凝集型と分割型の2種類がある。凝集型は、まず各データをそれぞれ独立したクラスターとして扱い、最も類似性の高いクラスター同士を順次統合していく。最終的に、全てのデータが1つのクラスターに統合されるまで繰り返す。分割型は、逆に全てのデータを最初に1つのクラスターとして扱い、順次、最も異質なデータが含まれるクラスターを分割していく。最終的に、各データがそれぞれ独立したクラスターになるまで繰り返す。階層的クラスタリングの利点は、クラスター間の関係性を樹形図(デンドログラム)として可視化できる点である。 非階層的クラスタリングは、あらかじめクラスター数を指定し、データをその数だけグループに分割する手法である。代表的なものにk-means法がある。k-means法では、まずランダムにk個のデータの中心点(セントロイド)を決定する。次に、各データを最も近いセントロイドを持つクラスターに割り当てる。その後、各クラスターのセントロイドを再計算し、再度、各データを最も近いセントロイドを持つクラスターに割り当てる。このプロセスを、クラスターの割り当てが変化しなくなるまで繰り返す。k-means法の利点は、計算量が比較的少なく、大規模なデータセットにも適用しやすい点である。ただし、初期セントロイドの選び方によって結果が異なる可能性があるため、複数回実行し、結果を比較検討する必要がある。また、適切なクラスター数を事前に決定する必要がある点が課題となる。 密度ベースのクラスタリングは、データの密度に基づいてクラスターを形成する手法である。代表的なものにDBSCANがある。DBSCANでは、ある点からの一定距離内に一定数以上のデータが存在する場合、その点を「コアポイント」とみなす。コアポイントから到達可能な点(直接到達可能な点、密度連結な点など)を同じクラスターにまとめる。DBSCANの利点は、クラスターの形状に制約がなく、ノイズデータの影響を受けにくい点である。 クラスター分析を実施する際には、データの標準化や正規化といった前処理が重要となる。これは、各属性のスケールが異なる場合、分析結果が特定の属性に偏ってしまう可能性があるためである。例えば、年齢と年収という属性を持つ顧客データを分析する場合、年収のスケールが年齢に比べて非常に大きいため、年収の差がクラスターの形成に大きな影響を与えてしまう。このような問題を回避するために、各属性のスケールを揃える必要がある。 クラスター分析の結果を評価する指標も存在する。例えば、クラスター内のデータの凝集度を測る指標や、クラスター間の分離度を測る指標などがある。これらの指標を参考に、適切なクラスター数や分析手法を選択することが重要となる。 システムエンジニアとして、クラスター分析を理解することは、様々なシステム開発に役立つ。例えば、顧客管理システムにおいて、顧客データをクラスター分析することで、顧客セグメントを作成し、それぞれのセグメントに最適化されたマーケティング戦略を立案することができる。また、ネットワーク監視システムにおいて、ネットワークトラフィックデータをクラスター分析することで、異常なトラフィックパターンを検出し、セキュリティ対策に役立てることができる。 このように、クラスター分析は、データ分析の強力なツールであり、システムエンジニアにとって必須の知識と言える。