コマンドレット(コマンドレット)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

コマンドレット(コマンドレット)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

コマンドレット (コマンドレット)

英語表記

cmdlet (コマンドレット)

用語解説

コマンドレットは、Microsoftが開発したコマンドラインシェルおよびスクリプト言語であるPowerShellの環境で実行される、特定の機能を持ったコマンドの最小単位である。従来のコマンドプロンプトで使われていたdircopyといった外部プログラム形式のコマンドとは異なり、PowerShellの内部に組み込まれた、あるいはモジュールとして追加された.NETのクラスとして実装されている。この構造により、コマンドレットは単なる文字列の入出力に留まらず、より構造化されたデータである「オブジェクト」を扱うことができるという大きな特徴を持つ。一つ一つのコマンドレットは、「サービスを取得する」「プロセスを停止する」といった単一の具体的なタスクを実行するように設計されており、これらをパイプラインという仕組みで連結させることによって、複雑で大規模なシステム管理タスクを自動化し、効率的に実行することが可能になる。システムエンジニアにとって、このコマンドレットを理解し使いこなすことは、日々の運用業務の生産性を飛躍的に向上させるための重要なスキルとなる。

コマンドレットの最も分かりやすい特徴の一つは、その厳格な命名規則である。すべてのコマンドレットは「動詞-名詞」という形式の名前を持つ。例えば、実行中のプロセス一覧を取得するコマンドレットはGet-Process、特定のサービスを停止するコマンドレットはStop-Serviceという名前になっている。この「動詞」部分は、コマンドレットが実行する操作の種類を示しており、Get(取得)、Set(設定)、Start(開始)、Stop(停止)、Add(追加)、Remove(削除)など、承認された標準的な動詞が用いられる。一方、「名詞」部分は、操作の対象となるリソース、例えばProcess(プロセス)やService(サービス)、Item(ファイルやフォルダなど)を示す。この一貫した命名規則により、未知のコマンドレットであっても、その名前から機能をおおよそ推測することが可能となり、学習コストを大幅に低減させる効果がある。

コマンドレットが従来のコマンドラインツールと一線を画す最大の要因は、テキストではなくオブジェクトを扱う点にある。従来のUnixシェルやコマンドプロンプトでは、コマンド間のデータの受け渡しはすべてプレーンなテキスト(文字列)で行われていた。そのため、あるコマンドの出力を次のコマンドで利用するには、文字列を解析して必要な部分を抽出するという煩雑な処理が必要だった。これに対し、PowerShellのコマンドレットは.NETオブジェクトを生成し、パイプラインを通じて次のコマンドレットに直接オブジェクトとして渡す。例えば、Get-Processコマンドレットが返すのは、プロセス名が並んだ単なる文字列ではない。プロセスID、CPU使用率、メモリ使用量、実行ファイルのパスといった多数のプロパティを内包した「プロセスオブジェクト」の集合である。このオブジェクトを受け取った後続のコマンドレットは、文字列を解析することなく、オブジェクトのプロパティに直接アクセスして、フィルタリングや並べ替え、さらなる操作を行うことができる。これにより、データの構造を保ったまま柔軟かつ正確な処理を簡潔な記述で実現できる。

コマンドレットの動作は、パラメータによって細かく制御される。パラメータは、コマンドレット名の後にハイフン(-)に続けて指定するオプションであり、操作の対象を特定したり、動作の形式を変更したりする役割を持つ。例えば、Get-Process -Name "chrome"のように-Nameパラメータを指定すれば、"chrome"という名前のプロセスのみを取得できる。パラメータには、値が必須のもの、省略可能なもの、特定の位置に記述すればパラメータ名を省略できるものなど、様々な種類がある。また、受け付ける値のデータ型が厳密に定義されており、不正な型のデータが渡されることを防ぐ。Tabキーによる入力補完機能も強力で、利用可能なコマンドレット名やパラメータ名を簡単に入力できるため、タイプミスを防ぎ、作業効率を向上させる。

PowerShell環境には、コマンドレットとよく似たものとして「関数」も存在する。利用者から見ると、どちらも同じようにコマンドとして実行できるため、その違いを意識する場面は少ないかもしれない。しかし、内部的には明確な違いがある。コマンドレットは、C#などの.NET言語で記述され、コンパイルされたバイナリファイル(DLL)として提供される。これにより、高いパフォーマンスが期待できる。一方、関数はPowerShell自身のスクリプト言語で記述され、テキストファイルとして保存される。スクリプトとして記述できるため、より手軽に作成・変更が可能である。システムに標準で備わっている基本的なコマンドの多くはコマンドレットとして実装されているが、ユーザーが独自のコマンドを作成する場合は、通常、関数として実装する。

PowerShellには、コマンドレットの使い方を調べるための強力なヘルプシステムが組み込まれている。Get-Helpというコマンドレットを使用することで、他のコマンドレットの目的、構文、各パラメータの詳細な説明、さらには具体的な使用例まで確認することができる。例えば、Get-Processコマンドレットについて知りたければ、Get-Help Get-Processと入力するだけでよい。さらに、-Detailedオプションを追加すればより詳細なパラメータ解説を、-Examplesオプションを追加すれば実践的な使用例を、-Fullオプションを追加すれば利用可能なすべての情報を表示できる。この充実したヘルプシステムのおかげで、インターネットで情報を検索することなく、PowerShellのコンソール内だけで学習を進め、問題を解決することが可能になっている。これは初心者にとって非常に心強い機能である。