コーデック (コーデック) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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コーデック (コーデック) の読み方

日本語表記

コーデック (コーデック)

英語表記

codec (コーデック)

コーデック (コーデック) の意味や用語解説

コーデックとは、音声や動画などのデジタルデータを効率的に圧縮(エンコード)し、また元の形式に伸長(デコード)するためのプログラムや技術の総称である。特にデータ量の大きいマルチメディア情報を扱う上で、ストレージ容量の節約、ネットワーク帯域の負荷軽減、および高速なデータ転送を実現するために不可欠な役割を果たす。その名称は「coder」(圧縮する機能)と「decoder」(伸長する機能)を組み合わせた造語である。 デジタル化された音声や動画の生データは、その情報量が極めて膨大である。例えば、高精細な動画を非圧縮のまま記録すれば、数分間の映像でもテラバイト単位のストレージを消費し、ネットワークを通じてストリーミング配信することは現実的ではない。このような課題を解決するため、コーデックは高度なアルゴリズムを用いてデータを圧縮する。この圧縮処理をエンコードと呼び、元の生データから冗長な情報や人間の知覚では感知しにくい情報を効率的に削除したり、パターンを認識して符号化したりする。エンコードされたデータはファイルサイズが大幅に削減され、保存や転送に適した形となる。一方、圧縮されたデータを再生する際には、逆の処理としてデコードが行われる。デコードは圧縮されたデータを元の、あるいは元の状態に近い生データ形式に戻すことで、再生デバイスやアプリケーションが扱える形式にする。このエンコードとデコードの双方向の機能が一体となってコーデックを構成する。 コーデックによる圧縮技術は、主に「可逆圧縮」と「不可逆圧縮」の二種類に大別される。可逆圧縮は、データを圧縮してもデコード時に完全に元の生データに戻せる方式であり、データ損失がないことが特徴である。テキストデータやプログラムファイルなど、一ビットのデータ欠損も許されない場合に用いられるが、圧縮率は一般的にそれほど高くない。これに対し、不可逆圧縮は、デコード時に元のデータと完全に一致しないものの、人間の知覚ではほとんど違いが分からないレベルにデータを削減する方式である。音声や動画では、人間の聴覚や視覚の特性(例えば、聞こえにくい高周波数帯の音をカットしたり、動きの少ない背景画像を簡略化したりする)を利用して、データの一部を積極的に破棄することで高い圧縮率を実現する。ほとんどの音声・動画コーデックは不可逆圧縮を採用しており、これにより劇的なファイルサイズの削減が可能になっている。例えば、動画では連続するフレーム間で変化がない部分や、動きの少ない領域の情報を間引いたり、色の情報を効率的に符号化したりする技術が用いられる。音声では、人間の聴覚が感知しにくい周波数帯の音を削除したり、大きな音に隠れて聞こえにくくなる小さな音(マスキング効果)を省いたりする。 世の中には多種多様なコーデックが存在し、それぞれ得意とするデータ形式、圧縮率、品質、処理負荷、ライセンス形態が異なる。動画コーデックの代表例としては、デジタル放送やブルーレイディスク、多くの動画配信サービスで広く利用されているH.264(AVC)や、さらに高い圧縮効率を持つH.265(HEVC)、そしてオープンソースで開発されWeb動画を中心に普及が進むVP9やAV1などがある。音声コーデックとしては、高音質と高圧縮率を両立するAAC(Advanced Audio Coding)や、幅広いデバイスで再生可能なMP3(MPEG Audio Layer-3)、VoIP通話などに最適化されたOpus、可逆圧縮で高音質を維持するFLAC(Free Lossless Audio Codec)などが挙げられる。これらのコーデックによってエンコードされたデータは、MP4やMKV、AVIといった特定の「コンテナ形式」に格納されることが多い。コンテナ形式は、動画や音声、字幕などの複数のデータを一つのファイルにまとめるための「入れ物」であり、コーデックがデータの圧縮方法を定義するのに対し、コンテナはデータの構造やメタデータ(情報)の管理方法を定義する点で異なる。 コーデックは、現代のデジタルメディア環境においてあらゆる場面で利用されている。例えば、YouTubeやNetflixのようなストリーミング配信サービスでは、少ないネットワーク帯域で高画質な映像をリアルタイムに提供するためにコーデックが不可欠である。ZoomやMicrosoft Teamsなどのビデオ会議システムでも、限られたネットワーク環境下で遅延なく音声や動画をやり取りするために、高い圧縮効率と低い処理負荷を持つコーデックが選ばれる。デジタルカメラやスマートフォンでの動画撮影、ブルーレイディスクやDVDなどの物理メディア、さらにはクラウドストレージへのデータ保存やファイル転送など、その応用範囲は広範にわたる。 システムエンジニアを目指す初心者にとって、コーデックの理解は非常に重要である。システム設計やアプリケーション開発において、どのコーデックを選択するかは、提供するサービスの品質、ユーザー体験、システムのパフォーマンス、ストレージ要件、ネットワーク帯域の消費、さらには開発コストやライセンス費用にまで影響を及ぼす決定事項となる。例えば、高い画質や音質を追求すればデータ量は増大し、ネットワーク負荷やクライアント側のデコード処理能力が課題となる。逆に、ネットワーク負荷を最小限に抑えようとすれば、画質や音質が犠牲になる可能性がある。また、システムがエンコードまたはデコードに対応していないコーデックで作成されたデータは、正しく再生できないか、そもそも認識すらされないため、再生環境における互換性の確保も重要な課題となる。OSやブラウザが標準で対応しているコーデックに加え、追加のコーデックパックを導入することで対応範囲を広げる場合もある。 システムエンジニアは、これらの要素を総合的に考慮し、プロジェクトの目的や要件に最適なコーデックを選定する知識が求められる。例えば、Webサービスやモバイルアプリケーションを開発する際には、ユーザーが利用する多様なデバイスでの再生互換性や、バッテリー消費、データ通信量への影響まで考慮に入れる必要がある。オープンソースのコーデックを利用してコストを削減したり、ハードウェアが持つエンコード・デコード支援機能(ハードウェアアクセラレーション)を活用して処理効率を高めたりするなどの技術的判断も、コーデックの深い理解に基づいて行われる。このように、コーデックは単なる圧縮技術に留まらず、デジタルメディアを扱うあらゆるシステム開発の基盤となる重要な要素なのである。

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