共通フレーム (キョウツウフレーム) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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共通フレーム (キョウツウフレーム) の読み方

日本語表記

共通フレーム (キョウツウフレーム)

英語表記

Common Framework (コモンフレームワーク)

共通フレーム (キョウツウフレーム) の意味や用語解説

共通フレームとは、ソフトウェアや情報システムのライフサイクル全般、すなわち企画、開発、運用、保守、そして廃棄に至るまでの一連の作業内容、役割分担、成果物などを包括的に定義した枠組みである。正式名称を「共通フレーム2013(SLCP-JCF 2013)」といい、情報処理推進機構(IPA)が発行している。これは、ソフトウェア開発に関わる発注者と受注者、あるいは開発チーム内のメンバーといった異なる立場の人々が、共通の認識のもとで円滑に作業を進めるための「共通言語」や「作業の地図」としての役割を果たす。システム開発の現場では、用語の解釈の違いや作業範囲の認識のズレが、手戻りやトラブルの原因となることが多い。共通フレームは、こうした問題を未然に防ぎ、プロジェクトの透明性と品質を確保することを目的としている。国際規格であるISO/IEC/IEEE 12207(ソフトウェアライフサイクルプロセス)をベースにしており、日本の商慣行などを考慮して最適化されているため、国内の多くのプロジェクトで参照されている。 共通フレームが目指す主な目的は、ソフトウェアライフサイクルのプロセスを標準化し、関係者間のコミュニケーションを円滑にすることにある。具体的には、各プロセスで「誰が」「何を」「いつまでに」「どのような品質で」実施すべきかを明確に定義している。これにより、発注者は要求事項を正確に伝えることができ、受注者は求められている作業内容と成果物を具体的に理解できる。結果として、仕様の誤解や期待値のズレが減少し、プロジェクト全体の生産性向上につながる。また、作業の抜け漏れや品質のばらつきを防ぐ効果もある。各工程で作成すべきドキュメントや実施すべきレビュー、テストなどが規定されているため、一定の品質を担保しやすくなる。さらに、プロジェクトの進捗状況が可視化されるため、問題の早期発見と対策が可能となり、プロジェクト管理の質も向上する。システムエンジニアを目指す者にとっては、このフレームワークを理解することで、開発プロセス全体の流れを体系的に把握し、自分が担当する工程の役割と前後工程との関連性を深く理解する助けとなる。 共通フレームは、大きく分けて「合意プロセス」「技術プロセス」「組織のプロジェクト実現プロセス」という三つのプロセスカテゴリで構成されている。合意プロセスは、主に発注者と受注者の間の契約や合意形成に関する活動を定義する。これには、発注者側が行う「取得プロセス」と、受注者側が行う「供給プロセス」が含まれる。技術プロセスは、システムエンジニアが直接的に関わる、ソフトウェアを実際に作り上げていくための技術的な活動を定義するものである。要件定義プロセス、ソフトウェア要件分析プロセス、方式設計プロセス、ソフトウェア設計プロセス、実装プロセス、テストプロセス、導入プロセス、運用プロセス、保守プロセスなどがここに含まれる。これらのプロセスを通じて、アイデアが具体的なシステムとして形作られていく。組織のプロジェクト実現プロセスは、プロジェクトを円滑に遂行するための組織的な支援活動を定義する。プロジェクト全体を管理する「管理プロセス」、開発プロセス自体を改善していく「改善プロセス」、開発環境やツールを整備する「インフラストラクチャプロセス」、要員のスキル管理や教育を行う「人材管理プロセス」、そしてプロジェクト全体の品質を保証する「品質保証プロセス」などがある。これらのプロセスは相互に関連し合っており、一つの大きなシステムとして機能することで、プロジェクトの成功を支えている。 共通フレームは、あらゆるプロジェクトにそのまま適用しなければならない厳格な規則ではない。むしろ、プロジェクトの規模や特性、組織の文化などに応じて、必要なプロセスを選択したり、内容を調整したりして利用することが推奨されている。この調整作業を「テーラリング」と呼ぶ。例えば、小規模なプロジェクトであれば一部のプロセスを簡略化し、逆に大規模でミッションクリティカルなシステム開発であれば、より厳密にプロセスを適用するといった柔軟な使い方が可能である。重要なのは、共通フレームを「辞書」や「ガイドライン」として活用し、プロジェクト関係者全員が同じ基準で物事を判断できるようにすることである。また、共通フレームはウォーターフォールモデルのような特定の開発手法を前提としているわけではない。アジャイル開発のような反復的な開発スタイルにおいても、各イテレーションの中で実施されるべきアクティビティを定義・確認するために共通フレームの考え方を応用することができる。システムエンジニアとしては、単にコーディングや設計の技術を磨くだけでなく、共通フレームのようなプロセス標準を理解することで、より大規模で複雑なプロジェクトにおいても自分の役割を的確に果たし、チーム全体の成果に貢献できるようになる。これは、キャリアを積んでプロジェクトリーダーやマネージャーを目指す上でも不可欠な知識と言える。

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