コンパクトPCI (コンパクトピーシーアイ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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コンパクトPCI (コンパクトピーシーアイ) の読み方

日本語表記

コンパクトピーシーアイ (コンパクトピーシーアイ)

英語表記

CompactPCI (コンパクトピーシーアイ)

コンパクトPCI (コンパクトピーシーアイ) の意味や用語解説

コンパクトPCIは、主に産業用コンピュータや組み込みシステムで使用される、堅牢性と信頼性の高いPCIバスの派生規格である。通常のパソコンで用いられるPCI(Peripheral Component Interconnect)バスの電気的特性を継承しつつ、物理的なフォームファクタとコネクタを大幅に変更することで、より過酷な環境での使用に耐えうるように設計された。この規格は、PICMG(PCI Industrial Computer Manufacturers Group)という業界団体によって標準化され、高いモジュール性とメンテナンス性を実現しているのが特徴である。 コンパクトPCIは、一般的なパソコンのマザーボード上に拡張スロットが並ぶ方式とは異なり、バックプレーンと呼ばれる専用の基板を介して複数のカード(CPUカード、周辺機器カード、I/Oカードなど)を接続するアーキテクチャを採用している。このバックプレーンには、PCIバスの信号線と電源が配線されており、各カードはこのバックプレーンに直接挿し込まれる形で接続される。これにより、システム全体の堅牢性が向上し、振動や衝撃に対する耐性が強化される。また、カード間の信号伝送経路が最適化され、安定した動作を確保できる。 物理的なコネクタも、通常のPCIカードが使用するカードエッジコネクタ(基板の端子が直接スロットに挿入されるタイプ)とは異なり、高密度で多ピンのピンコネクタ(ユーロカードコネクタなどと呼ばれることが多い)が採用されている。このコネクタは、挿抜回数に対する耐久性が高く、また信号の接触信頼性も優れているため、頻繁なカード交換や長期間の使用が求められる環境に適している。さらに、このコネクタはホットスワップ(活線挿抜)機能に対応しており、システム全体の稼働を停止することなく、故障したカードの交換や機能拡張を行うことが可能である。これは、24時間365日の連続稼働が求められる通信機器や産業用制御システムにおいて、非常に重要な機能となる。 コンパクトPCIのシステムは、通常、CPU機能を搭載したシングルボードコンピュータ(SBC)カードを一つ置き、それ以外のスロットに、用途に応じたさまざまな機能カード(例えば、ネットワークインターフェースカード、ストレージコントローラカード、デジタルI/Oカード、グラフィックスカードなど)を自由に組み合わせて構成される。このモジュール化された設計により、システムの構築が柔軟になり、特定のアプリケーション要件に合わせて容易にカスタマイズやアップグレードが可能となる。 技術的な側面を見ると、コンパクトPCIは標準的な32ビットまたは64ビットのPCIバス幅を持ち、33MHzまたは66MHzの動作周波数で動作する。これにより、通常のPCIバスと同等のデータ転送速度を提供できる。電圧レベルも、3.3Vと5Vの両方に対応しており、幅広い種類のPCIデバイスとの互換性を確保していた。しかし、PCIバス自体の帯域幅がネットワークやストレージデバイスの高速化に追いつかなくなるにつれて、シリアル型の高速バスであるPCI Expressをバックプレーンに導入した「CompactPCI Express」や、より広範な用途に対応する「VPX」といった後継規格が登場した。これらの新規格は、より高いデータ転送速度と拡張性を提供することで、従来のコンパクトPCIの役割を徐々に引き継いでいる。 それでもなお、コンパクトPCIは、その堅牢性、高い信頼性、優れたモジュール性から、過去に数多くの通信インフラ機器、産業用ロボット制御装置、医療診断機器、交通システム、航空宇宙防衛システムなどのミッションクリティカルな分野で広く採用されてきた。新規開発における採用は減少傾向にあるが、既存のシステムでは引き続き重要な役割を担っており、長期間にわたるサポートとメンテナンスが必要とされている。システムエンジニアを目指す上で、このような産業用バス規格の存在と特性を理解することは、多様なシステムアーキテクチャを理解する上で有益な知識となるだろう。

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