コンポジット端子 (コンポジットタンシ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
コンポジット端子 (コンポジットタンシ) の読み方
日本語表記
コンポジット端子 (コンポジットタンシ)
英語表記
composite terminal (コンポジットターミナル)
コンポジット端子 (コンポジットタンシ) の意味や用語解説
コンポジット端子は、アナログの映像信号と音声信号を伝送するための接続規格の一つである。主に家庭用電化製品で広く利用されてきた旧来のインターフェースであり、ビデオデッキ、ゲーム機、初期のDVDプレーヤーなどをテレビに接続する際に用いられた。この端子は、映像信号を一本のケーブルで伝送する方式が特徴であり、この「コンポジット(composite)」という名称も、「合成された」という意味合いを持つ。具体的には、映像信号に含まれる輝度信号(明るさの情報)と色信号(色の情報)が、一つの信号として混合されて伝送される。音声信号は通常、左右のステレオチャンネル用に独立したケーブルで伝送されるため、全体として黄・白・赤の3本のRCA端子を使用することが一般的であった。黄色の端子が映像信号用、白色が左音声(Lチャンネル)、赤色が右音声(Rチャンネル)に対応している。 詳細に説明すると、コンポジット端子はRCA端子の一種であり、ピンジャックとピンソケットと呼ばれる接続部品で構成される。RCA端子はアメリカのRadio Corporation of America社が開発したことに由来し、同軸ケーブルを用いて信号を伝送する。映像信号については、NTSC、PAL、SECAMなどのアナログテレビ放送方式に準拠した信号を伝送する。これらの方式では、輝度信号と色信号が周波数多重化、つまり異なる周波数帯域に割り当てられて一つのケーブルで伝送される。輝度信号は映像の明るさや白黒の情報を担い、色信号は色相や彩度の情報を担う。この輝度信号と色信号を一つの信号にまとめることで、ケーブルの数を減らし、接続を単純化できるという利点があった。しかし、これが同時にコンポジット端子の最大の欠点ともなった。輝度信号と色信号が完全に分離されていないため、相互に干渉しやすく、これが「色にじみ」や「ドット妨害(モスキートノイズ)」と呼ばれる画質劣化の原因となる。特に、色信号が輝度信号に干渉することで、映像のエッジ部分に色がにじんだり、細かい模様がちらついたりするといった現象が頻繁に発生した。高解像度な映像や細かなテキストを表示する際には、この画質劣化が顕著に現れる。 音声信号に関しては、RCA端子を左右のチャンネルそれぞれに用いることで、ステレオ音声の伝送が可能であった。しかし、これもアナログ信号であるため、ケーブルの品質や周囲の電磁ノイズの影響を受けやすく、高音質とは言えなかった。コンポジット端子の利点は、その単純な構造と普及率の高さ、そして製造コストの低さにあった。一時期は家庭用AV機器の標準的なインターフェースとして、ほとんど全てのテレビやビデオデッキ、ゲーム機に搭載されていた。そのため、異なるメーカーの機器間でも簡単に接続し、映像や音声を楽しむことができた。 しかし、デジタル技術の進化と高精細な映像に対する要求の高まりとともに、コンポジット端子の画質的な限界が露呈するようになった。デジタル放送やDVD、ブルーレイディスクといった高画質なコンテンツが普及するにつれて、コンポジット端子の性能ではその品質を十分に再現することが困難になった。このため、より高画質な映像伝送を可能にするS端子(輝度信号と色信号を分離して伝送)、コンポーネント端子(さらに色差信号を分離して伝送)、そしてデジタル信号で高画質・高音質を一本のケーブルで伝送するHDMI(High-Definition Multimedia Interface)端子などが登場し、コンポジット端子の役割は徐々に代替されていった。現代では、ほとんどの新しいAV機器にはコンポジット端子は搭載されておらず、レガシーデバイスとの接続や、非常に安価な機器の一部でしか見かけることはない。システムエンジニアが過去のシステムや古い設備を扱う際に、稀にこの規格に遭遇する可能性があるため、その基本的な特性と限界を理解しておくことは有用である。