構成管理 (コウセイカンリ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

構成管理 (コウセイカンリ) の読み方

日本語表記

こうせいかんり (コウセイカンリ)

英語表記

Configuration Management (コンフィギュレーションマネジメント)

構成管理 (コウセイカンリ) の意味や用語解説

構成管理とは、コンピュータシステムやソフトウェアを構成するハードウェア、ソフトウェア、ドキュメントなどの様々な要素を正確に把握し、その状態を一貫性を持って維持・管理するための一連のプロセスおよび活動である。システムは多くの構成要素が相互に関連し合って動作しているため、一つの要素に対する安易な変更が、予期せぬ広範囲な影響を及ぼし、障害を引き起こすことがある。構成管理は、このようなリスクを体系的に管理し、システムの安定性、信頼性、品質を確保することを目的とする。管理の対象となる要素は構成アイテム（CI: Configuration Item）と呼ばれ、サーバやネットワーク機器といった物理的なハードウェア、OSやミドルウェア、アプリケーションといったソフトウェアはもちろんのこと、設計書、仕様書、運用マニュアルといったドキュメント、さらにはパラメータが記述された設定ファイルまで、システムを成り立たせるあらゆるものが含まれる。 構成管理の具体的な活動は、主に「構成識別」「構成制御」「構成状況報告」「構成監査」の四つのプロセスから成り立つ。まず「構成識別」は、管理すべき構成アイテムを特定し、それぞれに一意の名称や番号を割り当て、その特性を定義する活動である。例えば、サーバにはホスト名や資産管理番号を、ソフトウェアには製品名とバージョン番号を、ドキュメントには文書番号と改版履歴を付与する。これにより、膨大な数の構成アイテムの中から特定のものを正確に指し示すことができ、管理の基礎が築かれる。 次に「構成制御」は、識別された構成アイテムへの変更を管理するプロセスであり、一般的に変更管理とも呼ばれる。システムへのいかなる変更も、必ず正式な手続きを経て行われるように統制する。具体的には、変更要求の提出、その変更がシステム全体に与える影響の評価、関係者による承認、計画に基づいた変更作業の実施、そして変更後の結果検証という一連のワークフローを管理する。このプロセスを通じて、誰が、いつ、何を、なぜ変更したのかという履歴がすべて記録され、無許可の変更や場当たり的な修正を防ぐことができる。万が一、変更が原因で障害が発生した場合でも、変更履歴を追跡することで原因の特定や元の状態への切り戻しを迅速に行うことが可能になる。 「構成状況報告」は、構成アイテムの現在の状態や変更の履歴といった情報を収集、記録し、関係者が必要な時に参照できるようにする活動である。各構成アイテムがライフサイクルのどの段階にあるか（例：開発中、テスト中、本番稼働中）、最新のバージョンは何か、どのような変更が加えられてきたかといった情報を可視化する。この活動を支援するために、構成管理データベース（CMDB）が利用されることが多い。CMDBは、システムを構成する全ての構成アイテムの情報と、それらのアイテム間の関連性を一元的に管理するデータベースであり、システム全体の構成を正確に把握するための中心的な役割を担う。 最後の「構成監査」は、これまでのプロセスが計画通りに実施されているか、また、CMDBなどに記録されている構成情報と、実際の物理的・論理的な構成が一致しているかを確認する活動である。例えば、本番環境のサーバにインストールされているソフトウェアのバージョンが、構成管理データベースに登録されている情報と相違ないかを定期的にチェックする。この監査により、構成情報の正確性と信頼性が維持され、構成管理プロセスそのものの有効性も検証される。 近年のシステム開発・運用の現場では、これらの構成管理活動を効率的かつ正確に実施するために、様々なツールが活用されている。ソースコードや設定ファイルの変更履歴を管理するためにはGitのようなバージョン管理システムが必須である。また、多数のサーバ設定を自動化し、あるべき状態を維持するためにはAnsible、Chef、Puppetといった構成管理ツールが用いられる。これらのツールはInfrastructure as Code（IaC）という概念を実現するものであり、インフラの構成をコードとして記述することで、作業の標準化、再現性の確保、人為的ミスの削減に大きく貢献する。 このように、構成管理は、システムの設計・開発から運用・保守に至るまでのライフサイクル全体にわたる重要な基盤活動である。構成を正確に把握し、変更を適切にコントロールすることで、システムの安定性を高め、障害発生時の迅速な復旧を可能にし、プロジェクト全体の品質と効率を向上させる。システムエンジニアにとって、構成管理の概念と実践的な手法を理解することは、信頼性の高いシステムを構築・維持するための必須のスキルである。