継続的データ保護 (ケイゾクテキデータホゴ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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継続的データ保護 (ケイゾクテキデータホゴ) の読み方

日本語表記

継続的データ保護 (コンティニュアスデータプロテクション)

英語表記

Continuous Data Protection (コンティニュアス・データ・プロテクション)

継続的データ保護 (ケイゾクテキデータホゴ) の意味や用語解説

継続的データ保護(CDP: Continuous Data Protection)とは、データの変更をリアルタイムまたはそれに近い形で継続的に記録し、システムの障害やデータの破損が発生した際に、任意の過去の時点の状態にデータを復旧できるようにする技術である。従来のバックアップが定期的な間隔でデータのコピーを作成するのに対し、CDPはデータが変更されるたびにその変更を記録し続けるため、データ損失を最小限に抑えることができる。これは、ビジネスにおいてデータが不可欠となった現代において、システム停止による影響を極力避けたいという要求に応えるための重要なデータ保護戦略の一つである。特に、企業にとって非常に価値の高い基幹システムやデータベースなど、データの損失が許されない環境での採用が進んでいる。 CDPの最も大きな特徴は、従来の定期的なバックアップと比較して、目標復旧時点(RPO: Recovery Point Objective)を飛躍的に短縮できる点にある。RPOとは、障害発生時にどこまでのデータ損失を許容できるかを示す指標であり、従来のバックアップでは、例えば毎日深夜にバックアップを取る場合、最大で24時間分のデータが失われる可能性がある。しかし、CDPはデータの変更をほぼリアルタイムで記録するため、RPOを数分、場合によっては数秒まで短縮し、理論上は「ほぼゼロ」に近づけることが可能となる。これにより、障害発生直前の状態へ戻すことができ、データ損失のリスクを極限まで低減できる。 CDPの仕組みは、基本的にデータの書き込み操作を監視し、その変更内容を「ジャーナル」と呼ばれるログファイルに記録し続けることで実現される。このジャーナルには、どのデータブロックが、いつ、どのように変更されたかという情報が含まれる。元のデータとこのジャーナルを組み合わせることで、過去の任意の時点におけるデータの状態を再構築できる。これにより、障害が発生した際でも、特定の時点を選んでその状態にシステム全体や個別のファイルを復旧することが可能となる。これは、従来のバックアップが、バックアップが取られた特定の時点(スナップショット)にしか戻せないことと大きく異なる点である。 CDPの実装方法にはいくつかの種類がある。ストレージベースCDPは、ストレージアレイ自体がCDP機能を提供するもので、データの書き込みをインターセプトし、ジャーナルを記録する。ホストベースCDPは、サーバーのOSやハイパーバイザー上にエージェントソフトウェアを導入し、データ変更を監視・記録する。ネットワークベースCDPは、ストレージとサーバーの間にアプライアンスを配置し、ネットワークを流れるデータ変更を捕捉して記録する。さらに、特定のアプリケーションに特化したCDP機能が組み込まれている場合もある。これらの方式はそれぞれ、導入の容易さ、性能への影響、保護範囲などで特徴を持つ。 CDPのメリットは多岐にわたる。まず、前述したRPOの極小化により、データ損失をほぼゼロに抑えられる。次に、任意の時点への復旧が可能であるため、誤って削除したファイルや、ソフトウェアのバグによってデータが破損した場合など、特定の時点に限定されずに柔軟なリカバリが行える。これは目標復旧時間(RTO: Recovery Time Objective)の短縮にも繋がり、システム停止時間を最小限に抑えることができる。また、CDPで取得したデータをテスト環境に提供することで、本番環境のデータを損なうことなく、開発やテストを効率的に進めることも可能となる。 一方で、CDPには課題も存在する。最も大きな課題の一つは、ストレージ要件の増大である。継続的にジャーナルデータを記録し続けるため、そのデータを保存するためのストレージ容量が必要となる。特に長期間の復旧ポイントを保持しようとすると、莫大なストレージスペースが必要となる場合がある。また、リアルタイムでのデータ監視と記録は、システムのI/O(入力/出力)性能に一定の影響を与える可能性がある。初期設定や運用管理も従来のバックアップシステムに比べて複雑になる傾向があり、適切な設計とチューニングが求められる。コストも、高機能な分、従来のバックアップソリューションよりも高くなる傾向がある。 CDPは、その高いデータ保護能力から、金融機関の取引システム、電子商取引サイト、企業内の基幹データベース、メールサーバー、仮想化環境など、データの損失やサービス停止がビジネスに深刻な影響を与えるあらゆるミッションクリティカルなシステムで採用されている。また、データの保持期間に関する法的規制や監査要件に対応するためにも有効な手段として認識されている。災害復旧(DR: Disaster Recovery)戦略の一部としても重要な役割を果たし、遠隔地へのレプリケーションと組み合わせることで、広域災害に対する耐性を高めることも可能である。

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