是正保守 (ゼセイホシュ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
是正保守 (ゼセイホシュ) の読み方
日本語表記
是正保守 (ゼセイホシュ)
英語表記
corrective maintenance (コレクティブメンテナンス)
是正保守 (ゼセイホシュ) の意味や用語解説
是正保守は、ソフトウェア保守活動の一類型であり、システムが本番稼働を開始した後に発見されたソフトウェアの欠陥、すなわちバグや不具合を修正し、システムを設計書通りの正常な仕様・動作に復旧させることを目的とする。英語では「Corrective Maintenance」と表記される。利用者がシステムを操作している際に発生する「意図しない動作をする」「エラーで処理が中断する」「計算結果が誤っている」といった問題に対処する活動がこれにあたる。是正保守は、すでに顕在化した問題に対応する事後的な保守であり、システムがユーザーに提供する価値を維持し、信頼性を確保するための最も基本的かつ重要な活動である。ソフトウェア保守には他に、将来発生しうる障害を未然に防ぐ「予防保守」、システムの機能追加や性能改善を行う「完全化保守」、OSのバージョンアップや法改正といった外部環境の変化にシステムを対応させる「適応保守」が存在するが、是正保守はこれらの中で最も緊急性が高く、迅速な対応が求められることが多い。 是正保守のプロセスは、一般的に障害の発生を認知することから始まる。ユーザーからの問い合わせ、ヘルプデスクへの報告、あるいはシステム自身が発する監視アラートなど、様々な経路で障害情報が寄せられる。この情報は、インシデント管理システムなどの専門ツールを用いて一元的に記録され、対応の優先順位付けが行われた上で、担当のシステムエンジニアや開発者に割り当てられる。次に、報告された事象が本当にシステムの不具合なのか、あるいは利用者の操作ミスや環境に起因する問題なのかを判断するための切り分け作業が行われる。不具合であると判断された場合、その現象を再現させ、問題の根本原因を特定するための詳細な調査フェーズへと移行する。この原因調査は、是正保守において最も専門的な知識と経験を要する工程であり、システムログの解析、データベースの状態確認、デバッガを用いたプログラムのステップ実行、ソースコードの精読など、多岐にわたる手法が用いられる。原因が特定できたら、その不具合がシステムの他の機能やデータにどのような影響を及ぼすか、影響範囲を正確に評価する。この評価に基づき、修正の緊急度と重要度が最終的に決定される。業務への影響が甚大で即時の対応が必要な場合は、根本的な解決策ではなくとも、当面の運用を可能にするための回避策、いわゆるワークアラウンドを先に提供し、後から恒久的な対策を施すという二段階の対応をとることもある。修正方針が固まると、プログラマーがソースコードの修正作業に着手する。修正が完了した後は、品質を保証するためのテスト工程が不可欠である。まず、修正した箇所が意図通りに動作することを確認する。さらに、今回の修正が原因で、これまで正常に動作していた他の機能に新たな不具合、いわゆるデグレードやリグレッションを引き起こしていないかを検証するリグレッションテストを入念に行う。このテストを怠ると、一つの不具合を修正した結果、さらに深刻な別の不具合を生み出してしまう可能性があるため、極めて重要な工程である。テストで品質が担保されたことを確認した後、修正済みのプログラムを本番環境へ適用、すなわちリリースする。システムの安定稼働を最優先するため、リリース作業は利用者が少ない夜間や休日に行われるのが通例である。最後に、障害を報告したユーザーへ修正完了を報告し、問題が完全に解決したことを確認して、一連の是正保守プロセスは完了となる。是正保守は、システムの安定稼働を支え、利用者からの信頼を維持するために不可欠な活動であるが、本質的には対症療法である。したがって、是正保守の対応履歴を分析し、不具合の発生傾向や根本原因を開発チーム全体で共有することで、開発プロセスの改善や品質向上に繋げ、将来の不具合発生を抑制していくという、より能動的な視点を持つことがシステムエンジニアには求められる。