暗号(アンゴウ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
暗号(アンゴウ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
あんごう (アンゴウ)
英語表記
cryptography (クリプトグラフィー)
用語解説
暗号とは、第三者に内容を理解されないように情報を変換する技術のことである。元に戻せる変換を行う点が、単に意味不明な文字列にするのとは異なる。暗号化された情報は、特定の知識や手順(鍵)を持つ者だけが元の情報に戻す(復号)ことができる。
暗号の目的は、大きく分けて機密性、完全性、認証、否認防止の4つがある。機密性は、許可された者以外に情報の内容を知られないようにすること。完全性は、情報が改ざんされていないことを保証すること。認証は、情報の送信者や受信者が本人であることを確認すること。否認防止は、情報の送信者が後で送信した事実を否定できないようにすることである。
暗号の歴史は古く、古代エジプトや古代ギリシャでも暗号らしきものが使われていたとされる。シーザー暗号と呼ばれる、アルファベットを一定数ずらす単純な暗号は、ユリウス・カエサルが軍事通信に使ったと言われている。近代に入り、第二次世界大戦中にはエニグマのような複雑な暗号機が開発され、暗号技術は大きく進歩した。現代では、コンピュータの発達に伴い、より高度で複雑な暗号アルゴリズムが開発されている。
暗号技術は、大きく分けて共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の2つに分類される。
共通鍵暗号方式は、暗号化と復号に同じ鍵を使う方式である。暗号化と復号の処理が比較的速いという利点があるが、鍵を安全に共有する必要があるという課題がある。代表的なアルゴリズムとしては、DES、Triple DES、AESなどがある。AES(Advanced Encryption Standard)は、現在最も広く使われている共通鍵暗号方式の一つであり、高い安全性と処理速度を両立している。
公開鍵暗号方式は、暗号化と復号に異なる鍵を使う方式である。公開鍵と呼ばれる鍵は公開され、誰でも暗号化に使うことができる。一方、復号には秘密鍵と呼ばれる、公開鍵と対になる鍵が必要であり、秘密鍵は所有者だけが厳重に管理する。鍵の共有が不要であるという利点があるが、共通鍵暗号方式に比べて処理が遅いという欠点がある。代表的なアルゴリズムとしては、RSA、楕円曲線暗号(ECC)などがある。RSAは、公開鍵暗号方式の代表的なアルゴリズムであり、電子署名や鍵交換など、幅広い用途に使われている。楕円曲線暗号は、RSAよりも短い鍵長で同等の安全性を実現できるため、計算資源が限られた環境で利用されることが多い。
暗号技術は、様々な分野で活用されている。インターネット通信においては、SSL/TLSというプロトコルが、ウェブサイトとブラウザ間の通信を暗号化するために使われている。これにより、クレジットカード番号やパスワードなどの個人情報が盗聴されるリスクを軽減できる。電子メールにおいては、PGPやS/MIMEという技術が、メールの内容を暗号化し、送信者の認証を行うために使われている。これにより、メールの盗み見やなりすましを防ぐことができる。また、無線LAN(Wi-Fi)においては、WEP、WPA、WPA2、WPA3といった暗号化方式が、無線通信を保護するために使われている。WPA3は、WPA2よりも安全性が向上しており、より強固な暗号化を実現している。
近年では、量子コンピュータの開発が進んでおり、従来の暗号アルゴリズムが解読されるリスクが高まっている。そのため、量子コンピュータでも解読が困難な耐量子暗号の研究開発が盛んに行われている。耐量子暗号は、格子暗号、多変数多項式暗号、ハッシュ関数ベース暗号、符号ベース暗号など、様々な方式が提案されている。
暗号技術は、情報セキュリティにおける重要な要素であり、常に進化し続けている。システムエンジニアを目指す上で、暗号の基礎知識を理解しておくことは不可欠である。