カスタマイズ(カスタマイズ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
カスタマイズ(カスタマイズ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
カスタマイズ (カスタマイズ)
英語表記
customization (カスタマイゼーション)
用語解説
カスタマイズとは、情報システムやソフトウェアにおいて、既製品や標準で提供されている機能を、特定の利用者や企業の業務要件に合わせて、個別に追加、変更、あるいは削除する開発作業のことである。多くの業務用パッケージソフトウェアは、幅広い業種や企業で利用できるよう汎用的に作られているが、すべての企業の独自の業務プロセスや文化に完全に適合するわけではない。そこで、標準機能だけでは対応できない固有の要求を満たすために、プログラムのソースコードを直接修正したり、新たな機能モジュールを追加開発したりすることが行われる。これがカスタマイズである。類似の用語にコンフィグレーションやパラメータ設定があるが、これらはソフトウェアにあらかじめ用意された設定項目を変更するだけで、プログラムコードの改変を伴わない点でカスタマイズとは明確に区別される。カスタマイズは、より根本的で自由度の高い改変を指す。
カスタマイズの具体的な手法は多岐にわたる。最も直接的な方法は、提供されているソフトウェアのソースコードを直接編集することである。これにより、機能の挙動を根本から変更したり、既存の画面に新しい項目を追加したりと、非常に自由度の高い改変が可能になる。しかしこの方法は、元のソフトウェアがバージョンアップされた際に、変更箇所が上書きされてしまったり、新しいバージョンとの間で矛盾が生じたりするリスクを伴う。その結果、バージョンアップのたびに多大な修正コストが発生し、システムの維持が困難になる可能性がある。別の手法として、API(Application Programming Interface)を利用する方法がある。これは、ソフトウェアの提供元が外部連携用に公開しているインターフェースを通じて、独自のプログラムから機能を呼び出したり、データを連携させたりする方式である。本体のソースコードには手を加えないため、バージョンアップの影響を受けにくく、比較的安全に機能を拡張できる。また、プラグインやアドオンと呼ばれる、特定の機能を追加するための独立したプログラムを開発し、本体のシステムに組み込む方法もある。この方式は、本体のシステムとは疎結合に保たれるため、保守性が高く、機能の追加や削除が容易であるという利点を持つ。
カスタマイズを実施する最大のメリットは、システムを企業の独自の業務プロセスに完全に適合させられる点にある。これにより、手作業で行っていた業務を自動化したり、システム導入に伴う業務フローの変更を最小限に抑えたりすることができ、業務効率の大幅な向上が期待できる。また、他社にはない独自の機能やサービスをシステムに実装することで、競争上の優位性を確立する戦略的な手段ともなり得る。
一方で、カスタマイズには無視できないデメリットやリスクも存在する。まず、開発コストと期間の増大が挙げられる。個別の要求仕様に基づいて一から設計・開発・テストを行うため、標準機能をそのまま利用する場合に比べて、費用も時間も大幅に増加する。さらに、システムの保守性が著しく低下する危険性がある。独自に作り込まれた部分は、開発を担当した特定の技術者しか理解できない「属人化」に陥りやすく、将来の改修や障害発生時の対応が困難になることがある。前述の通り、ベースとなるソフトウェアのバージョンアップへの追従も大きな課題となる。カスタマイズ箇所が多ければ多いほど、新バージョンへの対応が困難になり、セキュリティパッチの適用などができず、システムが陳腐化、脆弱化する「塩漬け」と呼ばれる状態に陥るリスクが高まる。この保守の複雑さは、システムのライフサイクル全体で見た総所有コスト(TCO)を押し上げる要因となる。
したがって、システムエンジニアは、カスタマイズの要求を受けた際に、その必要性を慎重に見極める必要がある。まずはコンフィグレーションやパラメータ設定で要求を実現できないかを徹底的に検討し、それでも対応できない場合にのみ、カスタマイズを最終手段として考慮すべきである。そして、カスタマイズを実施する際には、将来の保守性や拡張性を十分に考慮した設計を行い、ドキュメントを整備することで属人化を防ぎ、バージョンアップの影響を最小限に抑える工夫を凝らすことが極めて重要となる。顧客の要求をそのまま受け入れるだけでなく、カスタマイズに伴うリスクとコストを正確に説明し、最適な解決策を提案する能力が、優れたシステムエンジニアには求められる。