サイバー空間 (サイバー クウカン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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サイバー空間 (サイバー クウカン) の読み方

日本語表記

サイバー空間 (サイバー クウカン)

英語表記

cyberspace (サイバースペース)

サイバー空間 (サイバー クウカン) の意味や用語解説

サイバー空間とは、コンピュータやネットワークによって構築された、物理的な実体を持たない仮想的な情報空間である。インターネットは、現在存在する最も代表的で広大なサイバー空間といえる。我々が日常的に利用するウェブサイトの閲覧、電子メールの送受信、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)での交流、オンラインショッピング、クラウドサービスの利用といった活動は、すべてサイバー空間上で行われている。この空間は、物理的な距離や国境の制約を越えて、世界中の人々やシステムが瞬時に情報を交換し、相互に作用することを可能にする。物理空間が原子で構成される現実世界であるのに対し、サイバー空間はデータや情報(ビット)で構成される世界であり、そこでの活動はプログラムやプロトコルといった規則に基づいて行われる。 サイバー空間は抽象的な概念であるが、その基盤は物理的なインフラストラクチャによって支えられている。具体的には、サーバー、パソコン、スマートフォンといったコンピュータ機器、それらを接続するルーターやスイッチ、光ファイバーケーブルなどのネットワーク機器から成るハードウェア層が存在する。その上で、オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションといったソフトウェアが動作し、TCP/IPに代表される通信プロトコルが、異なる機器間のデータ交換を円滑に行うための共通言語としての役割を果たす。そして、これらの技術基盤の上を、ウェブページのコンテンツ、データベースに格納された情報、動画ファイル、個人情報といった膨大な量のデータが流通している。サイバー空間は、これらのハードウェア、ソフトウェア、データ、そしてそれを利用する人間が相互に作用しあうことで形成される、動的で複雑なシステムである。 サイバー空間は、物理空間とは異なるいくつかの重要な特性を持つ。第一に、地理的制約からの解放が挙げられる。情報は光速に近い速度で伝達されるため、物理的な距離はほとんど意味をなさず、世界中の情報に瞬時にアクセスしたり、遠隔地の相手とリアルタイムで共同作業を行ったりすることが可能である。第二に、匿名性が挙げられる。利用者は必ずしも現実世界の身元を明かす必要がなく、仮名やアバターを用いて活動できる。これは自由な表現やコミュニケーションを促進する一方で、誹謗中傷やサイバー犯罪の温床となるリスクも内包している。第三に、情報の複製と伝播の容易さがある。デジタルデータは品質を劣化させることなく完全に複製でき、ネットワークを通じて瞬時に、かつ広範囲に拡散させることができる。これは知識の共有を加速させるが、同時に著作権侵害や偽情報の拡散といった問題も引き起こす。 かつてサイバー空間は現実世界から切り離された仮想世界と見なされることもあったが、現在では物理空間と密接に連携し、融合する段階に入っている。IoT(Internet of Things)技術の進展により、工場の機械、自動車、家電製品、社会インフラのセンサーといった、現実世界のあらゆるモノがインターネットに接続され、サイバー空間の一部となった。これにより、サイバー空間で収集・分析されたデータに基づいて物理空間の機器を制御する、サイバーフィジカルシステム(CPS)が実現している。例えば、交通情報をリアルタイムに分析して信号機を最適制御したり、工場の生産ラインを遠隔から監視・自動調整したりすることが可能になった。このように、サイバー空間における活動が物理空間に直接的な影響を及ぼすようになったことで、その社会経済における重要性は飛躍的に増大した。その一方で、サイバー攻撃が電力網の停止や交通システムの麻痺といった物理的な被害を引き起こすリスクも高まっている。そのため、システムエンジニアには、サイバー空間を構成するシステムの設計、構築、運用において、セキュリティを最優先で考慮し、この空間の安全性と信頼性を確保するという極めて重要な責務が課せられている。

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