決定木 (ケッテイギ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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決定木 (ケッテイギ) の読み方

日本語表記

決定木 (ケッテイギ)

英語表記

Decision tree (ディシジョンツリー)

決定木 (ケッテイギ) の意味や用語解説

決定木は、機械学習アルゴリズムの一つで、データから規則性を見つけ出し、意思決定プロセスをツリー(木)の形に表現する手法である。システムエンジニアを目指す初心者にとっては、その直感的な理解しやすさが大きな特徴となる。 決定木は、データが持つ様々な特徴(属性)に基づいて、ある特定の目的(例えば、顧客が商品を購入するかどうか、メールがスパムかどうかなど)を予測または分類するためのモデルである。その名の通り、意思決定の過程を木のような構造で表現する。具体的には、「もし〇〇ならば、△△する。そうでなければ、さらに別の条件で判断する」といった一連の「もし〜ならば」というルールを、上から下へと枝分かれしながら辿っていくことで結論にたどり着く。人間が何かを判断する際に、複数の条件を順番に確認していくプロセスとよく似ているため、非常に分かりやすく、モデルの判断根拠を理解しやすいという利点を持つ。これにより、システムの動作原理や予測結果がなぜそうなったのかを、開発者だけでなくビジネスサイドの担当者も容易に把握できる点が、他の複雑な機械学習モデルと比べて際立つ特徴である。 決定木の基本的な仕組みは、データをより純粋なグループに繰り返し分割していくことにある。まず、すべてのデータが一番上の「根ノード」に集まっている状態から始まる。次に、データの特徴の中から、最も効果的にデータを二つ以上のグループに分けられる特徴(例えば、年齢、収入、購買履歴など)と、その分割条件(例:年齢が30歳未満か30歳以上か)を探し出す。この条件に基づいてデータは二つ以上の「枝」に分かれ、それぞれの枝は次の「内部ノード」へと繋がる。このプロセスは、各ノードに属するデータが、特定の予測結果(例:購入する、スパムである)でほぼ均一になるまで、あるいは事前に設定された停止条件(木の深さの最大値、ノード内のデータ数の最小値など)に達するまで再帰的に繰り返される。最終的に、これ以上分割されないノードは「葉ノード」と呼ばれ、そこが最終的な予測結果や分類の結論を示す。 決定木を構築する際、どの特徴量で分割するのが最適かを判断するために、「不純度」という概念が用いられる。不純度とは、ノード内のデータがどれだけ混ざり合っているか、つまり、様々なクラスのデータがどれだけ均等に分布しているかを示す指標である。一般的な不純度の測り方には、エントロピーやジニ不純度がある。決定木アルゴリズムは、これらの不純度を最小化するように、つまり、分割後にできるだけ純粋な(同じクラスのデータが多く集まる)ノードが生成されるように、最適な特徴量と分割点を探索する。この探索は、通常、各段階で最も良い分割を選ぶ「貪欲法」に基づいて行われる。 決定木の大きな利点の一つは、その高い「解釈可能性」と「説明可能性」にある。構築された木構造は、まるでフローチャートのように視覚的に表現でき、特定の入力データに対してどのような判断基準で最終結果に至ったのかを、人間が明確に追跡し理解できる。これは、特にビジネス上の意思決定支援システムや、AIの判断に対する説明責任が求められる場面で非常に有効である。また、決定木は数値データとカテゴリデータの両方を自然に扱え、特徴量間の複雑な非線形な関係も学習できる。データの正規化やスケーリングといった前処理が不要な場合が多い点も、開発の手間を軽減する利点である。 しかし、決定木にはいくつかの課題も存在する。最大の課題の一つは「過学習」である。訓練データに存在するわずかなノイズや特定のパターンに過度に適応してしまうと、未知のデータに対してはうまく機能しない汎化性能の低いモデルとなってしまうことがある。これを防ぐためには、木の深さを制限したり、枝刈り(Pruning)と呼ばれる手法で不要な分岐を削除したりする工夫が必要となる。また、訓練データのわずかな変化によって、構築される決定木の構造が大きく変わってしまう「不安定性」も指摘されることがある。さらに、決定木は局所的な最適解に陥りやすく、グローバルな最適解を保証できないという側面も持つ。 これらの課題に対処するため、複数の決定木を組み合わせる「アンサンブル学習」という発展的な手法が開発された。例えば、「ランダムフォレスト」は多数の決定木を独立して学習させ、それらの予測を多数決で統合することで、過学習を抑制し、予測精度と安定性を向上させる。また、「勾配ブースティング」のような手法も、弱学習器である決定木を順次学習させ、前のモデルの誤りを補正していくことで、非常に高い予測性能を発揮する。 システムエンジニアが決定木を理解することは、機械学習モデルの選択肢を広げるだけでなく、ビジネスロジックの設計や実装においても役立つ。例えば、複雑な業務ルールを決定木として表現し、それをコードに落とし込むことで、可読性の高い、保守しやすいシステムを構築できる。また、将来的にAIを搭載したシステムを開発する際、モデルの透明性や説明性を確保する上で、決定木の概念は重要な基礎知識となるだろう。

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