成果物 (セイカブツ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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成果物 (セイカブツ) の読み方

日本語表記

成果物 (セイカブツ)

英語表記

deliverable (デリバラブル)

成果物 (セイカブツ) の意味や用語解説

成果物とは、プロジェクトの活動を通じて生み出される、有形または無形の具体的なアウトプット全般を指す。これは単なる作成物という意味合いに留まらず、プロジェクトの目的達成に寄与し、次の工程へと引き継がれる価値を持つもの、あるいは最終的に顧客に提供されるものを意味する。ITシステム開発の文脈では、計画書、設計書、プログラムコード、テストデータ、マニュアルなど、多岐にわたる形態のものが成果物として扱われる。これらはプロジェクトの進行状況を可視化し、関係者間の認識を統一し、品質を確保するために不可欠な存在である。 成果物の具体的な種類は多岐にわたり、プロジェクトのフェーズに応じて様々な形態を取る。まず、文書形式の成果物には、システム開発の初期段階で作成される要件定義書がある。これは顧客の要望を詳細にまとめ、システムがどのような機能を持つべきか、どのような性能を発揮すべきかを明確に記述したもので、顧客と開発者間の合意形成の基礎となる。次に、要件定義書に基づいてシステム全体の構造や機能を設計する基本設計書(外部設計書)があり、利用者から見たシステムの振る舞いや画面構成、操作方法などを定義する。さらに、その基本設計を基に、システム内部の具体的な実装方法を詳細に記述する詳細設計書(内部設計書)が作成される。これには、データベースの構造を示すデータベース設計書、各プログラムの処理ロジックを示すプログラム設計書、画面のレイアウトや帳票の形式を詳細に定める画面・帳票設計書などが含まれる。 開発が進むと、実際にシステムを構築するためのプログラムコードが成果物となる。これはC++、Java、Pythonなどのプログラミング言語で記述されたもので、システムの機能を直接実現する核となる部分である。また、プログラムコードと並行して、そのコードが正しく動作するかを確認するための単体テスト仕様書や、システム全体が連携して機能するかを検証する結合テスト仕様書、最終的にシステムが要件を満たしているかを検証するシステムテスト仕様書なども重要な成果物である。これらのテスト仕様書には、テストの目的、観点、具体的なテスト手順、期待される結果などが記述される。 テストの実施後には、テスト結果報告書が作成される。これは、テストが計画通りに行われたか、発見された不具合とその対応状況はどうであったか、システムの品質はどの程度であったかなどを記録するもので、システムの品質保証において不可欠な役割を果たす。システムが完成し、顧客に引き渡される際には、システムを実際に利用するための操作手順をまとめた利用者マニュアルや、システム稼働後の日常的な運用や障害発生時の対応手順を記載した運用手順書、保守計画書なども成果物として提供される。これらのマニュアルや手順書は、システムが導入された後も円滑に運用され、利用者や運用担当者が適切にシステムを扱うために不可欠な情報源となる。 成果物は、単に情報伝達の手段に留まらず、プロジェクトの成功において極めて重要な役割を果たす。第一に、成果物はプロジェクトの進捗を客観的に把握するための指標となる。各フェーズで定められた成果物が予定通りに作成され、承認されることで、プロジェクトが計画通りに進んでいるかを明確に判断できる。第二に、成果物は品質保証の基盤となる。各工程で作成される成果物が十分な品質を保っていれば、後工程での手戻りや不具合の発生リスクを大幅に低減できる。例えば、要件定義が曖昧なまま設計に進むと、設計段階で要件の矛盾が露呈したり、開発段階で大幅な修正が必要になったりする可能性が高まる。これを防ぐためには、各成果物がレビューされ、関係者からの承認を得ることが重要となる。 第三に、成果物はプロジェクト関係者間のコミュニケーションを円滑にし、共通の認識を形成するために不可欠である。特に顧客との間では、要件定義書や設計書を通じて、どのようなシステムを開発するのか、その範囲と内容について明確な合意を形成する。口頭でのやり取りだけでは誤解が生じやすく、後で「言った」「言わない」といったトラブルに発展する可能性があるため、文書化された成果物による合意形成は非常に重要である。また、開発チーム内でも、設計書を通じて各メンバーがシステム全体の構造や自分の担当する機能について共通の理解を持つことで、手戻りを減らし、開発効率を高めることができる。 第四に、成果物はプロジェクトの知識継承に役立つ。プロジェクトメンバーの異動や交代があった場合でも、残された成果物によって、後任者がシステムの詳細を迅速に理解し、円滑に業務を引き継ぐことが可能となる。長期にわたるシステムの運用や保守を考慮すると、このような知識継承の仕組みは不可欠である。特にシステムの改修や機能追加を行う際には、既存の設計書やコードを基に作業を進めるため、過去の成果物の品質がその後の作業効率やシステムの安定性に直結する。 最後に、一部の成果物は法的証拠としての側面も持つ。特に顧客と開発者間で合意された要件定義書や契約書に紐付く設計書などは、万が一の紛争が発生した場合に、開発の内容や範囲を証明する重要な証拠となり得る。そのため、成果物の作成、レビュー、承認、そして適切な管理は、法的なリスクを回避するためにも非常に重要である。 これらの理由から、ITプロジェクトにおいては成果物の適切な管理が求められる。これには、バージョン管理システムの導入による成果物の変更履歴の記録、共有フォルダやドキュメント管理システムによる関係者への適切なアクセス権の付与、定期的なレビューと承認プロセスの実施などが含まれる。成果物は単なる作業の副産物ではなく、プロジェクトの成功を左右する重要な資産であり、その品質と管理はシステムエンジニアにとって常に意識すべき課題である。

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