差動位相偏移変調 (サドウイソウヘンイヘンチョウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

作成日: 更新日:

差動位相偏移変調 (サドウイソウヘンイヘンチョウ) の読み方

日本語表記

差動位相偏移変調 (サドウイソウヘンイヘンチョウ)

英語表記

Differential Phase Shift Keying (ディファレンシャル・フェーズ・シフト・キーイング)

差動位相偏移変調 (サドウイソウヘンイヘンチョウ) の意味や用語解説

差動位相偏移変調(DPSK:Differential Phase Shift Keying)は、デジタルデータを無線通信などの信号として送信する際に用いられる変調方式の一つだ。PSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)の変形であり、PSKが絶対的な位相差を用いるのに対し、DPSKは位相の変化量(差)を用いてデータを表現する。 DPSKの概要を説明する。デジタルデータを無線で送る場合、0と1のビット列を電波に乗せる必要がある。PSKでは、例えば0を0度の位相、1を180度の位相と割り当て、搬送波の位相を変化させることで情報を伝える。しかし、受信側で正確な位相を把握するには、送信側との同期が不可欠となる。ノイズや伝送路の変動によって位相がずれると、誤ったデータを受信してしまう可能性がある。 DPSKはこの問題を解決するために、連続する信号間の位相差に着目する。例えば、0を「位相を変化させない」、1を「位相を180度変化させる」と定義する。送信するデータが「0110」の場合、最初のビットは基準となる位相(例えば0度)で送信し、次のビットが1なので位相を180度変化させ、180度で送信する。さらに次のビットも1なので、再び位相を180度変化させ、結果として0度で送信する。最後のビットは0なので位相は変化させず、0度のまま送信する。受信側では、前の信号との位相差を検出するだけで、0か1かを判断できる。 DPSKの詳細について説明する。DPSKの最大の利点は、受信側で絶対的な位相を基準とする必要がない点だ。伝送路のノイズや変動による位相のずれは、連続する信号にほぼ同じように影響するため、位相差を検出することで、その影響を打ち消すことができる。つまり、DPSKはPSKに比べて、同期ずれやノイズに対する耐性が高いと言える。 DPSKには、二位相差偏移変調(DBPSK:Differential Binary Phase Shift Keying)や四位相差偏移変調(DQPSK:Differential Quadrature Phase Shift Keying)など、いくつかの種類が存在する。DBPSKは、位相差を0度または180度のいずれかで表現する最も単純な形式で、1ビットの情報を伝送する。DQPSKは、位相差を0度、90度、180度、270度のいずれかで表現し、一度に2ビットの情報を伝送できる。 DQPSKは、DBPSKよりも高いデータ伝送速度を実現できるが、変調・復調回路が複雑になる。さらに、8DPSK(8相差偏移変調)のように、さらに多くの位相差を用いることで、より多くのビットを一度に伝送することも可能だ。しかし、位相差が増えるほど、ノイズに対する耐性が低下する傾向があるため、伝送路の品質や求められるデータ伝送速度に応じて、適切な変調方式を選択する必要がある。 DPSKは、無線LAN(Wi-Fi)やBluetoothなど、様々な無線通信規格で利用されている。特に、初期の無線LAN規格であるIEEE 802.11bでは、DBPSKやDQPSKが採用され、安定した通信を支えた。また、衛星通信や移動体通信など、信頼性の高い通信が求められる分野でも、DPSKが広く利用されている。 DPSKの変調・復調回路は、PSKに比べてやや複雑になるが、近年ではICチップの高性能化により、容易に実装できるようになった。DPSKは、同期ずれやノイズに強く、比較的簡単に実装できることから、今後も様々な無線通信システムで利用されていくと考えられる。システムエンジニアを目指す上で、DPSKの原理と特徴を理解しておくことは、無線通信技術を扱う上で非常に重要だ。

差動位相偏移変調 (サドウイソウヘンイヘンチョウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説