実効スループット (ジッコウ スループット) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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実効スループット (ジッコウ スループット) の読み方

日本語表記

実効スループット (ジッコウ スループット)

英語表記

Effective Throughput (イフェクティブ・スループット)

実効スループット (ジッコウ スループット) の意味や用語解説

実効スループットとは、ネットワークやストレージなどの情報伝送路において、実際に利用者が体感できるデータ転送速度のことである。理論上の最大転送速度(最大スループット)とは異なり、様々な要因によるオーバーヘッドや遅延を考慮した、より現実的な指標として用いられる。 詳細について説明する。情報システムは、様々な要素が複雑に絡み合って動作している。例えば、ネットワークを介したファイル転送を考えてみよう。この時、理論上の最大スループットは、ネットワーク機器の仕様や回線速度によって決定される。しかし、実際にファイルを転送する際には、様々な要因が影響する。 まず、プロトコルのオーバーヘッドが挙げられる。TCP/IPなどの通信プロトコルは、データを正しく送受信するために、ヘッダと呼ばれる制御情報を付加する。このヘッダ情報は、実際に転送したいデータそのものではないため、実質的な転送速度を低下させる。例えば、TCPヘッダは通常20バイト程度だが、これが大量のパケットに付加されると、無視できないオーバーヘッドとなる。 次に、ネットワークの混雑や遅延も重要な要素である。ネットワーク上には、常に様々なデータが流れており、回線が混雑すると、パケットの遅延や損失が発生する可能性が高まる。パケットが損失した場合、再送処理が必要となり、全体の転送速度が低下する。また、ルータなどのネットワーク機器における処理遅延も、実効スループットに影響を与える。 さらに、ストレージの性能もボトルネックとなることがある。ファイルを転送する際、データを一時的にディスクに書き込む必要がある場合、ディスクの読み書き速度が遅いと、全体の転送速度が制限される。特に、ランダムアクセスが多い処理では、ディスクの性能が重要となる。 加えて、暗号化処理も実効スループットに影響を与える。データを暗号化して転送する場合、暗号化・復号化の処理に時間がかかるため、実質的な転送速度が低下する。暗号化方式や鍵長によって、処理にかかる時間は異なる。 クライアントやサーバー側のCPU性能も影響する。データの圧縮・解凍処理や、アプリケーションの処理能力が低い場合、ネットワークの速度が十分に速くても、データを処理しきれずに、実効スループットが低下することがある。 このように、実効スループットは、ネットワーク、ストレージ、CPUなど、様々な要素が複合的に影響し合うことで決定される。最大スループットだけを見てシステムの性能を判断するのではなく、実効スループットを考慮することで、より現実的な性能評価が可能となる。 実効スループットを測定する方法としては、専用の測定ツールを使用したり、実際にファイルを転送して時間を計測したりする方法がある。測定する際には、ネットワークの混雑状況や時間帯などを考慮し、複数回測定して平均値を求めることが望ましい。また、測定対象のシステムの負荷状況も考慮する必要がある。 システムを設計・構築する際には、実効スループットを向上させるために、様々な対策を講じる必要がある。例えば、ネットワーク機器の性能向上、回線増強、プロトコルの最適化、キャッシュの利用、データの圧縮などが挙げられる。また、ボトルネックとなっている箇所を特定し、重点的に対策を講じることが重要となる。 実効スループットは、システム全体の性能を評価する上で非常に重要な指標である。システムエンジニアを目指す者は、実効スループットの意味を理解し、測定・改善するための知識を身につけておくことが不可欠である。

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