エンディアン(エンディアン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

エンディアン(エンディアン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

エンディアン (エンディアン)

英語表記

endian (エンディアン)

用語解説

エンディアンとは、コンピュータのメモリ上で複数バイトで構成されるデータを格納する際の、バイトの並び順に関する規約である。具体的には、整数値や浮動小数点数といったデータが、メモリのどの番地からどの番地へ、上位バイト(Most Significant Byte, MSB)から格納されるのか、下位バイト(Least Significant Byte, LSB)から格納されるのか、その順番を定める概念を指す。このバイト順序の概念は、特に異なる種類のコンピュータシステム間でデータをやり取りする際や、特定のデータフォーマットを扱う際に非常に重要な意味を持つ。システムエンジニアとしてデータを正しく理解し、扱うためには、エンディアンの知識は不可欠である。

エンディアンには大きく分けて二つの主要な種類がある。一つは「ビッグエンディアン(Big-Endian)」、もう一つは「リトルエンディアン(Little-Endian)」である。

ビッグエンディアンは、データの最上位バイト(最も桁の大きいバイト)をメモリの最も若いアドレスに配置し、そこから順に下位バイトへと配置していく方式である。人間が数値を書くとき、例えば「123」という数字は百の位、十の位、一の位の順に書くように、直感的に上位から下位へと並べるため、比較的理解しやすい並び方と言える。例えば、32ビットの整数値「0x12345678」(16進数表記)をメモリに格納する場合、アドレス0x1000から格納を開始すると仮定すると、0x1000番地には「0x12」、0x1001番地には「0x34」、0x1002番地には「0x56」、0x1003番地には「0x78」が格納される。この方式は、IBMのメインフレームやMotorolaのCPU、またネットワークプロトコルにおいてはTCP/IPの標準(ネットワークバイトオーダー)として採用されている。ネットワーク上でデータをやり取りする際には、異なるエンディアンのシステム間でもデータが正しく解釈されるよう、ビッグエンディアンに統一されることが多い。

一方、リトルエンディアンは、データの最下位バイト(最も桁の小さいバイト)をメモリの最も若いアドレスに配置し、そこから順に上位バイトへと配置していく方式である。先ほどの32ビットの整数値「0x12345678」をアドレス0x1000から格納する場合、0x1000番地には「0x78」、0x1001番地には「0x56」、0x1002番地には「0x34」、0x1003番地には「0x12」が格納される。この方式は、Intel社のx86系CPU(現在多くのパーソナルコンピュータやサーバーで採用されている)や、AMD社のCPUなどで広く採用されている。リトルエンディアンが採用される理由としては、データの下位バイトから処理を開始できるため、アドレス計算が効率的になるという設計上の利点があると言われることがある。

なぜこのようなエンディアンの違いが生まれたのかというと、主にCPUの設計思想や歴史的な経緯に由来する。初期のコンピュータ設計において、どちらのバイト順がより効率的であるかという点で意見が分かれ、それぞれ異なる実装が採用された結果、現在に至るまで二つの主要な方式が並存している。

このエンディアンの違いは、異なるアーキテクチャのコンピュータ間でデータを交換する際に問題を引き起こす可能性がある。例えば、ビッグエンディアンのシステムで作成されたバイナリファイルをリトルエンディアンのシステムで読み込もうとすると、バイトの並びが逆転してしまい、数値が全く異なる値として解釈されてしまうのだ。これは、文字列データのような1バイト単位で意味を持つデータには影響しないが、整数や浮動小数点数といった複数バイトで構成される数値データや、構造体のように複数のデータ型が連続して並ぶデータにおいて顕著な問題となる。

この問題に対処するためには、いくつかの方法がある。一つは、データの送受信を行う際に、送信側または受信側でバイトオーダーを変換することである。ネットワーク通信においては、先述の通りTCP/IPがネットワークバイトオーダーとしてビッグエンディアンを採用しているため、送信側は自システムがリトルエンディアンであればデータをビッグエンディアンに変換し、受信側はビッグエンディアンで受け取ったデータを自システムがリトルエンディアンであれば再度リトルエンディアンに変換する、といった処理が必要となる。C言語のソケットプログラミングでは、htons(ホストバイトオーダーからネットワークバイトオーダーへショート整数を変換)、ntohl(ネットワークバイトオーダーからホストバイトオーダーへロング整数を変換)といった関数群が提供されており、これらを利用することで自動的にバイトオーダーの変換を行うことができる。

また、ファイル形式や特定のデータフォーマット(例えば画像ファイル形式や実行ファイル形式)によっては、その仕様として特定のエンディアンが定められている場合がある。そのようなファイルを読み書きする際には、そのフォーマットの仕様に従ってバイトオーダーを意識し、必要に応じて変換処理を実装しなければならない。さらに、プログラミングにおいては、ポインタ操作やビットシフト演算を駆使して、バイトデータを直接操作し、エンディアンの変換を行うことも可能である。しかし、これらの直接的な操作はコードが複雑になりやすく、バグの原因にもなりやすいため、可能な限り標準ライブラリやフレームワークが提供する変換機能を利用することが推奨される。

現代のシステム開発において、クラウド環境の利用、マイクロサービスアーキテクチャの普及、異なる組み込みシステムとの連携など、様々なアーキテクチャやプラットフォームが混在する状況は日常的である。このような環境では、データの互換性を確保するためにエンディアンの知識と適切な対応は不可欠となる。データ構造の設計段階からエンディアンの互換性を考慮したり、データシリアライズ(データを特定の形式に変換して保存・転送可能な形にすること)やデシリアライズ(シリアライズされたデータを元の形式に戻すこと)の際にバイトオーダーを明示的に指定したりするなど、意識的な設計が求められる。エンディアンは一見地味な概念に見えるかもしれないが、システム間の連携においてデータの整合性を保証する上で極めて重要な基盤となる知識であり、システムエンジニアを目指す者にとって確実に理解しておくべき項目である。

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