エンドポイントセキュリティ(エンドポイントセキュリティ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

エンドポイントセキュリティ(エンドポイントセキュリティ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

エンドポイントセキュリティ (エンドポイントセキュリテイ)

英語表記

Endpoint security (エンドポイントセキュリティ)

用語解説

エンドポイントセキュリティとは、企業や組織のネットワークに接続された個々の末端機器、すなわち「エンドポイント」を、サイバー攻撃や不正アクセス、マルウェアの脅威から保護するための一連の対策を指す。現代のIT環境は、従業員が会社支給のPCやスマートフォン、さらには個人のデバイス(BYOD: Bring Your Own Device)を使って、社内だけでなく、自宅や出張先、カフェといった多様な場所から業務を行うことが当たり前になっている。このような働き方の変化は利便性を向上させる一方で、従来の「社内ネットワークの境界を堅牢な壁で守る」という「境界防御」の考え方だけでは、もはやセキュリティを維持することが困難であることを示している。なぜなら、ネットワークの境界を越えて、インターネットに直接接続された個々のエンドポイントが、そのまま脅威に晒されるリスクが高まったからだ。エンドポイントセキュリティは、この最終的な防御ライン、つまり「最後の砦」であるエンドポイント自身を強化することで、組織全体の情報資産を守るための極めて重要な戦略である。

エンドポイントとは、パソコン、スマートフォン、タブレットといった個人のクライアントデバイスだけでなく、業務で利用するファイルサーバーやWebサーバー、データベースサーバー、さらにはPOS端末、プリンター、IoTデバイスなど、ネットワークに接続され、情報処理や情報入出力を行う全ての機器を指す。これらのエンドポイントは、サイバー攻撃者にとって格好の標的となり、侵入経路、情報窃取の拠点、あるいはさらなる攻撃の踏み台として利用される可能性がある。特に、近年増加している標的型攻撃やランサムウェアなどの高度な脅威は、多くの場合、メールの添付ファイルや悪意のあるWebサイトを通じてエンドポイントに到達し、そこから組織の内部ネットワークへと侵入していく。

エンドポイントセキュリティが必要とされる背景には、サイバー攻撃の劇的な進化と多様化がある。単に既知のウイルスを検知・除去するだけでなく、「ゼロデイ攻撃」と呼ばれる、まだ対策が確立されていない未知の脆弱性を狙う攻撃や、正規のOS機能やツールを悪用することで検知を回避しようとする「ファイルレスマルウェア」、組織の機密情報を暗号化して身代金を要求する「ランサムウェア」などが横行している。これらの攻撃手法は非常に巧妙であり、従来のファイアウォールやIDS/IPSといったネットワークレベルの防御だけでは防ぎきれないことが多い。そのため、各エンドポイント自身が、自らを防御し、脅威を検知・対応する能力を持つことが不可欠となる。

エンドポイントセキュリティの主要な機能は多岐にわたる。最も基本的な対策は、アンチウイルス/マルウェア対策ソフトウェアの導入である。これは、既知のマルウェアのパターン(シグネチャ)に基づいて脅威を検知・除去するだけでなく、近年では「次世代型アンチウイルス(NGAV: Next-Generation Antivirus)」として進化し、ヒューリスティック分析、振る舞い検知、機械学習といった技術を駆使して、未知のマルウェアやファイルレスマルウェアの不審な挙動をリアルタイムで検知し、実行をブロックする能力を備えている。

さらに重要な機能として注目されているのが、EDR(Endpoint Detection and Response)である。NGAVが「侵入を未然に防ぐ」ことに主眼を置くのに対し、EDRは「万が一侵入を許してしまった後」の対策に重点を置く。EDRは、エンドポイント上で行われる全ての操作(プロセスの実行、ファイルの読み書き、ネットワーク通信など)を継続的に監視・記録し、不審な活動や攻撃の兆候を検知する。そして、その検知された脅威について、いつ、誰が、どのように行われたかといった詳細な情報をセキュリティ担当者に提供することで、脅威の全容を可視化し、迅速な調査を可能にする。さらに、感染したデバイスのネットワークからの隔離、不審なプロセスの強制終了、悪意のあるファイルの削除といった適切な対応を、遠隔から実行する機能も提供し、被害の拡大を最小限に抑えることに貢献する。

その他にも、エンドポイントセキュリティには多様な要素が含まれる。例えば、OSやアプリケーションの脆弱性を放置しないための「パッチ管理」や、不適切な設定によるセキュリティホールをなくすための「設定管理」は、攻撃の足がかりを減らす上で不可欠である。機密情報がエンドポイントから外部に漏洩することを防ぐ「データ漏洩防止(DLP)」機能は、USBメモリなどの外部記憶媒体やクラウドストレージへのデータのアップロード、メールでの送信などを監視・制御する。また、外部デバイス(USBメモリ、外付けHDDなど)の利用を制限・監視する「デバイス制御」も、マルウェアの持ち込みや情報持ち出しのリスクを低減するために重要である。さらに、エンドポイントレベルで不正なネットワーク通信をブロックする「パーソナルファイアウォール」機能も、基本的な防御層として機能する。

近年では、これらのエンドポイントセキュリティ機能を単体で提供するだけでなく、複数のセキュリティ機能を統合し、より広範な領域での検知と対応を可能にする「XDR(Extended Detection and Response)」や、クラウドと連携してセキュリティとネットワークアクセスを統合的に管理する「SASE(Secure Access Service Edge)」といった、新たなアプローチも登場している。これらは、エンドポイントを起点とした「ゼロトラストセキュリティ」モデル、すなわち「何も信頼せず、常に検証する」という考え方を実現するための重要な要素となる。組織内のすべての人、デバイス、アプリケーションは、信頼できないものとして扱い、アクセス要求ごとに厳密な認証と認可を行うことで、万が一エンドポイントが侵害された場合でも、被害の拡大を防ぐことを目指す。

エンドポイントセキュリティを効果的に導入・運用するためには、組織内のすべてのアエンドポイントに対して一貫したセキュリティポリシーを適用し、継続的に監視する体制を構築することが極めて重要である。導入した製品やシステムは常に最新の状態に保ち、日々変化する脅威情報に迅速に対応できる運用体制も不可欠だ。そして、最終的にセキュリティの最も弱い環となり得るエンドユーザー一人ひとりが、セキュリティ意識を高め、不審なメールの開封や不明なファイルのダウンロードを避けるといった基本的な行動を徹底することが、組織全体の防御力向上に大きく寄与する。エンドポイントセキュリティは、単にツールを導入するだけでなく、組織全体のセキュリティ文化を醸成する包括的な取り組みなのである。