実体関連図(ジッタイカンレンズ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

実体関連図(ジッタイカンレンズ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

実体関連図 (ジッタイカンレンズ)

英語表記

Entity Relationship Diagram (エンティティ リレーションシップ ダイアグラム)

用語解説

実体関連図(ER図)は、システム開発におけるデータベース設計で用いられる図のこと。データ構造を可視化し、関係性を明確にするための重要なツールだ。システムで扱う情報(エンティティ)とその属性、エンティティ間の関連性を図で表現することで、開発者間で共通認識を持ち、効率的なデータベース設計を支援する。

実体関連図は、主に以下の3つの要素で構成される。

  1. エンティティ: システムで管理する対象となるデータのこと。例えば、顧客、商品、注文などがエンティティにあたる。実体関連図では、エンティティは長方形で表現されることが多い。長方形の中には、エンティティの名前を記述する。

  2. 属性: エンティティが持つ特性や情報のこと。例えば、顧客エンティティであれば、顧客ID、氏名、住所、電話番号などが属性にあたる。属性は、エンティティの中に記述するか、楕円で表現してエンティティと線で結ぶ方法がある。

  3. リレーションシップ: エンティティ間の関連性のこと。例えば、顧客エンティティと注文エンティティの間には、「顧客が注文する」という関連性が存在する。リレーションシップは、菱形で表現されることが多い。菱形の中には、関連性の種類を記述する。

リレーションシップには、主に以下の3つの種類がある。

  • 1対1 (1:1): あるエンティティの1つのインスタンスが、別のエンティティの1つのインスタンスと関連付けられる場合。例えば、ある社員が1つの社員証を持つ場合など。

  • 1対多 (1:N): あるエンティティの1つのインスタンスが、別のエンティティの複数のインスタンスと関連付けられる場合。例えば、1人の顧客が複数の注文を行う場合など。

  • 多対多 (N:M): あるエンティティの複数のインスタンスが、別のエンティティの複数のインスタンスと関連付けられる場合。例えば、複数の学生が複数の講座を受講する場合など。多対多のリレーションシップは、中間エンティティを導入して1対多のリレーションシップに分解することが一般的だ。

実体関連図を作成する主な目的は、以下の通りだ。

  • データ構造の可視化: 複雑なデータ構造を図で表現することで、全体像を把握しやすくする。
  • 要件の明確化: エンティティ、属性、リレーションシップを定義する過程で、システムに必要な情報を明確にする。
  • コミュニケーションの円滑化: 開発者、設計者、顧客などの関係者間で、データ構造に関する共通認識を形成する。
  • データベース設計の効率化: 実体関連図を基に、データベースのテーブル構造を設計することで、効率的なデータベース構築を支援する。
  • データベースの整合性確保: データ間の関連性を定義することで、データの整合性を維持する。

実体関連図は、データベース設計の初期段階で作成されることが多い。要件定義や分析の結果を基に、システムに必要なエンティティ、属性、リレーションシップを洗い出し、図として表現する。作成された実体関連図は、関係者間でレビューを行い、修正を重ねることで、より正確で実用的なものにしていく。最終的に、実体関連図はデータベース設計の基礎となり、テーブル定義書やSQL文の作成に役立てられる。

近年では、UML(Unified Modeling Language)などのモデリング言語も利用されるが、実体関連図は依然としてデータベース設計における重要なツールとして広く利用されている。特に、関係データベースの設計においては、実体関連図の理解が不可欠だと言える。実体関連図を正しく理解し、適切に活用することで、より効率的で信頼性の高いシステム開発が可能となる。