エンティティBean(エンティティビーン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

エンティティBean(エンティティビーン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

エンティティBean (エンティティビーン)

英語表記

EntityBean (エンティティビーン)

用語解説

エンティティBeanは、Enterprise JavaBeans (EJB) の一種であり、主にリレーショナルデータベースに永続化されるデータをJavaオブジェクトとして表現するためのコンポーネントである。システムエンジニアを目指す初心者がデータベースのデータをプログラムで扱う際に、直接SQL文を書かずにJavaのオブジェクトとして操作したいという要望があるが、エンティティBeanはそのようなニーズに応えるために設計された。具体的には、データベースのテーブルの1行(レコード)や、複数のテーブルにまたがるデータを、メモリ上のJavaオブジェクトとしてマッピングし、そのオブジェクトを介してデータの読み書き、更新、削除といった永続化処理を行う仕組みを提供する。

エンティティBeanの最も重要な役割は、データベースに永続化されたビジネスデータを表現し、そのデータに対する永続化操作を容易にすることである。例えば、顧客情報管理システムでは「顧客」というエンティティ、在庫管理システムでは「商品」というエンティティが存在するが、これらをエンティティBeanとして実装することで、Javaプログラムから顧客オブジェクトや商品オブジェクトとして直接扱えるようになる。これにより、開発者は煩雑なSQL文の記述から解放され、よりオブジェクト指向的なアプローチでビジネスロジックの開発に集中できるメリットがあった。

エンティティBeanには主に二つの永続化タイプが存在した。一つはコンテナ管理永続化 (Container-Managed Persistence, CMP) で、もう一つはBean管理永続化 (Bean-Managed Persistence, BMP) である。CMPでは、データの永続化に関する処理(データベースへの接続、SQL文の生成と実行、トランザクション管理など)のほとんどをEJBコンテナが自動的に担当する。開発者は、エンティティBeanのフィールドとデータベースのテーブルのカラムのマッピング情報を定義するだけで、永続化の詳細はコンテナに任せることができた。これにより、開発者は永続化ロジックをほとんど書かずに済み、アプリケーションのポータビリティ(異なるデータベースへの対応)も高まるという利点があった。しかし、複雑なクエリや特殊なデータベース操作が必要な場合には、CMPでは柔軟性に欠けるという課題も存在した。

一方、BMPでは、開発者がエンティティBeanの内部で、データのロード、保存、更新、削除といった永続化処理を明示的に記述する必要があった。これには、JDBC APIを使ってSQL文を直接実行するコードが含まれる。BMPはCMPに比べて開発者の負担は増えるが、その分、非常に柔軟なデータベース操作が可能となり、複雑なデータアクセス要件や既存のデータベーススキーマへの適応が容易になるというメリットがあった。

エンティティBeanはEJBコンテナの管理下で動作する。クライアントからのリクエストに応じて、コンテナはエンティティBeanのインスタンスを生成し、データベースからデータをロードしてオブジェクトに設定する。クライアント(通常はセッションBeanやサーブレット)はそのエンティティBeanのインスタンスに対してビジネスメソッドを呼び出し、データの参照や更新を行う。エンティティBeanのデータが更新された場合、コンテナは適切なタイミングでその変更をデータベースに反映する(永続化する)。また、EJBコンテナはトランザクション管理、セキュリティ、並行処理といったエンタープライズアプリケーションに不可欠なサービスをエンティティBeanに提供するため、開発者はこれらの複雑な機能を自分で実装する必要がなかった。これは、エンティティBeanが提供する強力なメリットの一つであった。

しかし、EJB2.x世代のエンティティBeanは、その複雑さや開発のオーバーヘッドの大きさから、しばしば「重い」「扱いにくい」と評されることが多かった。特にCMPの実装は複雑になりがちで、XML記述によるマッピングの定義なども煩雑であった。また、特定のデータアクセスパターンにおいては、パフォーマンス上の課題も指摘されることがあった。

このような背景から、Java EE(現在のJakarta EE)では、エンティティBeanの概念をよりシンプルかつ軽量にした新しい永続化技術が導入された。それがJava Persistence API (JPA) である。JPAは、エンティティBeanの持つオブジェクトリレーショナルマッピング(O/Rマッピング)のアイデアを継承しつつ、POJO (Plain Old Java Object) を利用することで、開発者がより簡単に永続化オブジェクトを扱えるように設計された。JPAの登場により、エンティティBeanという用語はEJB2.x以前の特定の技術を指すようになり、現在のエンタープライズJava開発では、データベースの永続化オブジェクトは通常「JPAエンティティ」や単に「エンティティ」と呼ばれる。

今日では、JPAとその主要な実装であるHibernateなどが広く利用されており、エンティティBeanの直接的な利用はほとんど見られない。しかし、JPAが提供するO/Rマッピングの概念や、永続化オブジェクトを中心としたデータアクセスのアプローチは、まさにエンティティBeanが最初に提示したビジョンに基づいている。したがって、システムエンジニアを目指す初心者にとって、エンティティBeanの基本的な考え方を理解することは、現代のJavaEE/JakartaEEにおける永続化技術の背景と進化を把握するために非常に有益である。エンティティBeanは、Javaエンタープライズ分野におけるデータ永続化技術の進化の歴史において、重要な一歩を記した技術であったと言える。