イーサネットフレーム(イーサネットフレーム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
イーサネットフレーム(イーサネットフレーム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
イーサネットフレーム (イーサネットフレーム)
英語表記
Ethernet frame (イーサネットフレーム)
用語解説
イーサネットは、現代の有線ローカルエリアネットワーク(LAN)で最も広く採用されている通信規格である。コンピュータやネットワーク機器が相互にデータを送受信する際、データはそのままの形で送られるわけではない。通信を効率的かつ確実に行うため、データは特定のルールに従って小さな単位に分割され、制御情報が付加された上でネットワーク上を流れる。このデータの送受信単位を「フレーム」と呼び、イーサネットの規格で定められた形式のフレームが「イーサネットフレーム」である。イーサネットフレームの主な役割は、送信したいデータを梱包し、正しい宛先に届け、さらに通信途中でデータが破損していないかを確認することにある。これにより、同一ネットワーク内の多数の機器が円滑に通信を行うことが可能となる。
イーサネットフレームは、大きく分けて「ヘッダ」「データ(ペイロード)」「トレーラ」の三つの部分から構成されている。それぞれの部分には、通信を制御するための重要な情報が含まれている。
まず、フレームの先頭に位置するのがヘッダである。ヘッダはさらに複数のフィールドに分かれている。先頭には「プリアンブル」と「SFD(Start Frame Delimiter)」が存在する。プリアンブルは7バイトの特定のビットパターンで構成され、受信側の機器に対してこれからフレームが始まることを知らせ、クロック同期を取るための準備信号として機能する。続く1バイトのSFDは、プリアンブルの終わりとフレーム本体の開始を明確に示す役割を持つ。これら8バイトは、受信側がフレームを正しく認識するための準備運動のようなものである。
SFDの次には、通信相手を特定するための最も重要な情報である「宛先MACアドレス」と「送信元MACアドレス」が続く。MACアドレスは、ネットワークインターフェースカード(NIC)などのネットワーク機器に割り当てられた、世界で一意の48ビット(6バイト)の物理アドレスである。宛先MACアドレスは、このフレームをどの機器に届けるかを示しており、特定の機器宛てのユニキャスト、グループ内の全機器宛てのマルチキャスト、同一ネットワーク上の全機器宛てのブロードキャストといった種類がある。送信元MACアドレスは、このフレームを送信した機器のアドレスを示し、受信側が誰からのデータであるかを識別するために使用される。
MACアドレスの後には、2バイトの「タイプ」フィールドが配置される。これは、フレームのデータ部分に格納されている上位層のプロトコルが何であるかを識別するための情報である。例えば、インターネットで広く使われるIPv4パケットを運ぶ場合は「0x0800」、IPアドレスからMACアドレスを問い合わせるARPの場合は「0x0806」といった値が設定される。受信側の機器はこのタイプフィールドを参照し、データ部分をどのプロトコルで処理すればよいかを判断する。このフィールドは古い規格ではフレームの長さを格納するために使われることもあったが、現在主流のEthernet IIという規格では、プロトコルタイプを示すために使用されるのが一般的である。
ヘッダの次に位置するのが「データ」または「ペイロード」と呼ばれる部分である。ここには、実際に送りたいデータ本体、例えばIPパケットやARPパケットなどが格納される。イーサネットフレームにおけるデータ部分のサイズには規定があり、最小で46バイト、最大で1500バイトと定められている。この最大サイズはMTU(Maximum Transmission Unit)として知られている。もし送信したいデータが46バイトに満たない場合、「パディング」と呼ばれる意味のないデータが付加され、最小サイズが満たされる。
最後に、フレームの末尾には「トレーラ」が付加される。イーサネットフレームのトレーラは、4バイトの「FCS(Frame Check Sequence)」というフィールドのみで構成される。FCSは、フレームが伝送途中で破損していないかを確認するためのエラー検出符号である。送信側は、宛先MACアドレスからデータ部の終わりまでを対象に、CRC(巡回冗長検査)というアルゴリズムで計算を行い、その結果をFCSとして付加して送信する。フレームを受信した側も、同様に受け取ったデータからCRCを計算する。そして、自身で計算した値と、フレームに含まれているFCSの値を比較する。二つの値が一致すれば、データは破損なく正常に伝送されたと判断し、処理を続行する。もし値が一致しなければ、伝送途中でエラーが発生したと判断し、そのフレームは破棄される。FCSによって、データの信頼性が保証されるのである。
これらの構造により、イーサネットフレームは単なるデータの断片ではなく、送信元、宛先、内容の種類、そしてデータの完全性といった情報を持つ、自己完結した通信単位として機能する。システムエンジニアは、ネットワークのトラブルシューティングを行う際に、パケットキャプチャツールなどを用いてこれらのフレームを実際に解析し、MACアドレスの不整合やFCSエラーの有無などを確認することで、問題の原因を特定していく。イーサネットフレームの構造を理解することは、ネットワークの基本的な仕組みを把握する上で不可欠な知識である。