拡張Z手順(カクチョウザジェイジュン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
拡張Z手順(カクチョウザジェイジュン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
拡張Z手順 (カクチョウゼットテジュン)
英語表記
Extended Z protocol (エクステンデッド ゼット プロトコル)
用語解説
拡張Z手順は、主に銀行などの金融機関で利用される勘定系システムにおいて、24時間365日の連続稼働を実現するための技術的な手順やアーキテクチャの総称である。勘定系システムは、預金の入出金や振り込みといった顧客の取引を記録・管理する、社会インフラとして極めて重要なシステムであり、その停止は社会活動に大きな影響を及ぼす。かつてのシステムでは、日々の取引を締め、勘定を確定させるためのバッチ処理を夜間に行う必要があり、その間はオンラインサービスを停止するのが一般的であった。しかし、インターネットバンキングの普及やキャッシュレス決済の拡大に伴い、顧客からは深夜や休日でもサービスを利用したいという要求が高まった。この要求に応えるため、オンラインサービスを提供し続けながら、裏側で日次のバッチ処理やシステムのメンテナンスを実行可能にする仕組みとして、拡張Z手順が考案され、発展してきた。その名称は、多くの金融機関で採用されているIBM社のメインフレーム、特にz/OS上で確立された技術であることに由来する。この手順は、単一の技術を指すものではなく、システムの二重化、データベースの巧妙な切り替え、データの同期など、複数の技術を組み合わせた総合的なソリューションである。
拡張Z手順の核心は、オンラインサービスを無停止で継続しながら、システムの運用に不可欠なバッチ処理や保守作業をいかにして実行するかという点にある。これを実現するための主要な技術要素は、システムの冗長化、データベースの分割運用、そして計画保守への対応である。まず、システムの冗長化は無停止運用の基本となる。勘定系システムは、全く同じ構成を持つ二つの系統、すなわち現用系と待機系で運用される。現用系は実際に顧客からのオンライントランザクションを処理しているシステムであり、待機系は現用系に障害が発生した際に即座に処理を引き継ぐための予備システムである。この二重化構造により、ハードウェア障害など予期せぬトラブルが発生しても、サービスを停止することなく運用を継続できる。次に、オンライン中のバッチ処理を実現する仕組みが重要となる。これは主にデータベースの分割運用によって実現される。勘定系システムのデータベースは、日々の取引データを格納する複数の領域、いわゆる「面」や「世代」を持って設計される。例えば、ある日の営業中は「A面」のデータベースをオンライン処理に使い、顧客からの取引を記録していく。そして、日付が変わる深夜になると、オンラインサービスは「A面」を使い続けたまま、バッチ処理は前日までのデータが確定した「A面」のコピーである「B面」に対して実行される。このバッチ処理が完了し、新しい営業日のための準備が整った「B面」は、次の日の現用データベースとなる。そして、オンラインサービスが参照するデータベースを「A面」から「B面」へと瞬時に切り替える。この切り替え処理は、オンラインサービスへの影響を最小限に抑えるため、極めて短時間で行われる必要がある。切り替えの瞬間、ごくわずかな時間だけトランザクションの受付を停止、または待機させることでデータの整合性を保証する。切り替えが完了すれば、オンラインサービスは新しい「B面」を使って処理を継続し、空いた「A面」は次のバッチ処理のための待機領域となる。このサイクルを日々繰り返すことで、オンラインサービスを停止することなく日次処理が可能となる。さらに、拡張Z手順はシステムのバージョンアップやパッチ適用といった計画保守にも対応する。この場合、待機系のシステムをオンラインサービス網から一時的に切り離し、その待機系に対してのみ更新作業を行う。更新とテストが完了した後、現用系と待機系の役割を交代させる。つまり、更新済みの待機系を新しい現用系として稼働させ、オンラインのトラフィックをそちらに切り替える。その後、古い現用系となったシステムを待機系として更新する。このように、片系ずつ段階的に更新作業を進めることで、システム全体を停止させることなくメンテナンスを完了させることができる。これらの仕組みを実現するためには、データの整合性を厳密に保つための高度な同期技術や、複雑なシステム状態を正確に管理・制御する運用設計が不可欠である。拡張Z手順は、社会の基盤を支えるミッションクリティカルなシステムの安定稼働を、極めて高いレベルで実現するための技術と思想の集合体なのである。