故障モード影響解析 (コショウモードエイキョウカイセキ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

作成日: 更新日:

故障モード影響解析 (コショウモードエイキョウカイセキ) の読み方

日本語表記

故障モード影響解析 (コショウモードエイキョウカイセキ)

英語表記

Failure Mode and Effects Analysis (フェイリヤー・モード・アンド・エフェクツ・アナリシス)

故障モード影響解析 (コショウモードエイキョウカイセキ) の意味や用語解説

故障モード影響解析(FMEA: Failure Mode and Effects Analysis)とは、システムや製品、プロセスの潜在的な故障モードを体系的に特定し、その故障が発生した場合の影響を評価することで、未然に障害を防ぎ、信頼性や安全性を向上させる手法である。主に開発や設計の初期段階、あるいは既存のシステムやプロセスの改善フェーズで適用される。具体的には、個々の構成要素がどのように故障しうるかを洗い出し、その故障が全体に及ぼす影響の深刻さ、発生頻度、検出の難しさを評価する。この分析を通じて、リスクの高い故障モードを特定し、優先的に対策を講じることで、品質向上やコスト削減に寄与する。これは、問題が実際に発生してから対処するのではなく、問題が起きる前に予測し、予防するための極めて重要な活動と言える。 FMEAの実施は、通常、以下の手順で行われる。まず、解析の「対象」を明確にする。これは、ある特定のシステム全体かもしれないし、そのシステムを構成する特定の部品やソフトウェアモジュール、あるいは一連の作業プロセスかもしれない。対象の範囲を明確に定義することが、その後の分析の精度を決定する。次に、対象をより小さな「構成要素」に分解する。例えば、システムであれば、サブシステム、機能、部品、インターフェースなどに細分化する。プロセスであれば、個々のステップやタスクに分解する。この分解により、具体的な故障の発生源を特定しやすくなる。分解された各構成要素について、「故障モード」を洗い出す。故障モードとは、「その構成要素がどのように故障しうるか」を具体的に表現したものである。例えば、部品であれば「破損する」「摩耗する」「誤った値を出力する」、ソフトウェア機能であれば「フリーズする」「データが破損する」「処理が遅延する」といった形である。ここでは、あらゆる可能性を網羅的に考慮することが重要となる。 次に、洗い出された各故障モードが「どのような原因」で発生しうるかを特定する。これは、設計上の不備、製造時の欠陥、使用環境の悪化、操作ミス、外部からの干渉など多岐にわたる。原因を特定することで、適切な対策を立案するための手がかりが得られる。さらに、「影響解析」として、各故障モードが発生した場合に、システム全体、エンドユーザー、環境などに「どのような影響」が及ぶかを評価する。例えば、軽微な機能低下で済むのか、システム全体が停止するのか、安全に関わる重大な事故につながるのか、といった深刻度を評価する。この深刻度は、その故障モードに対処する緊急度を判断する上で非常に重要となる。 影響の評価と並行して、「発生頻度」と「検出可能性」も評価する。発生頻度は、その故障モードがどれくらいの確率で発生するかを、過去のデータや専門家の知見に基づいて推測する。検出可能性は、その故障モードが発生する前、あるいは発生した直後に、現在の監視体制やテスト手法でどれくらい早期に、容易に検知できるかを評価する。検出が難しい故障ほど、そのリスクは高くなる。これらの深刻度、発生頻度、検出可能性の三つの要素をそれぞれ数値化(例えば1から10の尺度)し、掛け合わせることで「リスク優先度(RPN: Risk Priority Number)」を算出する。RPNは、特定の故障モードが持つ相対的なリスクの大きさを表す指標であり、この数値が高い故障モードほど、優先的に対策を講じるべき対象となる。 RPNに基づいて、優先度の高い故障モードに対して具体的な「対策」を立案し、実行する。対策は、故障の発生頻度を減らすための設計変更や部品の選定、深刻度を低減するための冗長化や安全機構の追加、検出可能性を高めるための監視機能の強化やテストプロセスの改善などが考えられる。対策実施後には、その「効果を評価」し、FMEAの記録を更新する。FMEAは一度行ったら終わりではなく、設計変更や運用方法の見直しがあった際には、常に最新の情報に更新し、継続的にリスク管理を行うべき活動である。 FMEAには、主に設計段階で製品やシステムの機能、性能、信頼性に関する故障を分析する「設計FMEA(DFMEA)」と、製造工程やサービス提供プロセスにおける故障や欠陥を分析する「プロセスFMEA(PFMEA)」がある。これらは対象とするフェーズや観点が異なるものの、基本的な考え方や手順は共通している。この手法の最大の利点は、問題を早期に、つまり設計や開発の初期段階で特定し、対策を講じることができる点にある。これにより、後工程での手戻りや、市場に出てからの重大な障害発生を未然に防ぎ、結果として開発コストや運用コストの削減、製品やサービスの信頼性および顧客満足度の向上に大きく貢献する。また、FMEAのプロセスを通じて、チーム内でシステムに対する深い理解が共有され、知識の蓄積にもつながる。一方で、FMEAは網羅性を追求するためには多くの時間と労力を要し、また分析者の経験や知識に結果が依存しやすいという側面もある。特に、複数の故障モードが複合的に作用して発生する複雑な故障シナリオへの対応は、FMEA単独では限界がある場合もある。そのため、FMEAは他の信頼性分析手法と組み合わせて利用されることも多い。しかし、どのようなシステム開発においても、リスク管理の基礎としてFMEAの考え方は不可欠である。

故障モード影響解析 (コショウモードエイキョウカイセキ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説