高速フーリエ変換 (コウソクフーリエヘンカン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

作成日: 更新日:

高速フーリエ変換 (コウソクフーリエヘンカン) の読み方

日本語表記

高速フーリエ変換 (コウソクフーリエヘンカン)

英語表記

Fast Fourier Transform (ファスト・フーリエ・トランスフォーム)

高速フーリエ変換 (コウソクフーリエヘンカン) の意味や用語解説

高速フーリエ変換(FFT)は、離散フーリエ変換(DFT)を効率的に計算するためのアルゴリズムだ。DFTは、時間領域で表現された信号を周波数領域に変換する処理で、音声や画像などの信号処理、データ解析、通信など、幅広い分野で利用されている。しかし、DFTの計算量は信号のサンプル数Nに対してO(N^2)となるため、サンプル数が増えるほど計算時間が著しく増加する。FFTは、この計算量をO(N log N)に削減することで、大規模なデータに対しても現実的な時間で処理を可能にしている。 DFTは、N個の複素数データ列x0, x1, …, xN-1を、N個の複素数データ列X0, X1, …, XN-1に変換する。変換式は以下の通りだ。 Xk = Σ(n=0からN-1) xn * exp(-j2πkn/N) ここで、jは虚数単位、πは円周率、expは指数関数を表す。この式を直接計算すると、各Xkを求めるためにN回の複素数乗算とN回の複素数加算が必要となり、全体ではN^2回の複素数乗算とN(N-1)回の複素数加算が必要となる。 FFTは、この計算を効率化するために、分割統治法という手法を用いる。最も基本的なFFTアルゴリズムであるCooley-Tukeyアルゴリズムは、Nが2のべき乗である場合に適用できる。このアルゴリズムでは、N点のDFTを、それぞれN/2点のDFT二つに分割する。そして、それぞれのN/2点のDFTの結果を組み合わせて、N点のDFTの結果を得る。この分割を再帰的に繰り返すことで、計算量を大幅に削減できる。 Cooley-Tukeyアルゴリズムの基本的な考え方は、DFTの式を偶数番目の項と奇数番目の項に分けて計算することだ。つまり、 Xk = Σ(n=0からN/2-1) x2n * exp(-j2πk(2n)/N) + Σ(n=0からN/2-1) x2n+1 * exp(-j2πk(2n+1)/N) となる。ここで、exp(-j2πk(2n)/N) = exp(-j2πkn/(N/2))であり、exp(-j2πk(2n+1)/N) = exp(-j2πkn/(N/2)) * exp(-j2πk/N)と変形できる。この変形により、N点のDFTは、N/2点のDFT二つと、いくつかの複素数乗算と加算で計算できることがわかる。 この分割を再帰的に繰り返すことで、最終的には2点のDFTまで分割される。2点のDFTは、X0 = x0 + x1、X1 = x0 - x1と簡単に計算できる。そして、この結果を逆順に組み上げていくことで、N点のDFTの結果を得る。 FFTの計算量は、各段階でN回の複素数乗算と加算が必要であり、分割の回数はlog2(N)回となるため、全体ではO(N log N)となる。これは、DFTのO(N^2)と比較して、Nが大きくなるほど大幅な計算量の削減となる。 FFTには、Cooley-Tukeyアルゴリズム以外にも、さまざまなバリエーションが存在する。例えば、Radix-2 FFTは、Cooley-Tukeyアルゴリズムをさらに効率化したもので、Nが2のべき乗である場合に最適化されている。また、BluesteinのFFTアルゴリズムは、Nが素数である場合など、2のべき乗でない場合にも適用できる。 FFTは、現代の信号処理において不可欠な技術であり、その応用範囲は非常に広い。システムエンジニアを目指す上で、FFTの基本的な原理と応用について理解しておくことは、非常に重要だ。具体的なプログラミングにおいては、NumPyなどのライブラリにFFTの関数が用意されているため、それらを活用することで容易にFFTを実装できる。ただし、ライブラリを利用する際も、FFTの基本的な原理を理解しておくことで、より効果的にFFTを活用し、問題解決に役立てることができるだろう。

高速フーリエ変換 (コウソクフーリエヘンカン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説