強誘電体メモリ (きょうゆうでんたいメモリ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
強誘電体メモリ (きょうゆうでんたいメモリ) の読み方
日本語表記
強誘電体メモリ (きょうゆうでんたいメモリ)
英語表記
Ferroelectric RAM (フェロエレクトリックラム)
強誘電体メモリ (きょうゆうでんたいメモリ) の意味や用語解説
強誘電体メモリ(Ferroelectric Random Access Memory, FeRAM)は、不揮発性メモリの一種だ。DRAMのような高速性と、フラッシュメモリのような不揮発性を兼ね備えているため、次世代メモリとして注目されている。 FeRAMの動作原理は、強誘電体の持つ自発分極という性質を利用する。強誘電体は、外部から電場を加えなくても自発的に電気分極を持つ物質で、この分極の向きを外部電場によって反転させることができる。この分極の向きをデータの「0」と「1」に対応させることで、情報を記憶する。 FeRAMの構造は、基本的にDRAMと似ている。メモリセルは、強誘電体薄膜とトランジスタで構成される。DRAMではキャパシタに電荷を蓄積するのに対し、FeRAMでは強誘電体薄膜の分極状態を利用する点が異なる。 データの書き込みは、トランジスタをオンにし、強誘電体薄膜に一定電圧のパルスを印加することで行う。印加する電圧の極性によって分極の向きが変わり、「0」または「1」が書き込まれる。 データの読み出しは、トランジスタをオンにし、強誘電体薄膜に微弱な電圧を印加することで行う。このとき、強誘電体薄膜の分極状態に応じて電流が流れ出すため、その電流の方向や大きさを検出することで「0」または「1」を判別する。読み出しの際に分極状態が変化してしまう場合があるため、読み出し後に再度書き込む必要がある(破壊読み出し)。ただし、最近では非破壊読み出し方式も開発されている。 FeRAMの主な特徴は、以下の通りだ。 まず、高速な書き込み・読み出し速度が挙げられる。DRAMに近い速度で動作するため、高速なデータ処理が求められる用途に適している。 次に、書き換え回数が多い。フラッシュメモリと比較して、10の12乗から10の15乗回の書き換えが可能であり、頻繁なデータの書き換えが必要な用途でも安心して使用できる。 さらに、低消費電力である。データの書き換えに必要な電圧が低く、消費電力を抑えることができる。特に、モバイル機器やIoTデバイスなど、バッテリー駆動時間が重要な用途に適している。 また、不揮発性であるため、電源を切ってもデータが保持される。このため、バックアップ電源が不要となり、システムの簡素化や省電力化に貢献する。 FeRAMの応用分野は、多岐にわたる。例えば、ICカードやRFIDタグなどの組み込み用途、デジタルカメラや携帯電話などのモバイル機器、プリンターやハードディスクドライブなどの周辺機器、産業機器や医療機器など、様々な分野で利用されている。近年では、自動車のECU(Engine Control Unit)や、スマートメーターなど、より高度な用途への適用も進んでいる。 FeRAMの課題としては、記憶容量の限界や、コストが高い点が挙げられる。高集積化が難しく、大容量化が難しいという課題がある。また、製造プロセスが複雑なため、他の不揮発性メモリと比較してコストが高くなる傾向がある。 しかし、これらの課題を克服するために、様々な技術開発が進められている。例えば、3次元積層技術や、新しい材料の開発などにより、高集積化や低コスト化が期待されている。 強誘電体メモリは、高速性、高耐久性、低消費電力、不揮発性という優れた特性を持つ、将来有望なメモリ技術だ。今後の技術開発によって、さらに幅広い分野での応用が期待される。システムエンジニアを目指す上で、FeRAMの原理や特徴を理解しておくことは、将来のシステム設計において重要な知識となるだろう。