先入先出法 (センニュウセンシュツホウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
先入先出法 (センニュウセンシュツホウ) の読み方
日本語表記
先入先出法 (サキイレシュツシュツホウ)
英語表記
FIFO (ファイフォ)
先入先出法 (センニュウセンシュツホウ) の意味や用語解説
先入先出法(FIFO:First-In, First-Out)とは、在庫管理や会計処理における評価方法の一つで、先に仕入れたものから順番に出庫・消費されると仮定して、払い出し単価を決定する方法のことである。ITの分野においては、データ構造における待ち行列(キュー)の制御方式として重要な概念となる。 先入先出法の考え方は、文字通り「最初に入ったものが最初に出ていく」というシンプルなものである。例えば、倉庫に積み重ねられた商品や、コンピュータのメモリに格納されたデータなどをイメージすると理解しやすい。先に倉庫に入庫した商品から順番に出荷したり、メモリに先に格納されたデータから順番に処理したりする状況を想定している。 具体的な例として、ある商品を100円で10個、次に120円で10個仕入れた場合を考える。その後、15個の商品を販売したとき、先入先出法では、最初に仕入れた100円の商品10個と、次に仕入れた120円の商品5個が販売されたとみなす。したがって、この15個の商品の払い出し単価は、(100円 × 10個 + 120円 × 5個)/ 15個 = 約106.67円となる。 ITの分野では、この先入先出の考え方が、待ち行列(キュー)というデータ構造の制御方式として活用される。待ち行列とは、データを一時的に保管する場所であり、処理待ちのタスクやメッセージなどを順番に処理するために用いられる。先入先出方式の待ち行列では、新たに追加されたデータは最後尾に格納され、処理される際は先頭から順番に取り出される。 例えば、プリンタに複数の印刷ジョブが送られた場合、プリンタはこれらのジョブを待ち行列に格納し、先に入力されたジョブから順番に印刷処理を行う。また、Webサーバが複数のリクエストを処理する場合も、リクエストを待ち行列に格納し、先に入力されたリクエストから順番に処理することで、公平性を保つことができる。 先入先出法は、在庫管理や会計処理においては、実際の物の流れと必ずしも一致するとは限らない。しかし、理論的に理解しやすく、計算が容易であるという利点がある。特に、商品の腐敗や陳腐化を防ぐ必要がある場合に有効である。IT分野においては、公平なリソース配分や処理順序の維持に不可欠な制御方式であり、システムの安定性と効率性を高める上で重要な役割を果たす。 プログラミングにおいては、先入先出法を実現するために、配列や連結リストなどのデータ構造を用いることが多い。例えば、配列を用いる場合、先頭の要素を削除する際に、残りの要素を一つずつ前にずらす必要があるため、処理に時間がかかる場合がある。一方、連結リストを用いる場合は、先頭の要素を削除する際に、ポインタの付け替えだけで済むため、効率的に処理を行うことができる。 先入先出法は、オペレーティングシステム(OS)におけるプロセス管理や、ネットワークにおけるパケット転送など、様々な分野で応用されている。例えば、OSは、複数のプロセスを公平に実行するために、各プロセスに実行時間を割り当て、実行待ちのプロセスを待ち行列に格納する。そして、先に入力されたプロセスから順番に実行時間を割り当てることで、全てのプロセスが公平に実行されるように制御する。 また、ネットワークにおいては、ルータが受信したパケットを転送する際に、転送待ちのパケットを待ち行列に格納する。そして、先に入力されたパケットから順番に転送することで、ネットワークの輻輳を防ぎ、データの損失を最小限に抑えることができる。 このように、先入先出法は、単純な概念でありながら、様々な分野で応用されている重要な制御方式である。システムエンジニアを目指す上で、先入先出法の基本的な考え方と応用例を理解しておくことは、システムの設計や開発において非常に役立つはずである。