固定回線 (コテイカイセン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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固定回線 (コテイカイセン) の読み方

日本語表記

固定回線 (コテイカイセン)

英語表記

fixed line (フィックスドライン)

固定回線 (コテイカイセン) の意味や用語解説

固定回線とは、光ファイバーケーブルやメタルケーブルといった物理的な通信線を用いて、住宅やオフィスなどの特定の場所に引き込み、インターネット接続を提供する通信方式である。電波を利用して通信を行うモバイル回線とは対照的に、有線のケーブルで直接接続される点が最大の特徴である。この物理的な接続により、外部環境の影響を受けにくく、安定した高速通信を実現することが可能となる。システム開発やサーバー運用など、通信の信頼性が求められる業務において基盤となるインフラである。 固定回線で用いられる物理的な媒体にはいくつかの種類が存在する。現在、主流となっているのは光ファイバーケーブルを利用したFTTH(Fiber to the Home)と呼ばれるサービスである。光ファイバーは、石英ガラスやプラスチックでできた非常に細い繊維であり、光信号を用いて情報を伝達する。電気信号に比べて伝送損失が極めて少なく、外部からの電磁的なノイズの影響も受けないため、長距離にわたって高速かつ大容量のデータ通信を実現できる。過去には、既存の電話線(メタルケーブル)を利用したADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)が広く普及していた。これは音声通話で利用しない高い周波数帯域を使ってデータ通信を行う技術であり、下り(ダウンロード)の通信速度が上り(アップロード)よりも高速であるという非対称な特徴を持つ。しかし、ADSLは通信基地局からの物理的な距離が遠くなるほど速度が著しく低下するという弱点があり、光ファイバーの普及に伴い、その役割を終えつつある。このほか、ケーブルテレビ事業者がテレビ放送に用いる同軸ケーブルを利用してインターネット接続を提供するCATVインターネットもある。 固定回線サービスを利用するためには、通常「回線事業者」と「インターネットサービスプロバイダー(ISP)」の二つの事業者との契約が必要となる。回線事業者は、NTT東日本・西日本に代表されるように、物理的な通信回線網そのものを敷設、所有、管理し、ユーザーに提供する役割を担う。一方、ISPは、回線事業者が提供する回線を利用して、ユーザーをインターネットの世界に接続する役割を持つ。具体的には、個々のユーザーにIPアドレスを割り当て、認証を行い、目的のウェブサイトやサーバーへの通信を中継する。近年では、回線とプロバイダーのサービスが一体となった「光コラボレーション」という形態も普及し、契約や支払いの窓口が一本化されるケースが増えている。 固定回線の利点は、その通信品質の高さにある。物理的なケーブルで接続されているため、天候や建物の構造、近隣の電波利用状況といった外的要因に左右されにくく、通信速度や応答時間(レイテンシ)が安定している。大容量のファイルの送受信、リモート環境からのサーバー操作、高解像度のビデオ会議など、通信の途絶や遅延が業務に深刻な影響を及ぼす場面において、この安定性は極めて重要である。また、ほとんどのサービスプランでデータ通信量に実質的な上限が設けられていないため、容量を気にすることなく利用できる点も大きなメリットである。 一方で、利用場所が物理的に固定されるという制約がある。回線が引き込まれた建物内でしか利用できず、外出先で利用することはできない。導入時には開通工事が必要となり、申し込みから利用開始まで一定の期間を要する点もデメリットと言える。 特に法人利用において、固定回線はビジネスの根幹を支えるインフラとなる。オフィスのLAN(Local Area Network)をインターネットに接続するだけでなく、複数の事業拠点間を安全に接続するためにも用いられる。その際には、公衆網とは隔離された通信路を確保する「専用線」や、インターネット上に暗号化された仮想的なトンネルを構築して通信を行う「VPN(Virtual Private Network)」といった技術が利用されることが多い。これにより、機密情報を安全にやり取りすることが可能となる。また、クラウドサービスの利用が拡大する現代において、企業内ネットワークからクラウド環境へ、安定的かつ高速に接続するための回線としての重要性も増している。システムエンジニアは、こうした固定回線の種類や特徴、関連技術を深く理解し、構築するシステムの要件や目的に応じて最適なネットワーク環境を設計する能力が求められる。

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