周波数帯域 (シュウハスウタイイキ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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周波数帯域 (シュウハスウタイイキ) の読み方

日本語表記

周波数帯域 (シュウハスウタイイキ)

英語表記

frequency band (フリークエンシーバンド)

周波数帯域 (シュウハスウタイイキ) の意味や用語解説

周波数帯域という言葉は、ITシステムや通信技術を学ぶ上で頻繁に登場する基本的な概念だ。システムエンジニアを目指すのであれば、その意味と重要性を正確に理解しておく必要がある。まずはこの言葉の概要から解説しよう。 周波数とは、波が1秒間に繰り返す回数を指す。音波や電波のような波は、常に上下動を繰り返しているが、その繰り返しが速ければ速いほど「周波数が高い」と言われ、遅ければ「周波数が低い」と言われる。単位はヘルツ(Hz)で表され、1Hzは1秒間に1回の繰り返しを意味する。この周波数は、波の種類や性質を決定づける重要な要素の一つだ。 一方、帯域とは「帯の幅」という意味合いで、ある範囲や区間を指す。例えば、ラジオの周波数であれば「FM帯」や「AM帯」といったように、利用できる周波数の範囲が定められている。この二つの言葉が組み合わさった周波数帯域とは、特定の用途や信号が使用する周波数の「範囲」を意味する。つまり、ある信号が、最も低い周波数から最も高い周波数まで、どれくらいの幅を持って存在しているかを示す概念だ。これは、データ通信における「情報の通り道」の広さに例えられることが多く、この幅が広ければ広いほど、一度にたくさんの情報を送れる可能性が高まる。したがって、周波数帯域は、通信の速度や品質を決定づける非常に重要な指標となるのだ。 次に、周波数帯域についてもう少し掘り下げて詳しく見ていこう。周波数とは、前述の通り1秒間あたりの波の振動回数であり、電気信号や電磁波が持つ基本的な性質の一つだ。例えば、人間の可聴域は一般的に20Hzから20,000Hz(20kHz)程度とされ、これよりも低い周波数は超低周波、高い周波数は超音波と呼ばれる。電波は、さらに高い周波数を持つ電磁波の一種であり、AMラジオでは数百kHz帯、FMラジオでは数MHz帯、携帯電話やWi-FiではGHz帯といった非常に広い範囲で利用されている。これらの周波数は、光と同じ電磁波スペクトルの一部であり、波長と周波数は反比例の関係にある。 そして、帯域、または帯域幅(Bandwidth)とは、ある信号が占める周波数の範囲を指し、その信号に含まれる最も高い周波数成分と最も低い周波数成分の差として定義される。例えば、ある音声信号が20Hzから8000Hzの周波数成分を含んでいる場合、その帯域幅は8000Hz - 20Hz = 7980Hzとなる。この帯域幅が広いほど、より多くの周波数成分を持つ複雑な信号を伝送できるということになる。 データ通信の分野では、この周波数帯域の広さが、その通信路が単位時間あたりにどれだけのデータを伝送できるか、すなわち「通信容量」や「データ転送速度」に直結する。情報理論においては、通信路の帯域幅が広ければ広いほど、またノイズが少なければ少ないほど、理論上の最大通信容量(シャノン=ハートレーの定理)が大きくなることが示されている。これは、広い道路ほど一度に多くの車が通れるのと同じ理屈だ。 周波数帯域の概念は、様々なIT技術に応用されている。無線通信の分野では、Wi-Fi、Bluetooth、携帯電話(4G、5Gなど)といった技術がそれぞれ特定の周波数帯域を利用している。例えば、一般的なWi-Fiは2.4GHz帯や5GHz帯を使用するが、これらは無線LANの規格によって定められている。これらの周波数帯域は、電波干渉を防ぎ、効率的な利用を促すために、各国政府によって厳しく規制され、無線局免許制度などにより割り当てられている。異なるサービスが同じ周波数帯域を使うと混信が生じるため、それぞれのサービスが割り当てられた周波数帯域内で通信を行うことが求められるのだ。 有線通信においても、周波数帯域は重要だ。例えば、LANケーブルを使ったイーサネット通信では、ケーブルがサポートする周波数帯域が広いほど、より高速なデータ伝送が可能となる。カテゴリ5e、カテゴリ6、カテゴリ7といったLANケーブルの規格は、それぞれ異なる最大周波数帯域をサポートし、それに応じて最大データ転送速度も異なる。光ファイバー通信では、さらに広大な周波数帯域(波長の範囲)を利用できるため、非常に高速で大容量の通信が可能となっている。 また、デジタル信号処理の分野では、アナログ信号をデジタル信号に変換する際の「サンプリング」という処理において、周波数帯域の概念が不可欠となる。ナイキスト・シャノンのサンプリング定理によれば、アナログ信号を正確にデジタル化するには、その信号に含まれる最高周波数の少なくとも2倍以上の周波数でサンプリングする必要がある。この「最高周波数」が、その信号の周波数帯域の上限と密接に関わっているのだ。 システムエンジニアとして周波数帯域を理解することは、ネットワークの設計、ハードウェアの選定、通信プロトコルの理解、さらにはシステムの性能評価やトラブルシューティングを行う上で不可欠な知識となる。例えば、データセンター内のネットワークを設計する際には、必要な通信速度を満たすために、適切な周波数帯域をサポートするケーブルやネットワーク機器を選定する必要がある。また、無線LAN環境を構築する際には、利用可能な周波数帯域の特性(例:2.4GHz帯は壁に強いが混雑しやすい、5GHz帯は高速だが障害物に弱いなど)を理解し、最適なチャネル設計を行うことが求められる。 周波数帯域は、単なる物理的な特性ではなく、ITシステムが情報をいかに効率的かつ高速に伝送できるかという「性能」を決定づける根幹となる概念だ。この概念を深く理解することで、あなたはより高度なITシステムを設計し、運用する能力を身につけることができるだろう。

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